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午後の営業から戻ったのは20時過ぎ。
“問題社員”と呼ばれる男性社員に付き添って営業活動をしてきたけれど、何が問題なのか私には問題点が見付からなかった。



「お疲れさん!問題社員どんな感じだった?」



先に営業部に戻っていた田代から聞かれ、田代の隣にある自分のデスクに着きながら率直な感想を言う。



「めちゃくちゃ仕事が出来る人だった。
営業の仕事だけじゃなくて事務処理能力も高いし対人スキルも高いし、海外の大学を出てるから英語もペラっペラ。
英語以外もペラっペラらしいよ?
優しくて楽しくて凄く良い人だった。」



「お前が男をベタ褒めとか珍しいな!!
顔は?格好良いの?」



「うん、格好良かった。」



「お前より?」



「私よりはどうだろう。
でも身長も田代くらい高いし体つきも良かったよ。」



「何だよ、惚れた?」



「それはナイ、あの人彼女いるらしいし。」



「彼女だろ?
結婚してないならアリだろ。」



「ナイでしょ。
え、田代ってそういうタイプなの?」



「俺だってねーよ!!!
お前のことを励ます為にもアリって言っただけ!!」



「私に変な励ましをしてこないでよ。」



「お前が男をベタ褒めとかマジで珍しいからな。
俺としてはそいつの今の彼女よりお前に幸せになって貰いたいから励ますだろ。」



田代がそう言った後、何かを思い出したように私の方を見てきた。



「そういえば、定時後に砂川さんが何度かお前に会いに来てたぞ?」



「はあ・・・?」



思わず田代のことを睨むと田代の上半身が私からススッ────...と遠ざかった。



「何だよ?」



「“何だよ”は私の台詞。
何で砂川さんが私に会いに来るの?」



「そこまでは聞いてねーよ。
定時ピッタリに1回来て、その後は10分置きくらいに来てて・・・」



田代が営業部にある時計を見上げた。



「そろそろまた来るか。」



そんな不吉な言葉を口にした時・・・



「純!!砂川さん!!」



扉の方から女の先輩のそんな怖い言葉が聞こえ、恐る恐る扉の方を確認した。



そしたら、いた。



砂川さんが営業部の扉の所に、いた。



もう二度と私のことを見ることはないと思っていた砂川さんの両目は、私のことを真っ直ぐと見詰めている。



「差額20円にあのチョコは高かったか?」



砂川さんに渡すことはなかったあのチョコのことを田代がそう言った。
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