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“私が貰っても良いんですか?”



羽鳥さんの手に握られている砂川さんの姿を思い浮かべながら口にした私に、羽鳥さんは深く頷いた。



「じゃあ、遠慮なく貰います。」



自動販売機の所から真っ直ぐと歩き、羽鳥さんの目の前に栄養ドリンクのビンを静かに置いた後に羽鳥さんの手から飲み物をゆっくりと抜き取った。



「ありがとうございます。」



砂川さんのことだけを考えながら、羽鳥さんの手から飲み物を遠慮なく奪い取ってやった。



それにはほんの少しだけスッキリした気持ちになった時、何度も深く頷いている羽鳥さんの向こう側に見えた。



手作りだと思われる弁当箱の中身が見えた。



「その弁当、羽鳥さんの手作りですか?」



「うん・・・。」



「美味しそうですね、料理得意なんだ?」



砂川さんと良い勝負が出来そうなくらい美味しそうな料理が小さな弁当の中に彩り良く詰められている。



料理は麺類しか作れないような私が羽鳥さんの弁当を見てしまいまたムカムカとしてしまった。



小さく攻撃してやろうと笑顔を作り口にした私に羽鳥さんはまた顔を真っ赤にして・・・



「一通りは作れるかな・・・あ、でも中華料理は作らないけど。」



“作れない”ではなく“作らない”と答えた羽鳥さんは凄く幸せそうな顔で笑った。



「私の彼・・・というかなんというか、私の“そういう人”は中華料理を作るプロだから。
そんな人に私の中華料理を食べて貰う自信はなくて。」



それを聞き、私の心臓は嫌な感じで動いた。



どうしようもなくムカムカとする。



どうしても“嫌だ”と思ってしまう。



“私だけが良い”と・・・



“砂川さんの中華料理を食べられるのは私だけが良かったのに”と・・・。



当たり前のように羽鳥さんにも食べさせているであろう砂川さんの料理。
砂川さんも大好きで私も大好きな中華料理。



どうして気付かなかったのか・・・。
羽鳥さんにもアレを食べさせているとどうして考えもしなかったのか・・・。



羽鳥さんに攻撃するつもりでこの口を開いたにも関わらず、私の方が大きな攻撃を受けた。



こんなの、めちゃくちゃ攻撃を受けた。



この女は“チョロい女”だけど“こういう女”でもあるのだと改めて思う。



私のことを砂川さんから聞いているはずなのに・・・。



綺麗な顔で周りの人を傷付けることも出来てしまう女・・・。



めちゃくちゃ嫌な女だと、改めて思った。
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