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「園江さん、園江さんもあと少しお時間大丈夫かな?
まだ大丈夫ならもう少し一緒にどうだろう?
ワインもまだ残ってるし。」



椅子に座り直した羽鳥さんはボトルで頼んでいた赤ワインのボトルを両手で可愛く持った。
ワインのボトルをどうやったらそんなに可愛く持てるのかというくらい可愛く。



私の大好きな友達、“可愛い”マナリーや望とも比べ物にならないくらい羽鳥さんは可愛い。



こんなに美女なのにこんなに可愛くもあって、それにこんなにも幸せそうでもあって。



“発光してる”
年明けに会った望がそう言っていたのを今納得した。



“良いな”と、“羨ましいな”と、そんなことを思う気持ちは消えてしまった程、この女の人は“普通”の女の人ではなかった。



“生粋のお嬢様”



増田生命にいた他の分家の女の子達とは比べる必要もないくらいに、この女の人は“普通”の女の人ではない。



「じゃあ、あと少しだけ。」



この“普通”ではない女の人の言葉に首を横に振れる人なんてきっといない。



女の私から見てもとんでもない色気。
女の私から見ても“変な気持ちになる”くらいの存在。



昔から女の子達に何度も言われていた言葉だけど、その言葉も今納得をした。



「羽鳥さんを見てるとなんだかドキドキしてきます。」



ここまで“普通”ではない女の人なら砂川さんも変わるらしい。



こんな風に“普通”ではない女の人だったら砂川さんを変えることも出来たらしい。



私も“普通”の女ではないけれど、私のような女ではダメだったのだと今やっと納得が出来た。



今やっと少しだけ元気になれた。



“普通”に笑いながら砂川さんの方を見る。
ずっとあまり見ないようにしていたから。



私は失恋で凄く疲れてしまっていた。



こんな歳で初めて恋愛をして、“愛”にはしっかりと鍵を閉めてきたはずなのに、“恋”をしていた気持ちはなかなか仕舞うことが出来なくて。



でも、今やっとその“恋”の気持ちも仕舞える気がする。



でも・・・



嬉しそうな顔で私のことを見る砂川さんの顔を見ながら伝えた。



「私が疲れてしまっている時に砂川さんにはとてもお世話になったので、こうしてまたお会い出来たのは良かったです。
増田生命にいた時は大変お世話になりました。
本当にありがとうございました。」



これくらいなら言えそうだから伝える。



“普通”ではない私でもこれくらいなら言える。



めちゃくちゃ恥ずかしいけれど、これが最後の機会だから勇気を振り絞って口を開いた。



「私はそんな砂川さんのことが“人”として凄く好きでした。」



勇気を振り絞って“恋”を仕舞わず、砂川さんに私の“恋”の気持ちを精一杯渡した。



そんな私なりの“恋”の気持ちを受けた砂川さんは困った顔で笑った・・・。



その笑顔を見て、また困らせてしまったのだと分かる。



「うん、ありがとう。」



困った顔で笑い続けながらお礼の言葉を口にした砂川さんのことを、同じように困った顔で笑いながら羽鳥さんが眺めている。



「すみません、変なことを言って。
結構酔っ払ってます。」



グラスに残っていた赤ワインを一気に飲んだ後、私の目の前に並んで座っている2人に謝罪をした。
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