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月曜日



いつもよりも早めに出勤し、朝の混雑しているエレベーターに乗り込んだ。



砂川さんの家のベッドでは爆睡をしてしまったのに、自分の家のベッドでは全然眠れなかったから。



砂川さんに車で家まで送って貰った後、砂川さんから渡されたのは私の鞄だけで。
私の膝掛けとスウェットは渡してくれず、「花見の日に使うからね。」と言われて色々と言い返してみたけれど、どんな言葉も砂川さんには響かず渡して貰うことが出来なかった。



家に帰ったら佐伯さんから電話があり、次の日曜日に砂川さんの家で花見をする約束もしてしまった。



断ろうと何度もしていたのに、私の彼氏である佐伯さんの凄く嬉しそうな声を聞いてしまったら断ることが出来なかった。



“日曜日、嫌だな~・・・。”



心の中で呟く。



“今週もまた月曜日が始まった、嫌だな~・・・。”



下腹部を撫でながら、開いた扉から数人が出て行く後ろ姿を眺める。



“痛み止めの薬が全然効かない・・・。”



砂川さんが言う通り1度ちゃんと病院に行った方が良いのかもしれないと思い怖くなっていた時、いた。



羽鳥さんが、いた。



エレベーターのボタンの前に立ち、“開閉”を担当してくれている羽鳥さんが。



増田生命にいた分家の人達は絶対にやらないようなことを、羽鳥さんは当たり前のようにしていて・・・。



望から聞いている羽鳥さんの話、そして頭がヤバい砂川さんのこと、それらを考えると何故か泣きたくなった。



羽鳥さんのことが可哀想で、何故か私が泣きたくなる。



泣きそうになるのを必死に我慢し、ボタンの前に立つ羽鳥さんの隣に向かって歩いた。



「おはようございます、羽鳥さん。」



“ごめんなさい。”



心の中で謝罪をする。



私が砂川さんから可哀想だと思われてしまっている為に、砂川さんが私に絡んでしまっている。



そして砂川さんはヤバい思考になってしまっている。



あの人はヤバいけど優しい人でもあるから。



こんなに美しい婚約者だからか、砂川さんにとっては私の方が“可哀想”に見えるらしい。



羽鳥さんの美しい横顔がゆっくりと動き、私のことを見上げた。



その動きだけでも魅了されてしまう。



この目で見詰められると何だか“ヤバい”。



この人は生粋のお嬢様で・・・



そして、人の上に立つ者のソレも持っているのだと直感的に分かる。



“強い女性”だと分かる。



こんなに美しくて柔らかそうなのに、1人でも歩いて行けるくらいの強い女性だと分かってしまう。



それもあるのかもしれない・・・。



砂川さんが羽鳥さんよりも私のことが“可哀想”だと思うのは、きっとそれもあるのだと思う。



“見た目だけが男みたいでごめんなさい・・・。”



心の中でもう1度謝罪をした。
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