“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

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数時間後



「俺達が稼いできた金を何だと思ってるんだよ。
お前みたいな奴がいると全員の士気が下がることを自覚してるのか?」



“残念な兄”だけど、今日もその通りのことを私に言ってくる。
帰宅をしてリビングに入るでも自分の部屋に入るでもなく、すぐに私の部屋に入ってきて「今日も会社で勉強だけしてたのか?」と聞いてきた。



「私だってそう思ってるよ。」



「そう思ってるなら“仕事します”って自分から言えよ。
勉強なら自分の家で出来るだろ。
・・・何で今日は勉強してないんだよ?」



「明日は病院に行くことになって。」



「泊まりで?人間ドック?
どこか具合悪いのか?」



今日は勉強をすることなく旅行バッグに荷物を詰めている私にお兄ちゃんが心配そうな顔で聞いてきた。



「佐伯さんの病院に付き添うことになって。」



「佐伯さんの・・・?
だからって何でそんなに荷物を持って行くんだよ。」



「泊まりなんだよね。
佐伯さんが通ってる病院は新幹線の距離で。」



「新幹線の距離の病院に何で純愛が付き添うんだよ?」



そう聞かれ、少し悩んでから答えた。



「佐伯さんは私の教育担当だからね。
平日の5日間は会社でも家でも勉強して、6月の試験に合格することが1つ目の目標。
その他に、休日はプライベートの時間も充実させることがもう1つの目標で。
だから私の休日は佐伯さんに管理されてるといっても過言ではない感じ。」



嘘ではないけれど休日の件については盛って説明をした。



「それはそれで結構大変だな、純愛は出不精だし。」



これで今日のお兄ちゃんからの説教を聞かなくて済むかと思い、少し気を抜いた。



なのに・・・



「まだ何か文句があるの?」



私のベッドにスーツのまま腰を掛けたお兄ちゃんに軽く睨み付ける。



そしたら、お兄ちゃんがめちゃくちゃ真剣な顔になり・・・



「俺も行こうかな・・・。」



そんなバカなことを言い始めた。



「何で?」



「純愛の性別は女だからな。
女の子2人で旅行なんて兄として心配。」



「とか言って、絶対に佐伯さん狙いでしょ?」



「それは当たり前だろ。
妹が折角佐伯さんと繋がったんだぞ?」



「バカじゃないの?」



「こういうのはバカくらいが丁度良いんだよ。
正常な判断では“俺も行こうかな”ってならないだろ。」



意味不明な説明に無視をしていると、無視をされているのにお兄ちゃんが続けてきた。



「羽鳥さんは?」



急に出てきた“羽鳥さん”に両手の動きが一瞬だけ止まってしまった。
でもまたすぐに動かし始める。



「羽鳥さんが何?」



「羽鳥さんとは仲良くなった?」



「別に。普通。」



「“普通”に喋る?」



「普通に喋るくらいはする。」



「羽鳥さんとも仲良くなれよ。
それで飯でも食うってなったら俺に連絡して。
そしたら釣書を持って俺も同席する。」



「釣書って何?」



「お見合いの時なんかに必要な書類。」



「そんなの持ってどうするの?
羽鳥さんとお見合いしたいの?」



「昔は分家の女の子を食事に誘う場合は釣書が必要だったらしい。
この前羽鳥さんのことを食事に誘ったらさ~・・・“家”が厳しいから社内の人間と個人的に食事に行くことは出来ないって断られて。
今度は釣書を準備しておくって言ったんだよ。」



「分家の女の子を食事に誘う時に釣書が必要な時代があったんだ。
うちの会社の・・・増田生命の分家の女の子達は普通にみんなと飲みに行ってたけどね。」



「増田ホールディングスにいた分家の女の子達も普通に飲みに参加してたぞ?
でも羽鳥さんだけは飲み会どころか昼飯も絶対に誰の誘いも乗らないって有名で。」



「増田財閥に残った唯一の本物のお嬢様だからね、羽鳥さんは。」



「望ちゃんの“家”のお嬢様だろ~?
今度は望ちゃんの名前出してみようかな・・・。」



「やめてよ、望とはそんなに絡んでないのに名前だけ使わないでよ。」



「“純”とマナリーくらい望ちゃんとも絡んでおくんだった。
そしたら“あの時”、望ちゃんの名前出せたのにな~・・・。」



お兄ちゃんが“あの時”と言って、凄く不機嫌な顔になった。



「俺が羽鳥さんのことを必死に食事に誘ってたら、お前の“元セフレ”のアイツが邪魔してきたんだよ。」
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