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遠回しに羽鳥さんの悪口を言った私に砂川さんはショックを受けた顔で見詰めてくる。



「演技・・・だったんだ・・・。
全く分からなかった・・・気付かなかった・・・。」



「そこは気付かれないように演技するんだから砂川さんも気付かないよ。」



「全然気持ち良くなかったのか・・・。
あんなに“気持ち良い”って言ってたのに・・・。」



「“気持ち良い”とか言うくらい簡単でしょ。」



「純ちゃんは・・・純愛ちゃんは、どうして俺とセックスしてたの?
全く気持ち良くないのに、どうしてセックスしてたの?」



「私の場合は自分が女の子だと認識してもらえるたった1つの方法でもあったから。
砂川さんから本当の意味で女の子として見て貰えていないことは知ってたから、私が出来る精一杯の方法がエッチだった。
エッチがなければ普通より仲が良い同僚くらいの関係だったじゃん、私達。」



自分で言ってあまりにも虚しくなってしまったので大きく笑った。



「付き合ってると思ってたからさ、私。
デートらしいデートを砂川さんはしたくない人だって分かったし、連絡も会うのもいつも私からだし、私の身体に少しも近付いてくれないし、砂川さんと付き合ってるっていう確認はエッチしかなかったっていうのもある。」



大きく揺れる瞳で私のことを見下ろす砂川さんの顔を見てまた大きく笑う。



「付き合ってないならあんなエッチするわけないじゃん。
つまらないし痛いだけで全然気持ち良くないんだよ?
私本当は性欲なんてほとんどないからあのエッチは今思うと辛かったよ。」



私だけが必死になっていたエッチを思い出しながら、羽鳥さんに夢中になりながらエッチをしている砂川さんの姿を妄想する。



さっき私としていたキスみたいな感じで羽鳥さんにもしているのだと分かったから、その妄想もリアルに出来てしまう。



「今日はちゃんとしたエッチをしてくれるんでしょ?
私は本当の“悪い女”を目指してるから演技はしないからね。
他の女の人みたいな演技は出来ないから、よろしくね?」



スーツのジャケットを片手で持ちピクリとも動かない砂川さんに笑いながら聞く。



「ワンピースは自分で脱いだ方がいい?
それとも脱がしてくれる?」



私の問い掛けに砂川さんは揺れる瞳をワンピースに向けた。



そして・・・



「“Hatori”のワンピースだね。
それこそ皺になるから早く脱いだ方がいいね。」



ブランド物なんて全然興味がなかったはずの砂川さんが、そう言った。
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