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「砂川さんから聞いたの・・・?」



背中にひんやりとする扉を感じるのに、ブワッと汗が吹き出した。



「うん・・・フフッ、可愛い。
温泉に入ってる時よりも顔が真っ赤だよ?」



「佐伯さんにそんなことをバラすなんて最悪なんだけど・・・。」



「金曜日に課長から旅行のことで確認の電話が来たからその時に私からどうなってるのか聞いちゃった。
純愛ちゃん、なかなか“女”にならないみたいだから。」



少し肌荒れをしていても“格好良い”私の彼氏がめちゃくちゃ不機嫌な顔で私に詰め寄ってくる。



お互いに下着の上にキャミソールを着ている姿。



胸が物凄くドキドキしてくるのを感じる。
でも嫌なドキドキではなくてそんな自分にも戸惑う。



だって、佐伯さんは本当に“男”で・・・。



どこをどう見ても“男”としか感じなくて・・・。



怖いくらいの“愛”を感じるその目で私のことを見上げ、私の背中についてしまった扉に片手をついてきた。



いわゆる“壁ドン”というものをされ、確かにこれはめちゃくちゃときめく・・・と、そんな感想まで抱きながら佐伯さんに口を開く。



「ボランティアだよ・・・。」



「ボランティア?」



「貴族ってボランティア精神を持っているらしいから、可哀想な私に砂川さんはボランティアでセックスをしようとしてくれただけ。」



「・・・純愛ちゃってそこまで拗らせてたっけ?」



佐伯さんが“佐伯さん”の顔に戻り可愛く首を傾げた。



「課長って普通に純愛ちゃんのことが大好きじゃん。」



「うん、“普通”に好きらしいね。」



「・・・ごめん、“普通”の使い方を間違えた。
“凄く”好きだよ?」



「うん、“凄く”好きらしい。」



答えた私に佐伯さんは驚いた顔をし、それから爆笑をした。



そして私の目の前からサッといなくなり、浴衣を羽織り私の後ろにあった扉を開けて向こう側まで歩いていき・・・



「・・・って、課長まだ戻ってないの!?
女子のお風呂より遅いとかあり得るの!?」



砂川さんが入っているのは恐らくサウナと水風呂の繰り返しなのであり得ると思いながら、私も浴衣を羽織ってから佐伯さんの後を追った。



「佐伯さん。」



浴衣の帯を佐伯さんに渡すと佐伯さんがそれを受け取り帯をし始めた。
それを確認してから私も帯を巻き始め、佐伯さんの方を見ずに口にした。



「私は砂川さんとエッチしたくない。」



「生理的に無理っぽい?」



「精神的に無理。」



「精神的に?」



「色々と理由はあるけど、まず砂川さんって私以外の女とエッチしてるし。」



「ああ、前にそういう女がいたらしいね。」



「・・・前にじゃなくて、現在の話。」



“前に”の女は私のことなのでそれには苦笑いをしながら答え、帯をしたのに顔を上げられないまま顔だけは笑顔を作った。



そしたら・・・



「課長がエッチをしてる女なんて今いないよ?
童貞ではないけど全然経験がないらしくて、金曜日の夜の電話が私のセックス講座になったくらいの人だし。
あ・・・ヤバい、バラしちゃった。」



佐伯さんがそんな驚くことを口にしてきた。
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