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砂川さんからのその言葉には何も返せなかった。
文句を言いまくりたい気持ちは沢山あるのに、何も言葉にならなかった。
砂川さんがあまりにも強く私のことを抱き締めるから。
だからこんなにも苦しくなって、私は泣き続けたのだと思う。
号泣する私のことを砂川さんはずっと抱き締めていて。
私の左手も佐伯さんの温かい手と繋がれていて。
こんなにも苦しいのにこんなにも“幸せ”を感じてしまいもっと苦しくなった。
いつかこの2人が私の元からいなくなるのだと思うとこんなにも苦しい。
だから今は、2人の存在を何度も何度も何度も確かめながら眠りについた。
“このまま目覚めなければ良いのに”と思いながら。
“このまま目覚めなければずっと幻想の中にいられるのに”と思いながら。
“このまま明日なんて来なければ良いのに”
強くはなれそうにない私がそう思いながら深く落ちていく。
深く深く、落ちていく。
───────
──────────
──────────────・・・・・・・
そして、次に目を開けた時には世界は随分と明るくなっていて。
更に・・・
「あっっっっつ・・・・。」
あまりの暑さに嘆き・・・
「せっっっっま・・・・。」
あまりの狭さにも嘆き、でも自然と笑った。
私の右側には砂川さん、左側には佐伯さん。
その2人が私のことを絞め殺すつもりなのかというくらい強く抱き締めているから。
─────────────・・・・
「朝も綺麗だね~!!
朝からお風呂に入れて、しかも露天風呂とか最高~!!」
佐伯さんと2人で露天風呂に入り朝の大自然を眺める。
「佐伯さんも砂川さんも朝から元気だね。」
「純愛ちゃんは朝が結構弱いんだね?」
「そんなことはないはずだから、寝苦しかったんだと思う。」
「2人に挟まれちゃってね~。
私は久しぶりにグッッッスリ眠っちゃった!
やっぱり好きな人と一緒に寝るとよく眠れる!!」
どこか幼い笑顔で笑う佐伯さんが、今日も真っ青な空を見上げた。
「後で3人で写真を撮りたいな。」
「写真か・・・うん、いいね。」
「そういえば、私さっき“おとーさん”から売店でお土産を沢山買って貰ったって言ったでしょ?」
「うん、彼女の私のことを自分の目の前で抱き締めていた罰だよね?」
「朝からめっちゃムカついた。
売店にいた時に見えたけど、この旅館に女装趣味のオジサン軍団が泊まってたみたい。
みんなでロビーでキャッキャと写真を撮って、そのまま大浴場の方に向かっていってた。」
「え・・・、砂川さんって売店の後に大浴場に行ったんだよね?」
「そうだよ♪
でも、趣味が女装なだけで恋愛対象が同性とは限らないしね♪」
「それはそうだね。」
「30人くらいいたけど、たぶん大丈夫だよ♪」
「それ、大丈夫かな・・・!?」
爆笑している佐伯さんの顔を見て、それに釣られるように私も笑った。
今日も晴れ。
今日も楽しい1日になるかもしれない。
朝からこんなに笑えているから。
生理はほぼ終わった。
そのことにも安心し、旅館の前で佐伯さんと砂川さんの真ん中で2人と手を繋ぐ。
「はいっ、チーズ♪」
佐伯さんの掛け声に合わせて私は空を見上げた。
そしたら、真っ青な空には私達3人の白い姿が浮かんだ。
3人で仲良く手を繋いでいる白い影。
「本物の写真じゃなくてごめんね!
私、アレが大嫌いで!!
私の写真はこれなんだ!!」
「全く構わない・・・。
俺もゲッソリとしているだろうし。」
「サウナで身体を触られた?」
「いや、何もされていない。
でも何かされると思うと物凄く怖かったよ。」
「それって偏見だから。」
「実際に被害を受けたことによって警戒をするのは至極当然のことだよ。」
「その言葉、砂川さんにそのまま返す。」
「2人とも~!せっかくの写真なんだから楽しく撮ろうよ~!!」
顔までは見えない空に浮かぶ“写真”。
それをしっかりと目に焼き付けた。
2人が私の元からいなくなってしまった後も覚えていられるように。
私の記憶の中に残っていられるように。
この時をしっかりと刻み込んだ。
文句を言いまくりたい気持ちは沢山あるのに、何も言葉にならなかった。
砂川さんがあまりにも強く私のことを抱き締めるから。
だからこんなにも苦しくなって、私は泣き続けたのだと思う。
号泣する私のことを砂川さんはずっと抱き締めていて。
私の左手も佐伯さんの温かい手と繋がれていて。
こんなにも苦しいのにこんなにも“幸せ”を感じてしまいもっと苦しくなった。
いつかこの2人が私の元からいなくなるのだと思うとこんなにも苦しい。
だから今は、2人の存在を何度も何度も何度も確かめながら眠りについた。
“このまま目覚めなければ良いのに”と思いながら。
“このまま目覚めなければずっと幻想の中にいられるのに”と思いながら。
“このまま明日なんて来なければ良いのに”
強くはなれそうにない私がそう思いながら深く落ちていく。
深く深く、落ちていく。
───────
──────────
──────────────・・・・・・・
そして、次に目を開けた時には世界は随分と明るくなっていて。
更に・・・
「あっっっっつ・・・・。」
あまりの暑さに嘆き・・・
「せっっっっま・・・・。」
あまりの狭さにも嘆き、でも自然と笑った。
私の右側には砂川さん、左側には佐伯さん。
その2人が私のことを絞め殺すつもりなのかというくらい強く抱き締めているから。
─────────────・・・・
「朝も綺麗だね~!!
朝からお風呂に入れて、しかも露天風呂とか最高~!!」
佐伯さんと2人で露天風呂に入り朝の大自然を眺める。
「佐伯さんも砂川さんも朝から元気だね。」
「純愛ちゃんは朝が結構弱いんだね?」
「そんなことはないはずだから、寝苦しかったんだと思う。」
「2人に挟まれちゃってね~。
私は久しぶりにグッッッスリ眠っちゃった!
やっぱり好きな人と一緒に寝るとよく眠れる!!」
どこか幼い笑顔で笑う佐伯さんが、今日も真っ青な空を見上げた。
「後で3人で写真を撮りたいな。」
「写真か・・・うん、いいね。」
「そういえば、私さっき“おとーさん”から売店でお土産を沢山買って貰ったって言ったでしょ?」
「うん、彼女の私のことを自分の目の前で抱き締めていた罰だよね?」
「朝からめっちゃムカついた。
売店にいた時に見えたけど、この旅館に女装趣味のオジサン軍団が泊まってたみたい。
みんなでロビーでキャッキャと写真を撮って、そのまま大浴場の方に向かっていってた。」
「え・・・、砂川さんって売店の後に大浴場に行ったんだよね?」
「そうだよ♪
でも、趣味が女装なだけで恋愛対象が同性とは限らないしね♪」
「それはそうだね。」
「30人くらいいたけど、たぶん大丈夫だよ♪」
「それ、大丈夫かな・・・!?」
爆笑している佐伯さんの顔を見て、それに釣られるように私も笑った。
今日も晴れ。
今日も楽しい1日になるかもしれない。
朝からこんなに笑えているから。
生理はほぼ終わった。
そのことにも安心し、旅館の前で佐伯さんと砂川さんの真ん中で2人と手を繋ぐ。
「はいっ、チーズ♪」
佐伯さんの掛け声に合わせて私は空を見上げた。
そしたら、真っ青な空には私達3人の白い姿が浮かんだ。
3人で仲良く手を繋いでいる白い影。
「本物の写真じゃなくてごめんね!
私、アレが大嫌いで!!
私の写真はこれなんだ!!」
「全く構わない・・・。
俺もゲッソリとしているだろうし。」
「サウナで身体を触られた?」
「いや、何もされていない。
でも何かされると思うと物凄く怖かったよ。」
「それって偏見だから。」
「実際に被害を受けたことによって警戒をするのは至極当然のことだよ。」
「その言葉、砂川さんにそのまま返す。」
「2人とも~!せっかくの写真なんだから楽しく撮ろうよ~!!」
顔までは見えない空に浮かぶ“写真”。
それをしっかりと目に焼き付けた。
2人が私の元からいなくなってしまった後も覚えていられるように。
私の記憶の中に残っていられるように。
この時をしっかりと刻み込んだ。
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