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「砂川さんってお金持ちなんですか?
・・・ここ、ご家族も一緒に住んでますよね?」



門を開け門の中に入っていった砂川さんについていくことなく聞くと、砂川さんは私のことを振り向くことなく答えた。



「父方の祖母名義の土地と建物をいくつか所有しているからお金はある家ではあるかな。
この家は俺が生まれてからずっと住んでいる家で、祖父は亡くなっているし祖母は老人ホームにいるし、両親と弟は弟の療養の為にここを離れて地方に越していったんだよね。
だからこの家には俺しか住んでない。
どうしたの?そんな所に立ったままで。」



「ご家族がいるのにこんな時間にお邪魔をするのは非常識かなと思って。」



「家族がいたとしても大丈夫だよ。」



「普通はそんなに大丈夫じゃないですよね。」



「俺は普通じゃないらしいから家族はむしろ喜んで宴が始まるくらい大丈夫だったと思うよ。」



「なんですか、それ。」



その話には笑いながら私も門の中に入り、立派な家の扉を開けている砂川さんの元へと歩く。



「この家に誰かを連れてきたことがないどころか、誰かと何かをする為にこの家を出ることもない俺のことを家族はみんな心配をしていたくらいだから。
学校で一緒に過ごす友人は何人かいたけど、それ以外の時間を過ごしたいとは思ったことがなくて。」



「それは確かに普通ではないですね。
でも私も出不精なので少しは分かります。」



「そうなの?営業なのに。」



「必要があれば外に出ますけど、必要がなければ進んで外には出ませんよ。
私から友達のことを誘ったこともありませんし。」



「だから婚活パーティーで疲れたのか。
あの疲れ方は普通ではなかったよ。」



砂川さんの横に立った私のことを砂川さんがジッと見下ろしてくる。



「少し休んでいくと良い。
温かいお茶を出すから。」



「ありがとうございます。
お邪魔します。」



この立派すぎるくらい立派な家の扉から足を一歩、踏み入れた。
この家の中に入ることが出来た、砂川さんにとって初めての人になれたことに自然とニヤニヤとしてしまいながら。



私の身体を覆ってくれている砂川さんのジャケットを両手で少しだけ確認をしながら、この家の中へと進んでいった。
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