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お兄ちゃんといつもよりも激しい兄妹喧嘩をした翌日、私の彼氏である佐伯さんと会えることを心の支えに夜を過ごしたのに・・・
「何で砂川さんまでいるの?」
信じられないことに、待ち合わせの新幹線乗り場の所には佐伯さんの隣に砂川さんまでいた。
ボストンバッグは持っていないから砂川さんは見送りだけなのかと一瞬で考えを巡らせた時・・・
「佐伯さんが誘ってくれて、俺も付き添うよ。」
その返事に更に気分が落ちていく中、砂川さんは楽しそうな顔で笑っている。
「純愛ちゃんが1番楽しみにしていたみたいだね。
佐伯さんも俺もほとんど荷物がないのに。」
砂川さんは私が持つボストンバッグの持ち手に手を掛け、何も反論出来ずにいた私に嬉しそうに笑った。
「純愛ちゃんは出不精だけど旅行は好きだって言ってたよね。」
その通りのことを言われ、やっぱり何も反論出来ないので黙ったままボストンバッグから手を離した。
ムカつくからこの重いボストンバッグは砂川さんに持って貰うことにする。
「砂川さんもいるって教えてくれれば良かったのに。」
「純愛ちゃんって課長のことが嫌いでしょ?」
「うん。」
即答した私に佐伯さんだけではなく砂川さんも大きく笑った。
「私は田代よりも課長推しだからさ、ムカつくけど。」
佐伯さんの言葉に顔を作ることなく答える。
「私が嫌いな相手なのに佐伯さんは推すの?」
「純愛ちゃんは課長のことが生理的に嫌い?」
「そういうのとは違うけど・・・。」
「それなら大丈夫なんじゃない?」
佐伯さんは不機嫌な顔で吐き捨てるように口にした。
「女が男を異性として好きになるのなんて、めっちゃ簡単だもん。」
「「そうなの・・・?」」
砂川さんと声が重なってしまい、砂川さんが私のことを見下ろしたことが分かった。
でも私は意地でも顔を動かさずに“男”の顔になっている佐伯さんのことを見詰め続ける。
佐伯さんは不機嫌な顔を続けながらも“男”から“女”に変わったように見え・・・
私ではなく砂川さんのことを見上げた。
「誰よりも特別扱いをして可愛がっていれば、女なんて簡単にコロッと好きにさせられるよ。」
「「いや、それはないと思う。」」
砂川さんと声だけではなく意見まで合い、それには砂川さんのことを見上げた。
「それはナイよね?」
「それはナイと俺も思う。」
「そんな簡単なことでコロッとなんてナイでしょ。」
「人間の思考はもっと複雑で・・・」
「あ!新幹線来たよ、似た者同士のお二人さん!!」
佐伯さんが“女”の雰囲気で嬉しそうに声を上げ、迫ってくる新幹線を見ている。
「検査がこんなに嫌じゃないのは初めて。
2人とも、来てくれてありがとう。」
それを聞き、佐伯さんの隣に並んだ。
「「次の検査も付き添うよ。」」
佐伯さんの隣に並んだ私の隣に砂川さんが並び、また声と意見が合わさった。
でも嫌な気持ちにはならず、昔から“そういう人”だけど優しい人でもある砂川さんのことを“嫌い”だとはやっぱり思えなくて。
羽鳥さんのことを考えると“嫌い”だと思うことしかないのに、それ以上に“やっぱり好きだな”と思う気持ちが大きくて。
「私は、誰にでも優しく出来る砂川さんの“そういうトコロ”は嫌いじゃない。」
そう口にしてから、もう1つ付け足す。
「でも、“そういうトコロ”がめちゃくちゃ嫌いでもある。」
「「どっち・・・!?」」
初めて佐伯さんと砂川さんの言葉が重なり、それには3人で笑いながら新幹線に乗り込んだ。
「何で砂川さんまでいるの?」
信じられないことに、待ち合わせの新幹線乗り場の所には佐伯さんの隣に砂川さんまでいた。
ボストンバッグは持っていないから砂川さんは見送りだけなのかと一瞬で考えを巡らせた時・・・
「佐伯さんが誘ってくれて、俺も付き添うよ。」
その返事に更に気分が落ちていく中、砂川さんは楽しそうな顔で笑っている。
「純愛ちゃんが1番楽しみにしていたみたいだね。
佐伯さんも俺もほとんど荷物がないのに。」
砂川さんは私が持つボストンバッグの持ち手に手を掛け、何も反論出来ずにいた私に嬉しそうに笑った。
「純愛ちゃんは出不精だけど旅行は好きだって言ってたよね。」
その通りのことを言われ、やっぱり何も反論出来ないので黙ったままボストンバッグから手を離した。
ムカつくからこの重いボストンバッグは砂川さんに持って貰うことにする。
「砂川さんもいるって教えてくれれば良かったのに。」
「純愛ちゃんって課長のことが嫌いでしょ?」
「うん。」
即答した私に佐伯さんだけではなく砂川さんも大きく笑った。
「私は田代よりも課長推しだからさ、ムカつくけど。」
佐伯さんの言葉に顔を作ることなく答える。
「私が嫌いな相手なのに佐伯さんは推すの?」
「純愛ちゃんは課長のことが生理的に嫌い?」
「そういうのとは違うけど・・・。」
「それなら大丈夫なんじゃない?」
佐伯さんは不機嫌な顔で吐き捨てるように口にした。
「女が男を異性として好きになるのなんて、めっちゃ簡単だもん。」
「「そうなの・・・?」」
砂川さんと声が重なってしまい、砂川さんが私のことを見下ろしたことが分かった。
でも私は意地でも顔を動かさずに“男”の顔になっている佐伯さんのことを見詰め続ける。
佐伯さんは不機嫌な顔を続けながらも“男”から“女”に変わったように見え・・・
私ではなく砂川さんのことを見上げた。
「誰よりも特別扱いをして可愛がっていれば、女なんて簡単にコロッと好きにさせられるよ。」
「「いや、それはないと思う。」」
砂川さんと声だけではなく意見まで合い、それには砂川さんのことを見上げた。
「それはナイよね?」
「それはナイと俺も思う。」
「そんな簡単なことでコロッとなんてナイでしょ。」
「人間の思考はもっと複雑で・・・」
「あ!新幹線来たよ、似た者同士のお二人さん!!」
佐伯さんが“女”の雰囲気で嬉しそうに声を上げ、迫ってくる新幹線を見ている。
「検査がこんなに嫌じゃないのは初めて。
2人とも、来てくれてありがとう。」
それを聞き、佐伯さんの隣に並んだ。
「「次の検査も付き添うよ。」」
佐伯さんの隣に並んだ私の隣に砂川さんが並び、また声と意見が合わさった。
でも嫌な気持ちにはならず、昔から“そういう人”だけど優しい人でもある砂川さんのことを“嫌い”だとはやっぱり思えなくて。
羽鳥さんのことを考えると“嫌い”だと思うことしかないのに、それ以上に“やっぱり好きだな”と思う気持ちが大きくて。
「私は、誰にでも優しく出来る砂川さんの“そういうトコロ”は嫌いじゃない。」
そう口にしてから、もう1つ付け足す。
「でも、“そういうトコロ”がめちゃくちゃ嫌いでもある。」
「「どっち・・・!?」」
初めて佐伯さんと砂川さんの言葉が重なり、それには3人で笑いながら新幹線に乗り込んだ。
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