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「痛い・・・。」



砂川さんの家の新しくなったお風呂に入り砂川さんの寝室のダブルベッドで1人で横にならせて貰い、色々と考えてはいたけれどいつの間にか眠ってしまっていた。



次に目を開けた時には部屋の中は真っ黒で、下腹部もおまたも我慢が出来ない痛みに襲われている。



「この痛み、嫌いではなかったんだけどな・・・。」



私が女であるということがこんなにも痛いくらい実感出来る。



でも・・・



「ここまで痛いのは普通じゃないのかな・・・。」



みんなからも“生理痛”や“痛い”という言葉は聞いていた。
“純は重いね”とも言われていたけれど“自分も重い”と言っている人もいた。
だから普通の範囲の痛みなのかと思っていたけれど、砂川さんからあんなに険しい顔で“病院に”と言われたら怖くなってしまう。



「痛い・・・。」



どうしようもなく痛くなり寝返りを打った瞬間・・・



念のため生理用品をつけているトコロに“何か”が流れ落ちたのを感じた。



それが今月のモノだと思い、真っ暗な部屋の中でゆっくりすぎるくらいゆっくりと立ち上がった。



それから手探りで壁を伝い扉を探すけれど・・・



「遮光カーテン、遮光しすぎ・・・。」



本当に真っ暗で何も見えない。



「あ、電気・・・。」



指先で見付けた今風の電気のスイッチを入れると部屋の中が一瞬で明るくなった。
昔は畳の部屋だったこの場所。
ベッドでもなく布団が敷かれ、和風のタンスが置かれていた。



全然違う部屋に見えるこの部屋の中で乾いた笑い声を漏らした後、この綺麗なベッドに私の身体から流れ落ちる赤を漏らさない為、鞄の上に置いた生理用パンツと生理用品を取り寝室の扉を開けた。



そして広い家の長い廊下を歩いていく。
凍えるように寒い廊下を歩き続けてトイレに向かっていく。



「やっぱり来てたか・・・。」



今月も狂うことなくちゃんと私のおまたから赤が流れてきたことをトイレで確認が出来た。
それにより今月もちゃんと私が女だと証明された。



下腹部とおまたはめちゃくちゃ痛いけれど、あんなにイライラとしていた気持ちはこの赤が流れ落ちたと同時に全部が流れ落ちたかのように穏やかな気持ちになった。



でも・・・



「私の子宮、大丈夫かな・・・。」



私の顔も身体も普通ではなく、きっと私のおまたも普通ではない。
それならこの子宮だって普通ではないのかもしれない。



さっきよりは悲観的にはならないけれど、それでもそう考えると悲しい気持ちにはなる。
下腹部を押さえたままトイレを出て寝室に戻ろうと廊下を歩き始める。



そして数歩だけ歩いた時、私は立ち止まった。



それからゆっくりとトイレの扉を振り向き、またトイレへと戻る。



トイレへと戻ってから右に続く廊下へと恐る恐る足を踏み出した。



そして少しだけ真っ直ぐと歩き、また右に続く廊下を歩き・・・



足音も何も聞こえなくなっている綺麗な廊下の床を見下ろしながら歩き続け、立ち止まった。



なかなか顔を上げることが出来ないまま冷たい廊下の床にある自分の足を眺める。
男の足ではないけれど、女の足とも違うように見える自分の足を。



そんな足から視線を逸らす為に慌てて顔を上げた。



そしたら・・・



そしたら、見えた。



廊下の床に座布団を敷いてあぐらをかいている砂川さんの横顔が。



砂川さんの隣には日本酒の一升瓶とお猪口が置かれている。



あぐらをかいている砂川さんは真っ直ぐと前を向いていて、その顔は淡いピンク色の光りで照らされている。



顔だけではない、砂川さんの目の前にある大きな大きな窓から淡いピンク色の光りが差し込み廊下の天井も壁も床も全てを淡いピンク色にしている。



それには驚きながらも自然とその淡いピンク色の世界へと足を踏み出した。



そしてその大きな大きな窓の前に立ち、その向こう側へと恐る恐る顔を動かした。



そしたら・・・



あった・・・。



ちゃんと、あった・・・。



昔の砂川さんの家にもあった立派な日本庭園、そこに植えられている沢山のハナカイドウの木が。



そして昔は街灯や高層ビルの灯りだけで分かるだけだった夜のハナカイドウが、今は淡いピンク色のいくつかのライトでライトアップがされている。



その淡いピンク色のライトアップによって、4月中旬頃から開花するはずのハナカイドウの花はここから見るとまるで満開かのように見えた。
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