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「私には可愛い女の子に見えるけどな~・・・。」



佐伯さんがこの子猫のことを“女の子”だと言う。



睨み付けながらも身体を小さくしていて、逆立っているような汚い毛が小さく震えている。



可哀想なくらい不細工な女の子の子猫が可哀想なくらい怯えているのだと分かる。



「羽鳥さんの知り合いが子猫を2匹拾ったらしくてね、経理部内の一人暮らしじゃない人達に声を掛けてたの。
私は1人で生活してるから引き取れなかったんだけど、そのことを金曜日の夜に課長に愚痴って。
羽鳥さんってそういう所は凄く厳しいから。
命だからそれは当たり前なんだけど、審査が厳しすぎて。
課長も一人暮らしなのによく引き取れたね。」



「羽鳥さんって優しい人でもあるからね。
そこにつけ込んだ。」



「言い方こわっ!」



楽しそうに笑っている2人には何も言わず、私の両手は自然と佐伯さんの膝の上に置かれているバッグに伸びた。



そしてそれをソッと持ち上げ、リビングの1番端へと持っていきそこに静かに置いた。



それから砂川さんを見て、口にした。



「こんなに広い家で1人暮らしなのに、この子どうするの?
砂川さんはネコどろか小動物だって金魚だって飼ったことないのに。
それにネコのゲージは?餌は?トイレは?
何も準備していないのにこの子を引き取って何考えてるの?」



下腹部の痛みなんて気にならないくらいにムカムカとしてくる中、昔お母さんがお兄ちゃんに言った言葉と同じ言葉を口にした。



「そんな砂川さんにこの子を引き渡して羽鳥さんも何考えてるの?
砂川さんに引き渡すくらいなら自分で引き取れば良いじゃん。
自分はあの若い男の子と同棲してるんだから、自分で引き取れば良いじゃん。」



「羽鳥さんはそのネコのきょうだいを1匹引き取ったらしい。
今写真を見せて貰ったら真っ白で綺麗なネコだった。」



「何それ・・・。
自分はそっちのネコを選んだの・・・?
この子はこんなに不細工だもんね・・・。
こんなに不細工なネコなんていらないもんね・・・。
何でこんなに不細工なのに砂川さんは引き取ったの・・・?
可哀想だから引き取ったの・・・?」



ボランティア精神を持っている貴族の砂川さんに涙を拭くことなく聞いた。



そしたら、砂川さんが何故か照れたような顔で笑って・・・



「純愛ちゃん、クロのことが大好きだったから。
そのネコも真っ黒なネコだって佐伯さんから聞いて。」



そんな意味不明なことを口にしてきて、それには続きを待った。



「俺、ネコどころか小動物も金魚も飼ったことがないから純愛ちゃんにそのネコのお世話をして貰いたいんだけど。」



「は・・・?」



更に意味不明な発言をしてきて、それには怒りをぶつけようとした。



でも、私よりも早く砂川さんが声を出した。



「俺のトコロで一緒に暮らさないかな。
純愛ちゃんのお世話は俺がするから。」



「はあ・・・?」



「佐伯さんも一緒に暮らす?
部屋なら沢山あるよ。」



「一緒に暮らしたい気持ちはあるけど、自分の彼女が他の男ともイチャイチャしてるなんて辛すぎるからやめておく。
たまに遊びにこさせてよ!」



「うん、いつでもおいで。」



「待って・・・2人で話を進めないで。」



慌てて立ち上がった私に佐伯さんと砂川さんは真剣な顔で私のことを見ている。
何でか同じような表情に見えて・・・



「彼女のお兄さんのことを悪く言いたくないけど、あのお兄さんは今の純愛ちゃんに邪魔。」



佐伯さんが急にお兄ちゃんのことを出してきた。
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