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月曜日 昼休み
午前の営業支援が終わり、今日の昼休みは会社に戻り社員食堂で同じ部署の女の人達と一緒に昼ご飯を食べていく。
私は本社の社員食堂を凄く楽しみにしていた。
ついこの前までは、楽しみにしていた。
土曜日の夜の出来事が自分の中で何も消化されていない中、社員食堂のうどんをチビチビと食べていく。
「あ、やっぱりここの社食のうどん不味い?」
「まだ不味いんだ?」
「不味い不味い言われてるんだから改良するか無くしちゃえばいいのにね。」
お姉さん方の言葉によりこのうどんが不味く感じるのではなく本当に不味いのだと分かった。
「でもお腹には入れた方がいいからね?
午後も営業支援でしょ?」
「はい・・・。」
「私のご飯少しあげるよ。」
「私のも。」
「私のもあげるよ。」
お姉さん方が目を輝かせて私に“何か”を渡そうとしてくる。
女の人からのソレに返せる物なんて私にはないのに。
だから私は昔からの笑顔を作りお姉さん方に笑い掛けた。
「大丈夫です、不味いうどんでお腹をいっぱいにしますし、それより先にみなさんの優しさで胸がいっぱいになりました。」
嘘ではないこと言葉を伝える。
“優しさ”の部分だけを受け取り、そう伝える。
それにはお姉さん方がキャッキャと女の子らしい高い声を上げながら盛り上がる。
それを聞きながら、ビッッックリするくらい不味いうどんを勢い良くこの口に含んだ。
いや、含もうとした。
そしたら、その瞬間・・・
「園江さん、田代君からジャケットを受け取ったから。」
お姉さん方の甲高い声の中、低くて落ち着いた男の声が聞こえてきた。
それには恐る恐る顔を上げる。
そしたら、いた。
社員食堂のトレーを持った砂川さんがいた。
そして普通の顔で・・・
「ここのうどん不味いでしょ。
俺蕎麦だけど交換する?」
そんなことまで言ってきて、それにはうどんの不味さなんて吹き飛ぶくらいにビッッックリする。
「いいです・・・。」
小さな声だけど答えた私に砂川さんは近付いてきて・・・
「え・・・・・・。」
うどんがのったトレーを片手で持ち上げ、私の目の前に蕎麦がのったトレーを置いてきた。
「断る時はちゃんと断らないとダメだよ。
午後も営業行ってらっしゃい。」
楽しそうな顔で笑いながら私にそう言って、砂川さんは不味いうどんがのったトレーを持って去っていった。
嫌な感じでドキドキとしている心臓を感じながら、遠くなっていく砂川さんの後ろ姿から目を離せずにいた。
そしたら、周りのお姉さん方がバカにしたような笑い声で笑い始めた。
その笑い方には慌てて砂川さんの後ろ姿から視線を逸らす。
「園江さん、勘違いしないようにね。
あの人は財務部の砂川さんっていう人なんだけど、あの人ってたまに“ああ”だから。」
呆れたような口調で1人の女の人が言うと、他の女の人達も苦笑いをしながら頷く。
「勘違いしちゃうよね~。」
「私も勘違いした。」
「私も。」
「私なんて勘違いしただけじゃなくてアプローチまでしちゃったし。」
「アレは笑ったよね~。」
「だってあの日は本当についてない日でさ。
初めて私の企画があそこまで通って、なのに最後の最後でダメになって。
悔し泣きをしながら人気のない財務部のフロアの自販機で飲み物を買ったら・・・」
「20本くらい一気に落ちてきたんでしょ?」
「そんなことある・・・!?
普通、ある・・・!?
もう踏んだり蹴ったりで絶望してたら、凄い音を出しちゃったからか砂川さんが来て。」
女の人が大きく項垂れた。
「その自販機の対応を砂川さんがやってくれるって言っただけじゃなくて、私の企画を“俺は好きだ”って言ってくれちゃって。
私の存在だけじゃなくて私の企画まで知ってくれちゃってて、そんなのもう勘違いしちゃうでしょ~。」
「その“好き”を自分に対する“好き”とも思っちゃうくらいにね。」
「連絡先も教えてくれないし飲みに誘っても行ってくれないなと思ってたら、まさかの最後の最後に“俺、そういう爪怖いんだよね。そういう爪をしている時は本当に必要な時以外は話しかないで”とか言われて・・・!!!」
「だから言ったじゃん、勘違いだって。」
「私の場合は勘違いじゃないと思ったんだもん・・・!!」
「みんな1度や2度はそう思うんだって。
あの人、営業時代は全国で売上5位から3位をキープしてたくらいだから。
会社全体のことをよく見てるだけじゃなくて社員のこともよく把握してるんだよね。
それでいて優しい人でもあるから勘違いしちゃう女子が続出してるんだよ。
女子達でクレームを言っても“何を言っているのか全く分からない”の人だからね、あの人の本質。」
女の人がそう言った後にゆっくりと私の方を見てきた。
「まあ、純は大丈夫か!!
純だしね!!」
何も大丈夫ではなかった私にそう言って。
「砂川さんってめっちゃ変な人だからさ、あ~・・・“変な人”っていうとダメか、めちゃくちゃ“そういう人”だから。
男の見た目だけど男じゃないと思いなね。
かと言って女ではないし、“人”と思いな、“人”!!
“人”としてめちゃくちゃ優しくされても、勘違いしないように気を付けてね!!」
もっと早く知りたかった情報を今聞かされた。
仕方なく食べた蕎麦の味は何の味もしなかった。
不味いとも感じないくらい、何の味もしなかった。
「砂川さんがあんな顔で笑ってるのは初めて見た。」
「いつも無表情か難しい顔か嫌そうな顔しかしないからね。」
「・・・てか、やっぱ顔が良い。」
「身体も良い感じ。」
「でも・・・」
「純がこっちに来てからは“結構格好良い”くらいに感じる!!」
「分かる~!!!」
お姉さん方の楽しそうな会話に必死に笑顔を作り続けて味のない蕎麦を全部お腹におさめた。
午前の営業支援が終わり、今日の昼休みは会社に戻り社員食堂で同じ部署の女の人達と一緒に昼ご飯を食べていく。
私は本社の社員食堂を凄く楽しみにしていた。
ついこの前までは、楽しみにしていた。
土曜日の夜の出来事が自分の中で何も消化されていない中、社員食堂のうどんをチビチビと食べていく。
「あ、やっぱりここの社食のうどん不味い?」
「まだ不味いんだ?」
「不味い不味い言われてるんだから改良するか無くしちゃえばいいのにね。」
お姉さん方の言葉によりこのうどんが不味く感じるのではなく本当に不味いのだと分かった。
「でもお腹には入れた方がいいからね?
午後も営業支援でしょ?」
「はい・・・。」
「私のご飯少しあげるよ。」
「私のも。」
「私のもあげるよ。」
お姉さん方が目を輝かせて私に“何か”を渡そうとしてくる。
女の人からのソレに返せる物なんて私にはないのに。
だから私は昔からの笑顔を作りお姉さん方に笑い掛けた。
「大丈夫です、不味いうどんでお腹をいっぱいにしますし、それより先にみなさんの優しさで胸がいっぱいになりました。」
嘘ではないこと言葉を伝える。
“優しさ”の部分だけを受け取り、そう伝える。
それにはお姉さん方がキャッキャと女の子らしい高い声を上げながら盛り上がる。
それを聞きながら、ビッッックリするくらい不味いうどんを勢い良くこの口に含んだ。
いや、含もうとした。
そしたら、その瞬間・・・
「園江さん、田代君からジャケットを受け取ったから。」
お姉さん方の甲高い声の中、低くて落ち着いた男の声が聞こえてきた。
それには恐る恐る顔を上げる。
そしたら、いた。
社員食堂のトレーを持った砂川さんがいた。
そして普通の顔で・・・
「ここのうどん不味いでしょ。
俺蕎麦だけど交換する?」
そんなことまで言ってきて、それにはうどんの不味さなんて吹き飛ぶくらいにビッッックリする。
「いいです・・・。」
小さな声だけど答えた私に砂川さんは近付いてきて・・・
「え・・・・・・。」
うどんがのったトレーを片手で持ち上げ、私の目の前に蕎麦がのったトレーを置いてきた。
「断る時はちゃんと断らないとダメだよ。
午後も営業行ってらっしゃい。」
楽しそうな顔で笑いながら私にそう言って、砂川さんは不味いうどんがのったトレーを持って去っていった。
嫌な感じでドキドキとしている心臓を感じながら、遠くなっていく砂川さんの後ろ姿から目を離せずにいた。
そしたら、周りのお姉さん方がバカにしたような笑い声で笑い始めた。
その笑い方には慌てて砂川さんの後ろ姿から視線を逸らす。
「園江さん、勘違いしないようにね。
あの人は財務部の砂川さんっていう人なんだけど、あの人ってたまに“ああ”だから。」
呆れたような口調で1人の女の人が言うと、他の女の人達も苦笑いをしながら頷く。
「勘違いしちゃうよね~。」
「私も勘違いした。」
「私も。」
「私なんて勘違いしただけじゃなくてアプローチまでしちゃったし。」
「アレは笑ったよね~。」
「だってあの日は本当についてない日でさ。
初めて私の企画があそこまで通って、なのに最後の最後でダメになって。
悔し泣きをしながら人気のない財務部のフロアの自販機で飲み物を買ったら・・・」
「20本くらい一気に落ちてきたんでしょ?」
「そんなことある・・・!?
普通、ある・・・!?
もう踏んだり蹴ったりで絶望してたら、凄い音を出しちゃったからか砂川さんが来て。」
女の人が大きく項垂れた。
「その自販機の対応を砂川さんがやってくれるって言っただけじゃなくて、私の企画を“俺は好きだ”って言ってくれちゃって。
私の存在だけじゃなくて私の企画まで知ってくれちゃってて、そんなのもう勘違いしちゃうでしょ~。」
「その“好き”を自分に対する“好き”とも思っちゃうくらいにね。」
「連絡先も教えてくれないし飲みに誘っても行ってくれないなと思ってたら、まさかの最後の最後に“俺、そういう爪怖いんだよね。そういう爪をしている時は本当に必要な時以外は話しかないで”とか言われて・・・!!!」
「だから言ったじゃん、勘違いだって。」
「私の場合は勘違いじゃないと思ったんだもん・・・!!」
「みんな1度や2度はそう思うんだって。
あの人、営業時代は全国で売上5位から3位をキープしてたくらいだから。
会社全体のことをよく見てるだけじゃなくて社員のこともよく把握してるんだよね。
それでいて優しい人でもあるから勘違いしちゃう女子が続出してるんだよ。
女子達でクレームを言っても“何を言っているのか全く分からない”の人だからね、あの人の本質。」
女の人がそう言った後にゆっくりと私の方を見てきた。
「まあ、純は大丈夫か!!
純だしね!!」
何も大丈夫ではなかった私にそう言って。
「砂川さんってめっちゃ変な人だからさ、あ~・・・“変な人”っていうとダメか、めちゃくちゃ“そういう人”だから。
男の見た目だけど男じゃないと思いなね。
かと言って女ではないし、“人”と思いな、“人”!!
“人”としてめちゃくちゃ優しくされても、勘違いしないように気を付けてね!!」
もっと早く知りたかった情報を今聞かされた。
仕方なく食べた蕎麦の味は何の味もしなかった。
不味いとも感じないくらい、何の味もしなかった。
「砂川さんがあんな顔で笑ってるのは初めて見た。」
「いつも無表情か難しい顔か嫌そうな顔しかしないからね。」
「・・・てか、やっぱ顔が良い。」
「身体も良い感じ。」
「でも・・・」
「純がこっちに来てからは“結構格好良い”くらいに感じる!!」
「分かる~!!!」
お姉さん方の楽しそうな会話に必死に笑顔を作り続けて味のない蕎麦を全部お腹におさめた。
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