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「1番お気に入りの男の子っていうか、彼氏だよ?」
「彼氏・・・。」
佐伯さんの答えに私は戸惑う。
だって、羽鳥さんに彼氏が出来ることはないはずで。
あの人は凄く可哀想な女の人でもあり、“普通”の恋愛は出来ないはずのお嬢様。
“望は把握してるのかな?”
望の為にも1度連絡をしようと思い、その気力だけで足を動かそうとした。
そしたら・・・
「羽鳥さんに彼氏はいないよ。」
砂川さんの静かで落ち着いた声が、でもやけに重く感じる声がこの足を止めた。
「羽鳥さんからは彼氏ではないと聞いている。
“彼女”は彼氏という存在は作れない。
だから“1番お気に入りの男の子”という表現が正しいかもね。
あそこまで若くて今時の普通の男の子でビックリしたけど、羽鳥さんはああいう男がタイプだったのか。」
砂川さんが全然気にしていない雰囲気で、それどころか余裕しか感じないような雰囲気でそう言った。
「羽鳥さんの立場もあるから、あの男の子のことは見なかったことにしよう。」
見なかったことにしようとしている砂川さんに対して私はどうしても口が動いてしまった。
「見なかったことになんて出来ないよ。
見てしまったからには望に報告する。
あんな普通の男の子と同棲しちゃってるなんて、“いけないコト”の範囲を超えてるでしょ。」
「同棲じゃないよ、ルームシェアらしい。」
「そんなのただの言い訳だから!!
エッチまでしてるのにそんな言い訳通用しないから!!
あの男の子との子どもを妊娠でもしたらどうするの!?
これ以上望に迷惑を掛けてこれ以上・・・っ」
“砂川さんのことをバカにするのは良い加減して欲しい”
その言葉は必死に飲み込んだ。
元セフレの私が口にする言葉でもないように思ったから。
「でもさ、羽鳥さんってどんどん綺麗になってるし、やっぱり恋愛は女を変えるよね~。」
佐伯さんが感心した声で、今はどうでも良いそんなことを言ってきた。
「純愛ちゃん、何でそんなに怒ってるの?
私もあの男の子では羽鳥さんの相手にしてはちょっと若すぎて物足りないなって思うけど、悪くはない男の子だとは思うよ?」
「悪くないとかそんな問題じゃなくて、羽鳥さんは増田財閥の分家のお嬢様なの。
1番お気に入りの若い男の子がいるとか、その男の子と一緒に住んでるとか、その男の子とエッチしてるとか、そんなのが許されるお嬢様じゃないから。」
「純愛ちゃんの高校からの友達が小関の“家”の秘書の生まれで、その子のことを想ってくれているんだよ。」
「それもそうだけど、それだけじゃなくて・・・!!」
「純愛ちゃんの友達のことは私にはよく分からないけど、別に良いんじゃない?
だって羽鳥さんは結婚したら“家”にいるだけの女にならないでしょ?」
佐伯さんが砂川さんに向かってそう言うと、砂川さんは深く頷いた。
「譲社長も“彼女”本人もそのつもりでいる。
・・・元気君はまた違う考えみたいだけど。」
「元気さんはどんな考えなの?・・・って、アレか。
“楽しく生きよう、ウェ~イ♪”みたいなやつか。」
佐伯さんの言葉に私はガクッと項垂れる。
「増田元気ってそんな感じなの?
本当にそんな感じ?
増田財閥、大丈夫なのかな・・・。」
「大丈夫だよ。」
答えたのは砂川さんではなくて佐伯さんだった。
「元気さんは海を越えてまで冒険に行った。」
綺麗な青空の下、雲から出てきたのか太陽の眩しい光りが佐伯さんに当たる。
「この世界は弱肉強食。
綺麗にしか生きられないような奴は悪いこともしてきた奴に簡単に食われる。
だから冒険をしないといけないの。
良いことだけじゃなくて悪いこともする冒険をするの。」
「面白いね、誰かに言われたの?」
「幼馴染みの両親が私達子どもによく言ってた。
その夫婦はマツイ化粧品の代表取締役に就任して、息子の1人は永家財閥の本家の娘と結婚した。」
「ああ・・・うちの社長の幼馴染みだっていうご夫婦か。」
佐伯さんが怖いくらい強い目で頷き、それから私のことを真っ直ぐと見てきた。
「守りたいと思うモノがあるならそれを守れるくらい強くならないといけない。
守りたいモノを守る為にぶっ壊すこともぶっ殺すことも出来るくらい、強くなれば良い。」
太陽の光りを浴びる佐伯さんが満足そうに笑った。
「私はこんな心臓とこんな醜い身体で、二十歳までの自分の人生を守りきった。
色んなモノをぶっ壊したし色んな人の心をぶっ殺した。
守りたいモノがあるのなら強くなるんだよ、純愛ちゃん。
こんな所で嘆いているだけじゃ何も始まらない。」
綺麗な青空の下、眩しい太陽の光りの中、綺麗な庭園で聞いた佐伯さんの言葉。
佐伯さんの姿。
この女の子こそ、芸能人みたいだなと思った。
この女の子こそ、経理部の部屋の中に留めておくには勿体ないと・・・。
佐伯さんからの言葉をしっかりと受け取りながらも冷静に、そのことは考えてしまった。
「彼氏・・・。」
佐伯さんの答えに私は戸惑う。
だって、羽鳥さんに彼氏が出来ることはないはずで。
あの人は凄く可哀想な女の人でもあり、“普通”の恋愛は出来ないはずのお嬢様。
“望は把握してるのかな?”
望の為にも1度連絡をしようと思い、その気力だけで足を動かそうとした。
そしたら・・・
「羽鳥さんに彼氏はいないよ。」
砂川さんの静かで落ち着いた声が、でもやけに重く感じる声がこの足を止めた。
「羽鳥さんからは彼氏ではないと聞いている。
“彼女”は彼氏という存在は作れない。
だから“1番お気に入りの男の子”という表現が正しいかもね。
あそこまで若くて今時の普通の男の子でビックリしたけど、羽鳥さんはああいう男がタイプだったのか。」
砂川さんが全然気にしていない雰囲気で、それどころか余裕しか感じないような雰囲気でそう言った。
「羽鳥さんの立場もあるから、あの男の子のことは見なかったことにしよう。」
見なかったことにしようとしている砂川さんに対して私はどうしても口が動いてしまった。
「見なかったことになんて出来ないよ。
見てしまったからには望に報告する。
あんな普通の男の子と同棲しちゃってるなんて、“いけないコト”の範囲を超えてるでしょ。」
「同棲じゃないよ、ルームシェアらしい。」
「そんなのただの言い訳だから!!
エッチまでしてるのにそんな言い訳通用しないから!!
あの男の子との子どもを妊娠でもしたらどうするの!?
これ以上望に迷惑を掛けてこれ以上・・・っ」
“砂川さんのことをバカにするのは良い加減して欲しい”
その言葉は必死に飲み込んだ。
元セフレの私が口にする言葉でもないように思ったから。
「でもさ、羽鳥さんってどんどん綺麗になってるし、やっぱり恋愛は女を変えるよね~。」
佐伯さんが感心した声で、今はどうでも良いそんなことを言ってきた。
「純愛ちゃん、何でそんなに怒ってるの?
私もあの男の子では羽鳥さんの相手にしてはちょっと若すぎて物足りないなって思うけど、悪くはない男の子だとは思うよ?」
「悪くないとかそんな問題じゃなくて、羽鳥さんは増田財閥の分家のお嬢様なの。
1番お気に入りの若い男の子がいるとか、その男の子と一緒に住んでるとか、その男の子とエッチしてるとか、そんなのが許されるお嬢様じゃないから。」
「純愛ちゃんの高校からの友達が小関の“家”の秘書の生まれで、その子のことを想ってくれているんだよ。」
「それもそうだけど、それだけじゃなくて・・・!!」
「純愛ちゃんの友達のことは私にはよく分からないけど、別に良いんじゃない?
だって羽鳥さんは結婚したら“家”にいるだけの女にならないでしょ?」
佐伯さんが砂川さんに向かってそう言うと、砂川さんは深く頷いた。
「譲社長も“彼女”本人もそのつもりでいる。
・・・元気君はまた違う考えみたいだけど。」
「元気さんはどんな考えなの?・・・って、アレか。
“楽しく生きよう、ウェ~イ♪”みたいなやつか。」
佐伯さんの言葉に私はガクッと項垂れる。
「増田元気ってそんな感じなの?
本当にそんな感じ?
増田財閥、大丈夫なのかな・・・。」
「大丈夫だよ。」
答えたのは砂川さんではなくて佐伯さんだった。
「元気さんは海を越えてまで冒険に行った。」
綺麗な青空の下、雲から出てきたのか太陽の眩しい光りが佐伯さんに当たる。
「この世界は弱肉強食。
綺麗にしか生きられないような奴は悪いこともしてきた奴に簡単に食われる。
だから冒険をしないといけないの。
良いことだけじゃなくて悪いこともする冒険をするの。」
「面白いね、誰かに言われたの?」
「幼馴染みの両親が私達子どもによく言ってた。
その夫婦はマツイ化粧品の代表取締役に就任して、息子の1人は永家財閥の本家の娘と結婚した。」
「ああ・・・うちの社長の幼馴染みだっていうご夫婦か。」
佐伯さんが怖いくらい強い目で頷き、それから私のことを真っ直ぐと見てきた。
「守りたいと思うモノがあるならそれを守れるくらい強くならないといけない。
守りたいモノを守る為にぶっ壊すこともぶっ殺すことも出来るくらい、強くなれば良い。」
太陽の光りを浴びる佐伯さんが満足そうに笑った。
「私はこんな心臓とこんな醜い身体で、二十歳までの自分の人生を守りきった。
色んなモノをぶっ壊したし色んな人の心をぶっ殺した。
守りたいモノがあるのなら強くなるんだよ、純愛ちゃん。
こんな所で嘆いているだけじゃ何も始まらない。」
綺麗な青空の下、眩しい太陽の光りの中、綺麗な庭園で聞いた佐伯さんの言葉。
佐伯さんの姿。
この女の子こそ、芸能人みたいだなと思った。
この女の子こそ、経理部の部屋の中に留めておくには勿体ないと・・・。
佐伯さんからの言葉をしっかりと受け取りながらも冷静に、そのことは考えてしまった。
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