上 下
146 / 166
10

10-1

しおりを挟む
「砂川さんから聞いたの・・・?」



背中にひんやりとする扉を感じるのに、ブワッと汗が吹き出した。



「うん・・・フフッ、可愛い。
温泉に入ってる時よりも顔が真っ赤だよ?」



「佐伯さんにそんなことをバラすなんて最悪なんだけど・・・。」



「金曜日に課長から旅行のことで確認の電話が来たからその時に私からどうなってるのか聞いちゃった。
純愛ちゃん、なかなか“女”にならないみたいだから。」



少し肌荒れをしていても“格好良い”私の彼氏がめちゃくちゃ不機嫌な顔で私に詰め寄ってくる。



お互いに下着の上にキャミソールを着ている姿。



胸が物凄くドキドキしてくるのを感じる。
でも嫌なドキドキではなくてそんな自分にも戸惑う。



だって、佐伯さんは本当に“男”で・・・。



どこをどう見ても“男”としか感じなくて・・・。



怖いくらいの“愛”を感じるその目で私のことを見上げ、私の背中についてしまった扉に片手をついてきた。



いわゆる“壁ドン”というものをされ、確かにこれはめちゃくちゃときめく・・・と、そんな感想まで抱きながら佐伯さんに口を開く。



「ボランティアだよ・・・。」



「ボランティア?」



「貴族ってボランティア精神を持っているらしいから、可哀想な私に砂川さんはボランティアでセックスをしようとしてくれただけ。」



「・・・純愛ちゃってそこまで拗らせてたっけ?」



佐伯さんが“佐伯さん”の顔に戻り可愛く首を傾げた。



「課長って普通に純愛ちゃんのことが大好きじゃん。」



「うん、“普通”に好きらしいね。」



「・・・ごめん、“普通”の使い方を間違えた。
“凄く”好きだよ?」



「うん、“凄く”好きらしい。」



答えた私に佐伯さんは驚いた顔をし、それから爆笑をした。



そして私の目の前からサッといなくなり、浴衣を羽織り私の後ろにあった扉を開けて向こう側まで歩いていき・・・



「・・・って、課長まだ戻ってないの!?
女子のお風呂より遅いとかあり得るの!?」



砂川さんが入っているのは恐らくサウナと水風呂の繰り返しなのであり得ると思いながら、私も浴衣を羽織ってから佐伯さんの後を追った。



「佐伯さん。」



浴衣の帯を佐伯さんに渡すと佐伯さんがそれを受け取り帯をし始めた。
それを確認してから私も帯を巻き始め、佐伯さんの方を見ずに口にした。



「私は砂川さんとエッチしたくない。」



「生理的に無理っぽい?」



「精神的に無理。」



「精神的に?」



「色々と理由はあるけど、まず砂川さんって私以外の女とエッチしてるし。」



「ああ、前にそういう女がいたらしいね。」



「・・・前にじゃなくて、現在の話。」



“前に”の女は私のことなのでそれには苦笑いをしながら答え、帯をしたのに顔を上げられないまま顔だけは笑顔を作った。



そしたら・・・



「課長がエッチをしてる女なんて今いないよ?
童貞ではないけど全然経験がないらしくて、金曜日の夜の電話が私のセックス講座になったくらいの人だし。
あ・・・ヤバい、バラしちゃった。」



佐伯さんがそんな驚くことを口にしてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...