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「どんな異常事態だよ!!!?」



20時過ぎ、会場の最寄り駅の近くにあった、マナリーのお父さんが経営をしているうちの1つであるこの店には初めて来た。
お洒落な大人の雰囲気の店の中で隣に座る田代の嘆きが響く。



「フリータイムになったらお姉さん達が全員純に群がるとか、婚活しに来たんじゃないのかよ!!?」



数分前の光景に田代が物凄く怒り、綺麗なパスタをラーメンのような勢いで食べていく。



「でも、私が他の女の子達を集めたからマナリーに男の人達が集中したね?
マナリーは良い人いなかったんだ?
誰ともカップルが成立しなかったね。」



「・・・私もソっちゃんの番号を書いた。」



ソファー席に1人で座るマナリーが不貞腐れた顔で呟き、白ワインを浴びるように飲んでいく。



「ソっちゃん以上に・・・ソっちゃんと同じくらいだとしても、そんな男の人は簡単にいないよ。」



「また違うのにも出てみる?
今度は私抜きで2人で行ってきたら?」



「俺らがそんな仲間外れみたいなことするわけねーだろ。」



「仲間外れだとは思わないよ。
マナリーが幸せになれるなら私は喜んで抜けるよ。」



「私は今でも幸せだもん。
ソっちゃんの1番の女の子として幸せだもん。」



「本当の幸せではないよね。
私じゃマナリーの想いを受け取ることも出来ない。」



「純の“残念な兄”がな~、残念じゃなければな~。」



「ソっちゃんのお兄ちゃんなら田代の方がまだマシ。」



「全然嬉しくねー言い方するなよ!!」



田代まで白ワインをガブガブと飲んでいて、私は残り少ない赤ワインのボトルを担当する。



「4番のお姉さん、俺結構イケたと思ったんだけどな。
純は12番の奴と結構盛り上がってたじゃん。」



「うん、“緊張してたから同性みたいな感じで話せる子もいて良かった”だって。」



「なんだそいつ、どうせ童貞だろ!!!」



「2人と3年くらい付き合ったことがあるって言ってたから違うんじゃない?」



「・・・マジで!!!?
あんな冴えないオッサンが!!!?
何で俺は童貞なんだよ!!!」



「「バカ、うるさい。」」



マナリーと私の声が重なり、周りのテーブルに笑顔を作りながら会釈をする。



目が合った女の子達がマナリーでも田代でもなく私のことだけを見て目を輝かせているのが分かる。



「ここのパスタめちゃくちゃ旨いな!
あと3皿くらい頼んでいい?
お前らどうせシェアするだろ、シェア、シェア。」



「「覚えたての“シェア”。」」



「姉貴が急に“シェア”とか言い出して急なガンダムかと思って爆笑だった。」



田代がどう見ても酔っ払っている顔でメニューを開いていて、マナリーもフニャフニャな顔で身を乗り出してきた。



「間中、おっぱい。
ペチャパイ見えてるぞ。」



「ペチャパイだから見えるんだよね。
服と胸の間に隙間が出来すぎる。」



「間中も望も姉貴もペチャパイだし、俺の周りの女にはデカパイが存在してない。」



「望って大きいよ、着痩せしてるだけ。」



マナリーが望の胸のことまでバラしていて、これは相当酔っ払っている。



「初耳だけど全然興奮しねー。」



「あと、私も女だからね?
胸は小さいけど。」



「胸!!!!それ、胸!!!?」



「隣からソっちゃんの胸をそんな風に見ないでよ。」



「何だよ、間中見たいの?」



「見たいに決まってるじゃん。」



「女同士だから見られるだろ。」



「見れないよ・・・。」



「「何で?」」



今度は田代と私の疑問の声が合わさった。



そしたら、マナリーがテーブルに突っ伏して・・・



「私の“好き”は本当の“好き”なの・・・!!
女の子として女の子のソっちゃんとエッチがしたい“好き”なの・・・!!」



そう言われ・・・



「それは初耳。」



テーブルに突っ伏したマナリーの頭を見下ろし、笑いながら続ける。



「嘘だよ、ちゃんと分かってる。」



私の言葉にマナリーが号泣をしながら顔を上げた。



「すぐにそういう嘘つく~。」



「これ好きでしょ?」



「うん、好きです~。大好きです~。」



「その“好き”、どうせ純のことが好きの“好き”だろ?
そこまでがセットのやり取りだろ?」



「「そうだよ。」」



「早く付き合えよ。」



田代が文句を言いながらベルを押し、私は自分の皿に残っていたパスタを口にした。



最初からずっと何の味もしないパスタを。
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