158 / 166
10
10-13
しおりを挟む
縁側から出て、3人で庭園のハナカイドウの下を歩く。
そんな私達の間を黒いネコがチョコチョコと歩き回り、落ちている花びらで楽しそうに遊んでいる。
「だ~か~ら~!!
早くセックスしちゃえば良いじゃん!!
良いセックスが出来ればストレスも発散出来るし幸せホルモンも出て自律神経も整う!!
良いことしかないって!!」
「だから、それは俺にじゃなくて純愛ちゃんに言って。
途中で純愛ちゃんが拒絶するなら俺はするつもりなんてないから。」
ほろ酔いになっている佐伯さんと砂川さんは缶ビールと缶チューハイを持ちながら歩き、さっきからずっとこんな話を繰り返している。
「そこは課長が下手くそなんだって!!
もっとこう、雰囲気を作って!!
言葉で「セックスしよう」だけじゃなくてさ~、純愛ちゃんも乗り気になるように持っていかないと~!!」
「どうやってそんな雰囲気を作るのか俺には全く分からない。」
「私が見本を見せようか?」
「うん。」
「そこは断ってよ!!
私は純愛ちゃんの彼氏なんだよ!?
雰囲気が出来上がったらそのまま続行するでしょ!!」
「まあ、でも女の子同士だから。」
「分かってないな~。
“チン”がなくたって余裕で気持ち良くさせられちゃうんだから。
私が開発しちゃったら砂川さんの前戯も“チン”でも純愛ちゃんは満足出来ないんだからね!?」
「“チン”って・・・っ」
砂川さんが大きく笑うと、この前まではなかった石のベンチに座った。
佐伯さんも当たり前かのようにそのベンチに座り、砂川さんと自分の間を片手でポンポンっと叩く。
それには自然と笑顔になり私は佐伯さんと砂川さんの間に座った。
「きれ~~~い!!!」
ハナカイドウの真下にあるベンチから空を見上げた佐伯さんが声を上げた。
「昨日調べたら、ハナカイドウの花言葉って“温和・艶麗・美人の眠り”なんだって!!」
「うん、そうだね。」
「純愛ちゃんみたい。」
「全然私じゃないでしょ。
温和に見せてるけど本当は温和でもないし、勿論艶美でもなければそもそも美人でもないし。」
「でも、これから私が目覚めさせる。
純愛ちゃんはその要素をめちゃくちゃ持ってるから全然余裕。
純愛ちゃんが目を覚ましたら女だけじゃなくて男まで虜になる“ハナカイドウ”になる。」
「そんなの無理だよ。」
「無理じゃないよ。」
空を見上げていた佐伯さんが私のことをゆっくりと見た。
「私も課長も一緒にいる。
性別が女の私1人だったらもっと難しいことだったかしれないけど、課長もいるからきっと眠りから覚める。
自分で自分の可能性をぶっ壊さないで、純愛ちゃん。」
砂川さんと私のことを何も知らない佐伯さんがそう言ってくる。
砂川さんが羽鳥さんの婚約者なのだと知らない佐伯さんはこんな無理難題を言ってくる。
「私は誰かの幸せをぶっ壊すくらいなら、何度だって自分のことをぶっ壊したい。
私には出来ないよ・・・。
私は佐伯さんみたいにはなれない。」
ハナカイドウの下、ハナカイドウよりも更に強い色を持つような佐伯さんに口にした。
「私は男みたいな見た目で男みたいな所も沢山あるけど、中身は結構女々しくて。
親からもお兄ちゃんからも友達からも同僚からも、そしてお客さんからも守られてきたような人生だった。」
「うん。」
「私には何かをぶっ壊したり何かをぶっ殺したりすることなんて出来ない。」
「それなら、自分自身をぶっ壊してぶっ殺せば良い。」
佐伯さんが私の膝の上に片手をのせた。
「自分自身の固定観念なんて何度でもぶっ壊してぶっ殺せば良い。
もっと強くなるんだよ、純愛ちゃん。」
「強くなんてならなくたって良い・・・。」
「私は純愛ちゃんが他の誰かに食われるのは嫌。」
「それなら、助けて。」
佐伯さんの片手に私の片手を重ねた。
「私が誰かに食われそうになっていたら、その時は佐伯さんが助けて。」
私が口にした言葉に佐伯さんの瞳は揺れ、それから困ったように笑い、私の隣にいる砂川さんのことを見た。
「純愛ちゃんからこう言われたら、助けるしかないんですけど~!!
私の彼女めちゃくちゃ可愛い!!」
「分かるよ、助けるしかないよね。
だから俺も助けたくなるし、実際に助けてしまう。」
「課長、猫かわいがりだもんね~。
・・・って、ネコちゃんにオヤツあげすぎだって!!
身体に悪いからマジでやめて!!!
月曜日に猫の飼い方のマニュアル持って行くからマジで読んで!!」
砂川さんの膝の上で嬉しそうにオヤツを食べているネコの上にハナカイドウの花びらが少し落ちていく。
真っ黒で可哀想なくらい不細工な見た目の女の子のネコが、砂川さんの膝の上で幸せそうにしている。
そんな姿を見て、私は呟いた。
「この子の名前、カタカナでハナちゃんにする・・・。」
「「ハナちゃん?」」
「ハナカイドウのハナちゃん。
私はハナカイドウにはなれないから、この子の名前だけには“温和・艶麗・美人の眠り”の想いを込めて、ハナカイドウの“ハナ”ちゃん。」
「うん!可愛い!ハナちゃんね!!」
佐伯さんの明るい声にホッとした気持ちになったけれど、砂川さんは明らかに不満気な顔をしている。
「何?嫌だ?」
「うん、全く可愛くない。
それによくある名前でひねりもない。」
「じゃあ砂川さんは何が良いの?」
「“純ココア”ちゃんとか。
“ピュアココア”ちゃんでもいいか。
純愛ちゃんの“純”もついているし。」
砂川さんの口から飛び出てきたあまりにも酷い名前に絶句をしていると・・・
「それはマジでバカ・・・っっ!!!」
佐伯さんが爆笑をしながら私が思っていたことを口にした。
ハナちゃんのことを“クロまんじゅう”と名付けようとしていた羽鳥さんと、“純ココア”と名付けようとしている砂川さん。
“2人はお似合いだな”と・・・
“でも、2人の間に産まれた子どもの名前は心配だな”と・・・
無関係の私がそんな心配をした。
“今日も結構楽しい”
そう思えていたのに気持ちが沈んできてしまい、無意識にこの顔が下を向いた。
そしたら、見えた。
私に差し出された砂川さんの手には鍵が握られているのが。
「これから純愛ちゃんがお世話をするネコで、純愛ちゃんが1番名前を呼ぶことになるから、純愛ちゃんが考えた“ハナ”ちゃんにしよう。
俺は飼い主としてもダメな男らしいから、ハナちゃんのことをよろしくね。」
砂川さんの手に握られている砂川さんの家の鍵。
その向こう側にはハナちゃんが鋭いけど可愛い目でこちらを見上げている。
考えなければいけないことが沢山あるのは分かるけれど、私は小さく震える右手で砂川さんの鍵の下で手を開いた。
そんな私の手の平に砂川さんは鍵をゆっくりと置き・・・
その瞬間、私の手の平に置かれた鍵の上にハナカイドウの花びらが1枚、落ちてきた。
それに気付いたけれど、私はそのまま鍵を握った。
もう二度と戻ることはないと思っていた砂川さんのトコロ。
そこに戻ることが出来る鍵を私がもう1度この手に戻してしまった。
ハナカイドウの花びらと一緒に鍵が戻ってきてしまった。
いつか返さなければいけないこの鍵を、今だけはハナカイドウの花びらと一緒に握り締めた。
今だけは私の鍵であり私の“ハナカイドウ”だと思いながら。
そう思いながらまた顔を上げ、空を見上げた。
青い空にハナカイドウの花が広がりピンク色の世界が広がる。
私の隣には佐伯さんと砂川さん、そしてハナちゃんがいる。
“やっぱり、今日も楽しいかもしれない。”
3年前は咲いている所を見ることが出来ないまま“最後の日”となってしまったハナカイドウ。
4年ぶりに見たハナカイドウはやっぱり綺麗だった。
4年ぶりにした砂川さんのトコロでの花見はやっぱり楽しかった。
困ったことに凄く凄く、幸せだった。
そんな私達の間を黒いネコがチョコチョコと歩き回り、落ちている花びらで楽しそうに遊んでいる。
「だ~か~ら~!!
早くセックスしちゃえば良いじゃん!!
良いセックスが出来ればストレスも発散出来るし幸せホルモンも出て自律神経も整う!!
良いことしかないって!!」
「だから、それは俺にじゃなくて純愛ちゃんに言って。
途中で純愛ちゃんが拒絶するなら俺はするつもりなんてないから。」
ほろ酔いになっている佐伯さんと砂川さんは缶ビールと缶チューハイを持ちながら歩き、さっきからずっとこんな話を繰り返している。
「そこは課長が下手くそなんだって!!
もっとこう、雰囲気を作って!!
言葉で「セックスしよう」だけじゃなくてさ~、純愛ちゃんも乗り気になるように持っていかないと~!!」
「どうやってそんな雰囲気を作るのか俺には全く分からない。」
「私が見本を見せようか?」
「うん。」
「そこは断ってよ!!
私は純愛ちゃんの彼氏なんだよ!?
雰囲気が出来上がったらそのまま続行するでしょ!!」
「まあ、でも女の子同士だから。」
「分かってないな~。
“チン”がなくたって余裕で気持ち良くさせられちゃうんだから。
私が開発しちゃったら砂川さんの前戯も“チン”でも純愛ちゃんは満足出来ないんだからね!?」
「“チン”って・・・っ」
砂川さんが大きく笑うと、この前まではなかった石のベンチに座った。
佐伯さんも当たり前かのようにそのベンチに座り、砂川さんと自分の間を片手でポンポンっと叩く。
それには自然と笑顔になり私は佐伯さんと砂川さんの間に座った。
「きれ~~~い!!!」
ハナカイドウの真下にあるベンチから空を見上げた佐伯さんが声を上げた。
「昨日調べたら、ハナカイドウの花言葉って“温和・艶麗・美人の眠り”なんだって!!」
「うん、そうだね。」
「純愛ちゃんみたい。」
「全然私じゃないでしょ。
温和に見せてるけど本当は温和でもないし、勿論艶美でもなければそもそも美人でもないし。」
「でも、これから私が目覚めさせる。
純愛ちゃんはその要素をめちゃくちゃ持ってるから全然余裕。
純愛ちゃんが目を覚ましたら女だけじゃなくて男まで虜になる“ハナカイドウ”になる。」
「そんなの無理だよ。」
「無理じゃないよ。」
空を見上げていた佐伯さんが私のことをゆっくりと見た。
「私も課長も一緒にいる。
性別が女の私1人だったらもっと難しいことだったかしれないけど、課長もいるからきっと眠りから覚める。
自分で自分の可能性をぶっ壊さないで、純愛ちゃん。」
砂川さんと私のことを何も知らない佐伯さんがそう言ってくる。
砂川さんが羽鳥さんの婚約者なのだと知らない佐伯さんはこんな無理難題を言ってくる。
「私は誰かの幸せをぶっ壊すくらいなら、何度だって自分のことをぶっ壊したい。
私には出来ないよ・・・。
私は佐伯さんみたいにはなれない。」
ハナカイドウの下、ハナカイドウよりも更に強い色を持つような佐伯さんに口にした。
「私は男みたいな見た目で男みたいな所も沢山あるけど、中身は結構女々しくて。
親からもお兄ちゃんからも友達からも同僚からも、そしてお客さんからも守られてきたような人生だった。」
「うん。」
「私には何かをぶっ壊したり何かをぶっ殺したりすることなんて出来ない。」
「それなら、自分自身をぶっ壊してぶっ殺せば良い。」
佐伯さんが私の膝の上に片手をのせた。
「自分自身の固定観念なんて何度でもぶっ壊してぶっ殺せば良い。
もっと強くなるんだよ、純愛ちゃん。」
「強くなんてならなくたって良い・・・。」
「私は純愛ちゃんが他の誰かに食われるのは嫌。」
「それなら、助けて。」
佐伯さんの片手に私の片手を重ねた。
「私が誰かに食われそうになっていたら、その時は佐伯さんが助けて。」
私が口にした言葉に佐伯さんの瞳は揺れ、それから困ったように笑い、私の隣にいる砂川さんのことを見た。
「純愛ちゃんからこう言われたら、助けるしかないんですけど~!!
私の彼女めちゃくちゃ可愛い!!」
「分かるよ、助けるしかないよね。
だから俺も助けたくなるし、実際に助けてしまう。」
「課長、猫かわいがりだもんね~。
・・・って、ネコちゃんにオヤツあげすぎだって!!
身体に悪いからマジでやめて!!!
月曜日に猫の飼い方のマニュアル持って行くからマジで読んで!!」
砂川さんの膝の上で嬉しそうにオヤツを食べているネコの上にハナカイドウの花びらが少し落ちていく。
真っ黒で可哀想なくらい不細工な見た目の女の子のネコが、砂川さんの膝の上で幸せそうにしている。
そんな姿を見て、私は呟いた。
「この子の名前、カタカナでハナちゃんにする・・・。」
「「ハナちゃん?」」
「ハナカイドウのハナちゃん。
私はハナカイドウにはなれないから、この子の名前だけには“温和・艶麗・美人の眠り”の想いを込めて、ハナカイドウの“ハナ”ちゃん。」
「うん!可愛い!ハナちゃんね!!」
佐伯さんの明るい声にホッとした気持ちになったけれど、砂川さんは明らかに不満気な顔をしている。
「何?嫌だ?」
「うん、全く可愛くない。
それによくある名前でひねりもない。」
「じゃあ砂川さんは何が良いの?」
「“純ココア”ちゃんとか。
“ピュアココア”ちゃんでもいいか。
純愛ちゃんの“純”もついているし。」
砂川さんの口から飛び出てきたあまりにも酷い名前に絶句をしていると・・・
「それはマジでバカ・・・っっ!!!」
佐伯さんが爆笑をしながら私が思っていたことを口にした。
ハナちゃんのことを“クロまんじゅう”と名付けようとしていた羽鳥さんと、“純ココア”と名付けようとしている砂川さん。
“2人はお似合いだな”と・・・
“でも、2人の間に産まれた子どもの名前は心配だな”と・・・
無関係の私がそんな心配をした。
“今日も結構楽しい”
そう思えていたのに気持ちが沈んできてしまい、無意識にこの顔が下を向いた。
そしたら、見えた。
私に差し出された砂川さんの手には鍵が握られているのが。
「これから純愛ちゃんがお世話をするネコで、純愛ちゃんが1番名前を呼ぶことになるから、純愛ちゃんが考えた“ハナ”ちゃんにしよう。
俺は飼い主としてもダメな男らしいから、ハナちゃんのことをよろしくね。」
砂川さんの手に握られている砂川さんの家の鍵。
その向こう側にはハナちゃんが鋭いけど可愛い目でこちらを見上げている。
考えなければいけないことが沢山あるのは分かるけれど、私は小さく震える右手で砂川さんの鍵の下で手を開いた。
そんな私の手の平に砂川さんは鍵をゆっくりと置き・・・
その瞬間、私の手の平に置かれた鍵の上にハナカイドウの花びらが1枚、落ちてきた。
それに気付いたけれど、私はそのまま鍵を握った。
もう二度と戻ることはないと思っていた砂川さんのトコロ。
そこに戻ることが出来る鍵を私がもう1度この手に戻してしまった。
ハナカイドウの花びらと一緒に鍵が戻ってきてしまった。
いつか返さなければいけないこの鍵を、今だけはハナカイドウの花びらと一緒に握り締めた。
今だけは私の鍵であり私の“ハナカイドウ”だと思いながら。
そう思いながらまた顔を上げ、空を見上げた。
青い空にハナカイドウの花が広がりピンク色の世界が広がる。
私の隣には佐伯さんと砂川さん、そしてハナちゃんがいる。
“やっぱり、今日も楽しいかもしれない。”
3年前は咲いている所を見ることが出来ないまま“最後の日”となってしまったハナカイドウ。
4年ぶりに見たハナカイドウはやっぱり綺麗だった。
4年ぶりにした砂川さんのトコロでの花見はやっぱり楽しかった。
困ったことに凄く凄く、幸せだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
イケオジ王様の頭上の猫耳が私にだけ見えている
植野あい
恋愛
長年の敵対国に輿入れしたセヴィッツ国の王女、リミュア。
政略結婚の相手は遥かに年上ながら、輝く銀髪に金色の瞳を持つ渋さのある美貌の国王マディウス。だが、どう見ても頭に猫耳が生えていた。
三角の耳はとてもかわいらしかった。嫌なことがあるときはへにょりと後ろ向きになり、嬉しいときはピクッと相手に向いている。
(獣人って絶滅したんじゃなかった?というか、おとぎ話だと思ってた)
侍女や専属騎士に聞いてみても、やはり猫耳に気づいていない。肖像画にも描かれていない。誰にも見えないものが、リュミアにだけ見えていた。
頭がおかしいと思われないよう口をつぐむリュミアだが、触れば確かめられるのではと初夜を楽しみにしてしまう。
無事に婚儀を済ませたあとは、ついに二人っきりの夜が訪れて……?!
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる