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それを聞き・・・
私はお兄ちゃんからパッと視線を逸らして立ち上がった。
「そうなんだ。」
「羽鳥さんってアイツと結構仲良いんだよな。
アイツも今羽鳥さんのことで色々と動いてるとは聞いてて・・・」
「お兄ちゃん。」
お兄ちゃんの話を遮り、私の部屋の扉を開きお兄ちゃんに振り向いた。
「もう出てって。」
「何でそんなに怒ってるんだよ?」
「別に怒ってない。」
「どう見ても怒ってるだろ、どうしたんだよ?」
お兄ちゃんが立ち上がり、私の目の前まで歩いてきて・・・
私のことを真っ直ぐと見下ろしてきた。
「アイツと何かあっただろ?
純愛からアイツとの話を聞いてから、いつも俺だけが怒っててお前は1度も怒ったことなんてない。」
砂川さんから“セフレ”という言葉が出てきた日、私は泣きながら家に帰って来た。
そして偶然にもお兄ちゃんにその場面を見られてしまい問い詰められ、私は砂川さんとの話をしてしまった。
砂川さんの名前まで聞き出されたのはお兄ちゃんは“残念な兄”だけど仕事は出来る人らしいから。
“残念な兄”であり“仕事は出来る兄”が私のことをジッと見詰め、口を開いた。
「さっき、駅で“純”に会った。」
お兄ちゃんが言う“純”とは田代のこと。
私が田代にエッチをして欲しいとお願いした日から、たまに田代からメッセージは届いていた。
“砂川さんとセックスをしたのか”
“したなら砂川さんにお礼の品を持っていくからちゃんと報告しろよ”
そんなバカみたいなメッセージが届き、その度に私は否定の文を返していた。
田代からどこまで聞いたのか“怖い”と思うくらい、お兄ちゃんの顔が凄く怖くなった。
「セフレから付き合うパターンなんてほぼナイ。」
「ほぼって・・・。
そこは“絶対にナイ”って言ってくれた方が私も安心出来るんだけど。」
お兄ちゃんにそう返してから、“ほぼ”と言ったお兄ちゃんに笑顔を作って笑い掛ける。
「“ほぼ”なら可能性がゼロじゃないってことでしょ?」
「・・・“ほぼ”ナイんだよ。
“ほぼ”ゼロ。」
「少しだけでも希望を残したいからって“ほぼ”って言わないでよ。」
「うるせーな。」
お兄ちゃんだって仕事は出来るだろうけど、私だって出来た。
私だってめちゃくちゃ仕事をしてきた。
久しぶりに“こういう手応え”を感じ、自然に笑ってしまった。
「田代のお姉ちゃんに“付き合って欲しい”って言えば良いじゃん。」
自然に笑いながら、昔はお兄ちゃんとめちゃくちゃ仲が良かった田代のお姉ちゃんのことを口にした。
「“エッチしてから田代のお姉ちゃんのことが好きになった”って、言ってみれば良いじゃん。
見た目は全然タイプじゃないスラッとした美人系だけど、女の子女の子してる中身が好きになったって、早く言えば良かったのに。」
私の言葉にお兄ちゃんはイライラとした顔を隠すことなく部屋から出ていこうとする。
「“ほぼ”なんでしょ?
“絶対”じゃないなら付き合えるかもしれないじゃん。」
「うるさい、お前がそれを言うな。」
「昔から“見た目がタイプじゃない”って田代のお姉ちゃんに言いまくってたお兄ちゃんが悪いのに私に当たらないでよ。」
私の部屋の扉から出ていこうとしているお兄ちゃんの背中に続ける。
「田代のお姉ちゃんが私のことを好きになったのは、私がお兄ちゃんと似たような見た目で田代のお姉ちゃんが欲しかった言葉をお兄ちゃんの代わりにあげてたからじゃないの?」
「そんな簡単な話じゃない。
あいつは昔も今も俺のことを異性としては好きじゃない。」
「私のだってそんな簡単な話じゃない。
だから何も言わないで。
仕事のことも、あの人のことも、お兄ちゃんは何も言わないで。」
“勝った”
そう思いながらお兄ちゃんの背中に笑い掛けたら、お兄ちゃんがゆっくりと振り向いてきた。
その顔は何故か余裕の笑顔で・・・
「俺は純愛の兄だからな。
“お兄ちゃん”だから口出ししまくって良いんだよ。」
全然意味が分からない理屈を自信満々な顔で言われそれに文句を言おうとしたら・・・
私の部屋の扉は閉まった。
それにはムカつきすぎて扉を勢い良く開き・・・
「羽鳥さんって婚約者いるから!!!」
自分の部屋の扉を開けようとしていたお兄ちゃんに叫んだ。
「砂川さんって羽鳥さんの婚約者だから!!
だから私は砂川さんとはもう何もない!!!
私は“ほぼ”じゃなくて“絶対”にナイ!!!」
私の叫びにお兄ちゃんは凄く驚いた顔をしていて、“勝った”と思いながらも泣いた。
「望に迷惑が掛かるから絶対に秘密にしてよ!!!」
最後に1つ付け足し、扉を勢い良く閉めた。
そして・・・
「普通のお兄ちゃんが・・・普通どころか“残念な兄”が選ばれるわけないじゃん・・・!!!!
絶対に選ばれるわけないじゃん・・・!!!!」
生理が始まりイライラは終わったはずなのに、どうしようもなくイライラとしてしまい扉を閉めてからも叫んだ。
砂川さんから絶対に選ばれなかった“残念な私”が、号泣しながら叫んだ。
私はお兄ちゃんからパッと視線を逸らして立ち上がった。
「そうなんだ。」
「羽鳥さんってアイツと結構仲良いんだよな。
アイツも今羽鳥さんのことで色々と動いてるとは聞いてて・・・」
「お兄ちゃん。」
お兄ちゃんの話を遮り、私の部屋の扉を開きお兄ちゃんに振り向いた。
「もう出てって。」
「何でそんなに怒ってるんだよ?」
「別に怒ってない。」
「どう見ても怒ってるだろ、どうしたんだよ?」
お兄ちゃんが立ち上がり、私の目の前まで歩いてきて・・・
私のことを真っ直ぐと見下ろしてきた。
「アイツと何かあっただろ?
純愛からアイツとの話を聞いてから、いつも俺だけが怒っててお前は1度も怒ったことなんてない。」
砂川さんから“セフレ”という言葉が出てきた日、私は泣きながら家に帰って来た。
そして偶然にもお兄ちゃんにその場面を見られてしまい問い詰められ、私は砂川さんとの話をしてしまった。
砂川さんの名前まで聞き出されたのはお兄ちゃんは“残念な兄”だけど仕事は出来る人らしいから。
“残念な兄”であり“仕事は出来る兄”が私のことをジッと見詰め、口を開いた。
「さっき、駅で“純”に会った。」
お兄ちゃんが言う“純”とは田代のこと。
私が田代にエッチをして欲しいとお願いした日から、たまに田代からメッセージは届いていた。
“砂川さんとセックスをしたのか”
“したなら砂川さんにお礼の品を持っていくからちゃんと報告しろよ”
そんなバカみたいなメッセージが届き、その度に私は否定の文を返していた。
田代からどこまで聞いたのか“怖い”と思うくらい、お兄ちゃんの顔が凄く怖くなった。
「セフレから付き合うパターンなんてほぼナイ。」
「ほぼって・・・。
そこは“絶対にナイ”って言ってくれた方が私も安心出来るんだけど。」
お兄ちゃんにそう返してから、“ほぼ”と言ったお兄ちゃんに笑顔を作って笑い掛ける。
「“ほぼ”なら可能性がゼロじゃないってことでしょ?」
「・・・“ほぼ”ナイんだよ。
“ほぼ”ゼロ。」
「少しだけでも希望を残したいからって“ほぼ”って言わないでよ。」
「うるせーな。」
お兄ちゃんだって仕事は出来るだろうけど、私だって出来た。
私だってめちゃくちゃ仕事をしてきた。
久しぶりに“こういう手応え”を感じ、自然に笑ってしまった。
「田代のお姉ちゃんに“付き合って欲しい”って言えば良いじゃん。」
自然に笑いながら、昔はお兄ちゃんとめちゃくちゃ仲が良かった田代のお姉ちゃんのことを口にした。
「“エッチしてから田代のお姉ちゃんのことが好きになった”って、言ってみれば良いじゃん。
見た目は全然タイプじゃないスラッとした美人系だけど、女の子女の子してる中身が好きになったって、早く言えば良かったのに。」
私の言葉にお兄ちゃんはイライラとした顔を隠すことなく部屋から出ていこうとする。
「“ほぼ”なんでしょ?
“絶対”じゃないなら付き合えるかもしれないじゃん。」
「うるさい、お前がそれを言うな。」
「昔から“見た目がタイプじゃない”って田代のお姉ちゃんに言いまくってたお兄ちゃんが悪いのに私に当たらないでよ。」
私の部屋の扉から出ていこうとしているお兄ちゃんの背中に続ける。
「田代のお姉ちゃんが私のことを好きになったのは、私がお兄ちゃんと似たような見た目で田代のお姉ちゃんが欲しかった言葉をお兄ちゃんの代わりにあげてたからじゃないの?」
「そんな簡単な話じゃない。
あいつは昔も今も俺のことを異性としては好きじゃない。」
「私のだってそんな簡単な話じゃない。
だから何も言わないで。
仕事のことも、あの人のことも、お兄ちゃんは何も言わないで。」
“勝った”
そう思いながらお兄ちゃんの背中に笑い掛けたら、お兄ちゃんがゆっくりと振り向いてきた。
その顔は何故か余裕の笑顔で・・・
「俺は純愛の兄だからな。
“お兄ちゃん”だから口出ししまくって良いんだよ。」
全然意味が分からない理屈を自信満々な顔で言われそれに文句を言おうとしたら・・・
私の部屋の扉は閉まった。
それにはムカつきすぎて扉を勢い良く開き・・・
「羽鳥さんって婚約者いるから!!!」
自分の部屋の扉を開けようとしていたお兄ちゃんに叫んだ。
「砂川さんって羽鳥さんの婚約者だから!!
だから私は砂川さんとはもう何もない!!!
私は“ほぼ”じゃなくて“絶対”にナイ!!!」
私の叫びにお兄ちゃんは凄く驚いた顔をしていて、“勝った”と思いながらも泣いた。
「望に迷惑が掛かるから絶対に秘密にしてよ!!!」
最後に1つ付け足し、扉を勢い良く閉めた。
そして・・・
「普通のお兄ちゃんが・・・普通どころか“残念な兄”が選ばれるわけないじゃん・・・!!!!
絶対に選ばれるわけないじゃん・・・!!!!」
生理が始まりイライラは終わったはずなのに、どうしようもなくイライラとしてしまい扉を閉めてからも叫んだ。
砂川さんから絶対に選ばれなかった“残念な私”が、号泣しながら叫んだ。
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