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まるで休日のテーマパーク内のような人混みの中、私を真ん中にした佐伯さんと砂川さんと並んで中華街で食べ歩きをしていく。



本当はもっと早く歩いていきたいけれど・・・



1軒目で購入した北京ダックをまだ半分も食べていないうえに歩くのもゆっくりな佐伯さんのスピードに私だけではなく砂川さんも合わせている。



「私のことは気にしないで2人は食べたい物を沢山食べてね。」



「うん、もう3つも食べてるよ。
・・・あ、“佐伯さんのおとーさん”、小籠包。」



「いいね、次は小籠包にしよう。」



当たり前のように砂川さんが財布を出してくれ、小籠包も当たり前のように3つ買ってくれた。



「“おとーさん”、私はそんなに食べられないって。」



「若松君のお土産に持って帰りなよ。」



「新之助からお金貰ってるってば。」



「大丈夫だよ、お土産も俺が買うから。
娘なんだから何も気にしないで楽しんでいればいいよ。」



「“おとーさん”優しい~♪
今日は“結構”どころか凄く良い感じだよ!
園江さんに対しても凄く良い感じ!」



「それは良かった。
何か違うなと思うことがあったら何でも指摘してね。」



「“おとーさん”はちょっと不器用な所が可愛い所でもあるんだけどね。
経理部のお姉さん方はSの人ばっかりだし、だから“おとーさん”いつも楽しませちゃってるんだよ。」



砂川さんは小籠包が入った小さな皿を私に渡してくれた。



「さっき大籠包を食べた後だから小籠包は凄く小さく見えるね。」



「本当だ、こんなの全部一口だよね。」



「舌を火傷するから気を付けてね。」



「それは“佐伯さんのおとーさん”でしょ。
さっき大籠包に刺してあったストローでスープを飲んで火傷してたじゃん。」



「あれは熱かったよね~・・・。」



照れたように笑う砂川さんを見上げた後、小籠包をお箸で少しだけ割った。
そこから溢れてくるスープを見下ろし、さっき砂川さんが本気で熱がっていた大籠包のスープを思い出し自然と笑ってしまう。



「嘘も平気でつけるそんな舌なんて、火傷して自業自得。」



「・・・娘の友達、俺に厳しいね。」



「ね!さっきから園江さん結構毒舌だよね!?
増田生命で“おとーさん”と絡んでたの本当だったんだ!!
2人で凄く盛り上がるじゃん!!」



佐伯さんがまだ北京ダックを食べながらそんなことを言ってくる。



「園江さんの新しい1面を見られて私は嬉しい。
今日は“おとーさん”を連れてきて大正解。
車も出してくれるしお金も出してくれるし・・・」



佐伯さんはまだまだ食べ終わらない北京ダックを両手で持ちながら、私のことをジッと見上げてきた。



その顔は“男の人”である私の彼氏の顔で・・・



「純愛ちゃん、少し女っぽくなったかも。
女だけじゃなくて男もチラチラ純愛ちゃんのことを見てくる。
だから“おとーさん”がボディーガードとしても役立ってる。」



スープを少し出した小籠包を一口で口に含んだ私にそんなことを言ってきた。
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