123 / 166
8
8-8
しおりを挟む
「このまま終わるのは嫌だ。」
砂川さんからのそれを聞き、負傷している穴がジンジンと痛んでいくのにも気付く。
「私の性別は女なんだよ・・・?
家の鍵を渡してそんなことも言ってきて・・・何をしてるか分かってる?」
「それは勿論分かってる。
俺は純ちゃんのことが“人”として凄く好きだから。」
「“人”としてね。」
「本当の意味で女の子としてという意味は俺には分からないけど、でも俺は純ちゃんとセックスがしたいと思ったし実際にセックスをした。」
砂川さんが上半身を起こし、私の手に向かってまだ鍵を渡そうとする。
「俺は純ちゃんとセックスが出来る。
他の男には出来ないセックスが俺には出来た。
だから普通の友達には戻りたくない。」
砂川さんが真剣な声で、真剣な顔に見える顔でそう伝えてくる。
「気持ち良くなりたいからとかそんな軽い理由で俺は純ちゃんとセックスをしたわけじゃない。」
「それは分かります・・・。」
「うん・・・。」
私のことを真っ直ぐと見詰める砂川さんの目が少しだけ揺らいだように見えた瞬間、砂川さんは下を向き鍵を持つ手も下に下ろした。
「俺のこの気持ちをどう伝えれば良いのかこれ以上は全く分からない・・・。
これ以上どう説明をすれば純ちゃんが俺の所に来てくれるようになるのかが全く分からない。」
下を向いた砂川さんが小さく笑いながら呟いた。
「“普通”はどう言うんだろう。」
“そういう人”である砂川さんがもっと下を向き、身体を小さくさせた。
「“普通”の男はこういう時にどうするんだろう。」
身体を小さくさせ、深く俯く砂川さんの横顔を眺めていたらフッ─────...と思い出した。
“俺は付き合う女の子としかセックスはしないよ。”
急に私の所に戻ってきてしまったその言葉。
それを思い出し、“そういう人”と言われてしまう砂川さんことを眺める。
私も“普通”ではないけれど砂川さんも“普通”ではないのだと改めて思う。
私のことを“女の子”として“好き”とも言えず、私と“付き合いたい”という言葉も浮かんでくることがないくらいに砂川さんは“そういう人”。
「鍵は受け取らなくて構わない。
また俺の所に戻ってくるという約束もいらない。
だからたまに・・・純ちゃんが疲れた時に・・・沖縄に行く時間も費用もない時とか・・・そういう時にでも、俺の所に戻ってきて欲しい。
ここは部屋も沢山あるし美味しい料理も出てくるし、中庭もあるから・・・あと、純ちゃんが望むならセックスも出来る男がいるから。」
小さな小さな声で砂川さんが言って・・・
「1つ付け足すと、“普通”ではない“残念な男”でいいならいるから。」
そんなことまで言い出してしまった砂川さんには自然と笑ってしまった。
自然と笑い続けたまま、下に下ろしていた砂川さんの手から鍵をスッと抜き取る。
それに驚いた顔の砂川さんが私の顔に視線を戻してきて、私は大きく笑いながら口にした。
「私も“普通”の女ではないので、“普通”じゃない男も嫌いではありません。
それに私の兄も“残念な兄”なので、“残念な男”には慣れています。」
私のことを“女の子”として“好き”とも言ってくれず、私と“付き合おう”とも言ってくれることはなかった砂川さん。
そんな砂川さんに私からそれらを言えるくらい私は女の子にはなれない。
でも、これで良いと思った。
砂川さんも私も“普通”ではないから、“普通”ではない恋愛でも“普通”ではないセックスでも、“普通”ではない付き合い方でも良いと思った。
ジンジンと痛みまくる穴を感じながら、さっきまでは複雑な“喜び”だった感情に温かい気持ちが重なっていく。
「また疲れたら砂川さんのトコロに戻ってくるね。
ここって凄く居心地が良いから。」
あんな最悪な状態から何度も戻ってきた砂川さんのトコロ。
“そういう人”である砂川さんが砂川さんなりに必死に渡そうとしてくれた、私への砂川さんらしいとも言える“愛”。
そこに“恋”はないということは分かるけれど、私に何の見返りも求めなかったその“愛”は嫌いではなかった。
嫌いではなかったし・・・
「ありがとう、純ちゃん。」
私のことを“純ちゃん”と呼び嬉しそうに笑う砂川さんの顔は“好き”だと思う。
やっぱり、“凄く好き”だと思う。
“何度も何度も砂川さんのトコロに戻って良かった”と、心からそう思う。
.
砂川さんからのそれを聞き、負傷している穴がジンジンと痛んでいくのにも気付く。
「私の性別は女なんだよ・・・?
家の鍵を渡してそんなことも言ってきて・・・何をしてるか分かってる?」
「それは勿論分かってる。
俺は純ちゃんのことが“人”として凄く好きだから。」
「“人”としてね。」
「本当の意味で女の子としてという意味は俺には分からないけど、でも俺は純ちゃんとセックスがしたいと思ったし実際にセックスをした。」
砂川さんが上半身を起こし、私の手に向かってまだ鍵を渡そうとする。
「俺は純ちゃんとセックスが出来る。
他の男には出来ないセックスが俺には出来た。
だから普通の友達には戻りたくない。」
砂川さんが真剣な声で、真剣な顔に見える顔でそう伝えてくる。
「気持ち良くなりたいからとかそんな軽い理由で俺は純ちゃんとセックスをしたわけじゃない。」
「それは分かります・・・。」
「うん・・・。」
私のことを真っ直ぐと見詰める砂川さんの目が少しだけ揺らいだように見えた瞬間、砂川さんは下を向き鍵を持つ手も下に下ろした。
「俺のこの気持ちをどう伝えれば良いのかこれ以上は全く分からない・・・。
これ以上どう説明をすれば純ちゃんが俺の所に来てくれるようになるのかが全く分からない。」
下を向いた砂川さんが小さく笑いながら呟いた。
「“普通”はどう言うんだろう。」
“そういう人”である砂川さんがもっと下を向き、身体を小さくさせた。
「“普通”の男はこういう時にどうするんだろう。」
身体を小さくさせ、深く俯く砂川さんの横顔を眺めていたらフッ─────...と思い出した。
“俺は付き合う女の子としかセックスはしないよ。”
急に私の所に戻ってきてしまったその言葉。
それを思い出し、“そういう人”と言われてしまう砂川さんことを眺める。
私も“普通”ではないけれど砂川さんも“普通”ではないのだと改めて思う。
私のことを“女の子”として“好き”とも言えず、私と“付き合いたい”という言葉も浮かんでくることがないくらいに砂川さんは“そういう人”。
「鍵は受け取らなくて構わない。
また俺の所に戻ってくるという約束もいらない。
だからたまに・・・純ちゃんが疲れた時に・・・沖縄に行く時間も費用もない時とか・・・そういう時にでも、俺の所に戻ってきて欲しい。
ここは部屋も沢山あるし美味しい料理も出てくるし、中庭もあるから・・・あと、純ちゃんが望むならセックスも出来る男がいるから。」
小さな小さな声で砂川さんが言って・・・
「1つ付け足すと、“普通”ではない“残念な男”でいいならいるから。」
そんなことまで言い出してしまった砂川さんには自然と笑ってしまった。
自然と笑い続けたまま、下に下ろしていた砂川さんの手から鍵をスッと抜き取る。
それに驚いた顔の砂川さんが私の顔に視線を戻してきて、私は大きく笑いながら口にした。
「私も“普通”の女ではないので、“普通”じゃない男も嫌いではありません。
それに私の兄も“残念な兄”なので、“残念な男”には慣れています。」
私のことを“女の子”として“好き”とも言ってくれず、私と“付き合おう”とも言ってくれることはなかった砂川さん。
そんな砂川さんに私からそれらを言えるくらい私は女の子にはなれない。
でも、これで良いと思った。
砂川さんも私も“普通”ではないから、“普通”ではない恋愛でも“普通”ではないセックスでも、“普通”ではない付き合い方でも良いと思った。
ジンジンと痛みまくる穴を感じながら、さっきまでは複雑な“喜び”だった感情に温かい気持ちが重なっていく。
「また疲れたら砂川さんのトコロに戻ってくるね。
ここって凄く居心地が良いから。」
あんな最悪な状態から何度も戻ってきた砂川さんのトコロ。
“そういう人”である砂川さんが砂川さんなりに必死に渡そうとしてくれた、私への砂川さんらしいとも言える“愛”。
そこに“恋”はないということは分かるけれど、私に何の見返りも求めなかったその“愛”は嫌いではなかった。
嫌いではなかったし・・・
「ありがとう、純ちゃん。」
私のことを“純ちゃん”と呼び嬉しそうに笑う砂川さんの顔は“好き”だと思う。
やっぱり、“凄く好き”だと思う。
“何度も何度も砂川さんのトコロに戻って良かった”と、心からそう思う。
.
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……
泉花ゆき
恋愛
子爵令嬢だったルナリーが侯爵令息であるザウダと結婚してから一年ほど経ったころ。
一向に後継ぎが出来ないことに業を煮やした夫の母親は、どこからか第二夫人として一人の女性を連れてきた。
ルナリーには何も告げることなく。
そして、第二夫人はあっさりと「子供が出来た」と皆の前で発表する。
夫や姑は大喜び。
ルナリーの実家である子爵家の事業が傾いたことや、跡継ぎを作れないことを理由にしてルナリーに離縁を告げる。
でも、夫であるザウダは……
同じ室内で男女が眠るだけで子が成せる、と勘違いしてる程にそちらの知識が欠けていたようなんですけど。
どんなトラブルが待っているか分からないし、離縁は望むところ。
嫁ぐ時に用意した大量の持参金は、もちろん引き上げさせていただきます。
※ゆるゆる設定です
あなたたちのことなんて知らない
gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。
10番目の側妃(人質)は、ひっそりと暮らしたい
みん
恋愛
島国のグレスタン公国は、自国による強固な結界と竜王の加護により平穏な日々を送っていた。それが、竜王の加護が突然無くなり、結界も破られた。そこへ、攻め込んで来た獣王国テイルザールに友好の証として送られる事になったのは、無能と呼ばれていた“レイ”だった。
そのレイには、自分でも知らない真実があるようで──。
「兎に角、白い結婚のままひっそりと目立たず息を殺して生きるだけ…」と、10番目の側妃(人質)としての生活を始めたレイは、そこで、ある人達と出会い過ごす事となる。
❋相変わらずのゆるふわ設定です。メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちもで読んでいただければ幸いです。
❋独自設定あります。
❋他視点の話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
どうやら、我慢する必要はなかったみたいです。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のベイジルは、クラリッサという婚約者がいながら、ネリーという子爵令嬢と浮気をしていた。
証拠を突きつけられたベイジルは、ネリーとの浮気を認めたうえで「もうこんな女とは縁を切るから、どうか許してほしい。これからはきみだけを愛すると誓うよ」と告げた。
これにクラリッサは、
「──ならば、ネリーさんと婚約してください。そうしたら、あなたを許します」
という意味不明な提案をしてきた。
はたして、クラリッサの真意とは──。
【連載版】「すまない」で済まされた令嬢の数奇な運命
玉響なつめ
恋愛
アナ・ベイア子爵令嬢はごくごく普通の貴族令嬢だ。
彼女は短期間で二度の婚約解消を経験した結果、世間から「傷物令嬢」と呼ばれる悲劇の女性であった。
「すまない」
そう言って彼らはアナを前に悲痛な顔をして別れを切り出す。
アナの方が辛いのに。
婚約解消を告げられて自己肯定感が落ちていた令嬢が、周りから大事にされて気がついたら愛されていたよくあるお話。
※こちらは2024/01/21に出した短編を長編化したものです
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています
王妃となったアンゼリカ
わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。
そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。
彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。
「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」
※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。
これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる