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数日後、3月最後の日
「は・・・?出向?」
昼休み、会社の自動販売機の前で、田代が炭酸の缶ジュースを落としそうになりながら驚いた。
「うん、明日の4月1日付けで総合職に戻るか増田ホールディングスに出向するか夕方までに選べって言われた。」
「今日そんな話を言われたのかよ?」
「うん、今日。」
「3月の末日に何でそんな急な話をしてくるんだよ。
経理部の部長?それとも営業部の部長から?」
「さっき人事部長に呼び出されて言われた。」
「それにしても、どこから増田ホールディングスの出向の話が出てきたんだよ。
増田ホールディングスのどこに出向?」
「経理部。」
「はあ?それなら今の経理部と同じだろ。」
「向こうの経理部、妊娠してる女の人がいて結構大変っていう話はこの前砂川さんと羽鳥さんが言ってたけどね。
うちの経理部に私がやることなんてほぼないみたいな感じだし、だからかな。」
会議室から出た後、この自動販売機の前に田代が立っているのを見付け、飲む気もなかった栄養ドリンクを買った。
その栄養ドリンクを一気に身体に流し込み、口を開いた。
「辞めようかな。」
「は!?それこそ何でだよ!?」
「あれを言われたっていうことは、遠回しに辞めろって言われたっていうことでしょ。
1月の面談で営業部に戻るっていう話を出さなかった私に、営業部に強制的に戻されるか自主退職するかの2択を選ばせてきた。
ということは、私に辞めろって言ってるっていうことでしょ。
私は営業部に戻るつもりはないから。」
「営業部か増田ホールディングスの経理部の2択だろ?
辞めろなんて言われてねーから。
そんなことよりも、営業部に戻るつもりねーの?」
空になった栄養ドリンクの瓶を自動販売機の横にあるゴミ箱に投げ捨てた後に答えた。
「ない。」
「何でだよ?
お前めちゃくちゃ成績良かっただろ。
何より営業に向いてただろ。」
「営業は疲れるからもう出来ない。」
「お前そんなに体力なかった?」
「体力よりも気力の問題。
出来れば人目につかないようにひっそり仕事をしてたい。」
「お前みたいな目立つ奴が無理だろ!!」
「分かってるよ、バカ。
それでもそう思うのは自由でしょ。
でも話聞いてくれてありがとう、頭の中を少し整理出来た。」
田代にお礼を伝えると、田代が明るい笑顔で笑った。
「で、どこの会社に転職する?」
「それはこれから転職サイトと相談。」
「応募する会社が決まったら俺に教えろよ?」
「何で?」
「俺も応募するから。」
「何で・・・!?」
驚く私に田代が何故か嬉しそうに笑った。
「間中からも望からもお前のことを頼まれてるからな!!
“ソッちゃんは女の子だから1人だと心配だから一緒に仕事してあげて”ってな!!」
「そうだったの・・・?
だから田代もこの会社に来たの・・・?」
「まあな!!
今でも間中と望の言ってることは意味不明だけどな!!
でも、お前が俺に何も言わないで退職願いまで出してたって知って猛省中なんだよ!!
だから今度はしっかりフォローしておかねーと間中と望と合わす顔ねーから!!」
私とマナリーと幼稚園の頃からの幼馴染みである田代がそう言った。
私のことを“女”として見ることはないけれど当たり前のように大切に思ってくれているであろう田代。
「お前、増田ホールディングスの経理部に出向するつもりはねーの?」
砂川さんと私のことを何も知らない田代が普通に聞いてきて、それには笑顔を作り答えた。
「それが1番ない。」
.
「は・・・?出向?」
昼休み、会社の自動販売機の前で、田代が炭酸の缶ジュースを落としそうになりながら驚いた。
「うん、明日の4月1日付けで総合職に戻るか増田ホールディングスに出向するか夕方までに選べって言われた。」
「今日そんな話を言われたのかよ?」
「うん、今日。」
「3月の末日に何でそんな急な話をしてくるんだよ。
経理部の部長?それとも営業部の部長から?」
「さっき人事部長に呼び出されて言われた。」
「それにしても、どこから増田ホールディングスの出向の話が出てきたんだよ。
増田ホールディングスのどこに出向?」
「経理部。」
「はあ?それなら今の経理部と同じだろ。」
「向こうの経理部、妊娠してる女の人がいて結構大変っていう話はこの前砂川さんと羽鳥さんが言ってたけどね。
うちの経理部に私がやることなんてほぼないみたいな感じだし、だからかな。」
会議室から出た後、この自動販売機の前に田代が立っているのを見付け、飲む気もなかった栄養ドリンクを買った。
その栄養ドリンクを一気に身体に流し込み、口を開いた。
「辞めようかな。」
「は!?それこそ何でだよ!?」
「あれを言われたっていうことは、遠回しに辞めろって言われたっていうことでしょ。
1月の面談で営業部に戻るっていう話を出さなかった私に、営業部に強制的に戻されるか自主退職するかの2択を選ばせてきた。
ということは、私に辞めろって言ってるっていうことでしょ。
私は営業部に戻るつもりはないから。」
「営業部か増田ホールディングスの経理部の2択だろ?
辞めろなんて言われてねーから。
そんなことよりも、営業部に戻るつもりねーの?」
空になった栄養ドリンクの瓶を自動販売機の横にあるゴミ箱に投げ捨てた後に答えた。
「ない。」
「何でだよ?
お前めちゃくちゃ成績良かっただろ。
何より営業に向いてただろ。」
「営業は疲れるからもう出来ない。」
「お前そんなに体力なかった?」
「体力よりも気力の問題。
出来れば人目につかないようにひっそり仕事をしてたい。」
「お前みたいな目立つ奴が無理だろ!!」
「分かってるよ、バカ。
それでもそう思うのは自由でしょ。
でも話聞いてくれてありがとう、頭の中を少し整理出来た。」
田代にお礼を伝えると、田代が明るい笑顔で笑った。
「で、どこの会社に転職する?」
「それはこれから転職サイトと相談。」
「応募する会社が決まったら俺に教えろよ?」
「何で?」
「俺も応募するから。」
「何で・・・!?」
驚く私に田代が何故か嬉しそうに笑った。
「間中からも望からもお前のことを頼まれてるからな!!
“ソッちゃんは女の子だから1人だと心配だから一緒に仕事してあげて”ってな!!」
「そうだったの・・・?
だから田代もこの会社に来たの・・・?」
「まあな!!
今でも間中と望の言ってることは意味不明だけどな!!
でも、お前が俺に何も言わないで退職願いまで出してたって知って猛省中なんだよ!!
だから今度はしっかりフォローしておかねーと間中と望と合わす顔ねーから!!」
私とマナリーと幼稚園の頃からの幼馴染みである田代がそう言った。
私のことを“女”として見ることはないけれど当たり前のように大切に思ってくれているであろう田代。
「お前、増田ホールディングスの経理部に出向するつもりはねーの?」
砂川さんと私のことを何も知らない田代が普通に聞いてきて、それには笑顔を作り答えた。
「それが1番ない。」
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