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それから数分、足音もリビングの扉が開く音も聞こえず、私の背中を撫で続けてくれる佐伯さんが声を上げたことで砂川さんがリビングに戻ってきたことが分かった。
「羽鳥さんは?」
「“彼女”は帰ったよ。」
「え~、羽鳥さんともお花見を一緒にしたかったのに。
じゃあ羽鳥さん、何しにきた・・・・あ!!!!」
佐伯さんがあまりにも大きな声を上げたから、思わず私も顔を少し上げて確認をしてしまった。
羽鳥さんは何故か帰ってしまったとも分かったから。
そしたら、見えた。
砂川さんが何だか大きめのバッグを手に持っているのが。
それを見て、私達が花見をすると聞いた羽鳥さんがわざわざお弁当でも作ってきたのだと思った。
あの人がいかにもやりそうなことで、私達がワイワイと楽しく買ってきた食べ物があるなんて何も考えていない。
羽鳥さんは何も考えていない。
羽鳥さんは砂川さんのことを何も考えてくれていない。
「純愛ちゃん?」
バッグをテーブルにも床にも置くことなく、砂川さんは大切そうに抱えて私の目の前に膝をついた。
「何で泣いてるの?」
「純愛ちゃん、お腹痛くなっちゃったって。
出血も止まらないみたいだし、生理が終わったら私も病院に付き添うから。」
「それなら俺も付き添うよ。
婦人科だから俺が付き添うのは嫌だと言われたけど、佐伯さんもいるなら俺がいてもいいよね?」
「謎の3人組で婦人科にいるのもどうかと思うけどね!」
佐伯さんが楽しそうに笑い、私の背中から手を離して砂川さんが抱えているバッグに両手を伸ばした。
「羽鳥さんから!?」
「うん。」
「キャ~っっっ、嬉し~い!!!」
歓喜の声を上げる佐伯さんの両手に砂川さんがバッグを優しく渡し、佐伯さんもそのバッグを大切そうに受け取った。
そんな2人のやり取りを見て下腹部がもっと痛くなってくる。
冷や汗だけではなく涙も止まらない。
「純愛ちゃんも喜ぶね!」
何も知らない佐伯さんがどこか幼い顔で笑い、膝の上でやけにソ~っとバッグのファスナーを開けた。
それと同時に私はまたうずくまり、バッグの中身から目を逸らした。
羽鳥さんが持ってきた弁当なんて私はいらない。
私は食べない。
食べたくもない。
見たくもない。
私の全てが拒絶している。
「可愛い・・・。」
佐伯さんが小さく口にした声が聞こえ・・・
「羽鳥さんから送って貰った写真よりも酷い見た目だ。」
「そんなことないって!
めっちゃ可愛いじゃん!!」
「いや、これは可哀想なくらい不細工だよ。」
「めっちゃ可愛いじゃん!!
愛おしくなるくらいに可愛いしかないよ!!」
2人のやり取りを耳にし、ゆっくりとだけど顔を上げた。
「純愛ちゃんはどう思う?
可愛いよね?」
佐伯さんから聞かれたと同時に、見えた。
バッグの中身が、見えた。
弁当なんて入っていなかったバッグの中身が。
そこには、いた。
ネコがいた。
小さな小さなネコ。
真っ黒なネコ。
昔我が家で引き取った子猫だったクロのような黒い子猫。
でも・・・
「酷いね・・・。」
“可哀想なくらい不細工”な見た目。
黒い毛は長毛で驚くほど細く、まばらに縮れているだけではなくそこに白いゴミのような物が沢山ついてしまっている。
そして鼻の右側だけ小さな範囲で白い毛が生えていて、その白い毛で鼻水が垂れているようにも見える。
可愛げのない鋭い目が私達のことを睨み付けている。
「羽鳥さんは?」
「“彼女”は帰ったよ。」
「え~、羽鳥さんともお花見を一緒にしたかったのに。
じゃあ羽鳥さん、何しにきた・・・・あ!!!!」
佐伯さんがあまりにも大きな声を上げたから、思わず私も顔を少し上げて確認をしてしまった。
羽鳥さんは何故か帰ってしまったとも分かったから。
そしたら、見えた。
砂川さんが何だか大きめのバッグを手に持っているのが。
それを見て、私達が花見をすると聞いた羽鳥さんがわざわざお弁当でも作ってきたのだと思った。
あの人がいかにもやりそうなことで、私達がワイワイと楽しく買ってきた食べ物があるなんて何も考えていない。
羽鳥さんは何も考えていない。
羽鳥さんは砂川さんのことを何も考えてくれていない。
「純愛ちゃん?」
バッグをテーブルにも床にも置くことなく、砂川さんは大切そうに抱えて私の目の前に膝をついた。
「何で泣いてるの?」
「純愛ちゃん、お腹痛くなっちゃったって。
出血も止まらないみたいだし、生理が終わったら私も病院に付き添うから。」
「それなら俺も付き添うよ。
婦人科だから俺が付き添うのは嫌だと言われたけど、佐伯さんもいるなら俺がいてもいいよね?」
「謎の3人組で婦人科にいるのもどうかと思うけどね!」
佐伯さんが楽しそうに笑い、私の背中から手を離して砂川さんが抱えているバッグに両手を伸ばした。
「羽鳥さんから!?」
「うん。」
「キャ~っっっ、嬉し~い!!!」
歓喜の声を上げる佐伯さんの両手に砂川さんがバッグを優しく渡し、佐伯さんもそのバッグを大切そうに受け取った。
そんな2人のやり取りを見て下腹部がもっと痛くなってくる。
冷や汗だけではなく涙も止まらない。
「純愛ちゃんも喜ぶね!」
何も知らない佐伯さんがどこか幼い顔で笑い、膝の上でやけにソ~っとバッグのファスナーを開けた。
それと同時に私はまたうずくまり、バッグの中身から目を逸らした。
羽鳥さんが持ってきた弁当なんて私はいらない。
私は食べない。
食べたくもない。
見たくもない。
私の全てが拒絶している。
「可愛い・・・。」
佐伯さんが小さく口にした声が聞こえ・・・
「羽鳥さんから送って貰った写真よりも酷い見た目だ。」
「そんなことないって!
めっちゃ可愛いじゃん!!」
「いや、これは可哀想なくらい不細工だよ。」
「めっちゃ可愛いじゃん!!
愛おしくなるくらいに可愛いしかないよ!!」
2人のやり取りを耳にし、ゆっくりとだけど顔を上げた。
「純愛ちゃんはどう思う?
可愛いよね?」
佐伯さんから聞かれたと同時に、見えた。
バッグの中身が、見えた。
弁当なんて入っていなかったバッグの中身が。
そこには、いた。
ネコがいた。
小さな小さなネコ。
真っ黒なネコ。
昔我が家で引き取った子猫だったクロのような黒い子猫。
でも・・・
「酷いね・・・。」
“可哀想なくらい不細工”な見た目。
黒い毛は長毛で驚くほど細く、まばらに縮れているだけではなくそこに白いゴミのような物が沢山ついてしまっている。
そして鼻の右側だけ小さな範囲で白い毛が生えていて、その白い毛で鼻水が垂れているようにも見える。
可愛げのない鋭い目が私達のことを睨み付けている。
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