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リフォームをして昔と全然違う家となった砂川さんの新しい家の中、リビングでも寝室でもなく寝室の隣の部屋の扉を砂川さんが開けてくれた。
「温かいお茶・・・お茶というかミルクティー、本当に出さなくて大丈夫?」
「うん、そんなのを飲んでる間に砂川さんの気が変わると嫌だから。」
「俺の気が変わることはないけど・・・」
砂川さんは言葉を切った後に心配そうな声で続けた。
「リビングと寝室、浴室とトイレとクローゼット以外の所は何もない家だから。
寝室じゃなくて本当に大丈夫?」
窓にカーテンだけが掛けられている真っ暗な部屋、砂川さんの言葉を本当に何もない部屋の中を眺めながら聞いた。
「寝室で私とエッチをしようとしてるとか、砂川さんってバカだよね。
そこは結婚する人とエッチをする場所でしょ?」
「・・・そうか。
純愛ちゃんがそこまで考えてくれてるとは思わなかったよ。」
「砂川さん、大丈夫?
変わったんじゃないの?
やっぱり砂川さんって“そういう人”で心配になってくる。」
「“そういう人”って?」
「“めっちゃ変なオジサン”。」
「懐かしいね、それ。
でも最初の頃しか言わなかったのに。」
「好きな人に対してそんなことは言わないよ。」
「もう・・・今は俺のことを男としては好きじゃないからね。
女の子は新しい相手が出来ると昔の男のことは好きじゃなくなるって聞いたよ。」
「そうなの?」
「うん、うちの経理部の女性達が言ってた。」
「それはあるかもね。
昔私のことを好きだった女の子達も新しい相手が出来るとちゃんと私から卒業出来てたから。」
「純愛ちゃんも卒業した?」
砂川さんが低くて静かな声でそう言って、開けていた部屋の扉に入ることはなくゆっくりと閉めた。
「いつ俺から卒業した?」
砂川さんの横顔を見上げると、砂川さんは閉めた扉を真っ直ぐと見詰めている。
「いつ俺のことを男として好きじゃなくなった?」
「そんなこと、もう忘れた・・・。」
「そんなに前?」
「どうだろう・・・。」
「でも、今の彼氏のことも忘れる時が来るということでもあるよね。」
「それはない。」
「どうして言い切れるの?」
「私のことを女の子として好きになってくれた初めての男の人だから。」
男の人どころか“雄”の顔になってくれる佐伯さんの姿を思い浮かべながら砂川さんに言った。
砂川さんは私の言葉に少しだけ無言になり、それから急に私の背中に手を添えた。
「俺とセックスをすることを了承する彼氏だけどね。
純愛ちゃん、俺が変わったことをちゃんと彼氏に説明した?」
「結構ちゃんと説明したけど。」
「“結構”くらいじゃ彼氏もよく理解出来ていない思うよ。
お客様への事前説明がどれ程大切かということは営業時代に嫌という程学んでいるはずだよね?」
「それは・・・そうだけど。」
砂川さんの横顔は一切変わらないけれど、声に少しだけ力が入っていることは分かる。
声だけではない。
私の背中に添える手にも力が少しだけ込められた。
「やっぱり寝室においで。
こんな部屋では純愛ちゃんのことを大切にするセックスは出来ないから。」
「え、でも寝室は・・・。」
「俺は純愛ちゃんと結婚したいとも思っているから寝室でセックスをしたい。」
そう言って、私の背中を優しくどころか強引に押して寝室へと進ませようとしてくる。
「ここから大切にする演技を始めなくていいから・・・!!
それに私とエッチをしたベッドどうするの!?
そんなベッドで結婚する人ともエッチをするつもり!?」
「純愛ちゃんはそんなことまで考えなくていいから。
今日は大人しく俺に大切にさせるセックスをするだけでしょ?
純愛ちゃんの彼氏もそれを了承してるなら、純愛ちゃんが俺のことまで考える必要はないから。」
私の身体を無理矢理前に進めた砂川さんは寝室の扉を開けた。
「今後何らかの事態が起きたとしても、全ての責任を負うのは俺だから。
だから純愛ちゃんは何の心配もしなくていい。」
そう言われたけれど、また寝室のダブルベッドを見て身体が硬直してしまう。
「私が嫌だ・・・。
砂川さんがいつもエッチをしているこのベッドで私のセカンドバージンを受け取られるのは嫌だ・・・。」
本心はきっとこれで、その本心を必死に口から出した。
昔は砂川さんに何の見返りも求めることはなかったくらい“良い子”な私だったけれど、私はもう“良い子”は卒業する。
だから私の背中に添える砂川さんの手から必死に抵抗をする。
「砂川さんが他の女とエッチをしてるこのベッドは嫌だ・・・っ。」
「このベッドで誰ともセックスなんてしてないよ。」
砂川さんの言葉には驚き、ダブルベッドから視線を移し砂川さんのことを見上げる。
そしたら砂川さんは何故か私のことを試すような顔で見下ろしてきて・・・
「純愛ちゃん、彼氏にちゃんと説明しないとダメだよ。」
私の背中からゆっくりと手を離した砂川さんは、その手を私の手にソッ────...と絡めてきた。
まるで恋人同士がするような絡め方で・・・。
「ちゃんと付け足さないと。
まだ俺から卒業が出来てないって。」
「温かいお茶・・・お茶というかミルクティー、本当に出さなくて大丈夫?」
「うん、そんなのを飲んでる間に砂川さんの気が変わると嫌だから。」
「俺の気が変わることはないけど・・・」
砂川さんは言葉を切った後に心配そうな声で続けた。
「リビングと寝室、浴室とトイレとクローゼット以外の所は何もない家だから。
寝室じゃなくて本当に大丈夫?」
窓にカーテンだけが掛けられている真っ暗な部屋、砂川さんの言葉を本当に何もない部屋の中を眺めながら聞いた。
「寝室で私とエッチをしようとしてるとか、砂川さんってバカだよね。
そこは結婚する人とエッチをする場所でしょ?」
「・・・そうか。
純愛ちゃんがそこまで考えてくれてるとは思わなかったよ。」
「砂川さん、大丈夫?
変わったんじゃないの?
やっぱり砂川さんって“そういう人”で心配になってくる。」
「“そういう人”って?」
「“めっちゃ変なオジサン”。」
「懐かしいね、それ。
でも最初の頃しか言わなかったのに。」
「好きな人に対してそんなことは言わないよ。」
「もう・・・今は俺のことを男としては好きじゃないからね。
女の子は新しい相手が出来ると昔の男のことは好きじゃなくなるって聞いたよ。」
「そうなの?」
「うん、うちの経理部の女性達が言ってた。」
「それはあるかもね。
昔私のことを好きだった女の子達も新しい相手が出来るとちゃんと私から卒業出来てたから。」
「純愛ちゃんも卒業した?」
砂川さんが低くて静かな声でそう言って、開けていた部屋の扉に入ることはなくゆっくりと閉めた。
「いつ俺から卒業した?」
砂川さんの横顔を見上げると、砂川さんは閉めた扉を真っ直ぐと見詰めている。
「いつ俺のことを男として好きじゃなくなった?」
「そんなこと、もう忘れた・・・。」
「そんなに前?」
「どうだろう・・・。」
「でも、今の彼氏のことも忘れる時が来るということでもあるよね。」
「それはない。」
「どうして言い切れるの?」
「私のことを女の子として好きになってくれた初めての男の人だから。」
男の人どころか“雄”の顔になってくれる佐伯さんの姿を思い浮かべながら砂川さんに言った。
砂川さんは私の言葉に少しだけ無言になり、それから急に私の背中に手を添えた。
「俺とセックスをすることを了承する彼氏だけどね。
純愛ちゃん、俺が変わったことをちゃんと彼氏に説明した?」
「結構ちゃんと説明したけど。」
「“結構”くらいじゃ彼氏もよく理解出来ていない思うよ。
お客様への事前説明がどれ程大切かということは営業時代に嫌という程学んでいるはずだよね?」
「それは・・・そうだけど。」
砂川さんの横顔は一切変わらないけれど、声に少しだけ力が入っていることは分かる。
声だけではない。
私の背中に添える手にも力が少しだけ込められた。
「やっぱり寝室においで。
こんな部屋では純愛ちゃんのことを大切にするセックスは出来ないから。」
「え、でも寝室は・・・。」
「俺は純愛ちゃんと結婚したいとも思っているから寝室でセックスをしたい。」
そう言って、私の背中を優しくどころか強引に押して寝室へと進ませようとしてくる。
「ここから大切にする演技を始めなくていいから・・・!!
それに私とエッチをしたベッドどうするの!?
そんなベッドで結婚する人ともエッチをするつもり!?」
「純愛ちゃんはそんなことまで考えなくていいから。
今日は大人しく俺に大切にさせるセックスをするだけでしょ?
純愛ちゃんの彼氏もそれを了承してるなら、純愛ちゃんが俺のことまで考える必要はないから。」
私の身体を無理矢理前に進めた砂川さんは寝室の扉を開けた。
「今後何らかの事態が起きたとしても、全ての責任を負うのは俺だから。
だから純愛ちゃんは何の心配もしなくていい。」
そう言われたけれど、また寝室のダブルベッドを見て身体が硬直してしまう。
「私が嫌だ・・・。
砂川さんがいつもエッチをしているこのベッドで私のセカンドバージンを受け取られるのは嫌だ・・・。」
本心はきっとこれで、その本心を必死に口から出した。
昔は砂川さんに何の見返りも求めることはなかったくらい“良い子”な私だったけれど、私はもう“良い子”は卒業する。
だから私の背中に添える砂川さんの手から必死に抵抗をする。
「砂川さんが他の女とエッチをしてるこのベッドは嫌だ・・・っ。」
「このベッドで誰ともセックスなんてしてないよ。」
砂川さんの言葉には驚き、ダブルベッドから視線を移し砂川さんのことを見上げる。
そしたら砂川さんは何故か私のことを試すような顔で見下ろしてきて・・・
「純愛ちゃん、彼氏にちゃんと説明しないとダメだよ。」
私の背中からゆっくりと手を離した砂川さんは、その手を私の手にソッ────...と絡めてきた。
まるで恋人同士がするような絡め方で・・・。
「ちゃんと付け足さないと。
まだ俺から卒業が出来てないって。」
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