その理由を教えて

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
28 / 31
2

2-13

しおりを挟む
「どんな感覚?」



「もう二度目はない感覚・・・。」



「1度しかないやつなの?」



「1度しかない・・・。
本当は1度だってなかったはずだけど、その1度だけは起きた感覚・・・。」



「それなら2度目もあるんじゃない?
1度あったならきっと2度目もあるよ。」



「ナイんだよ・・・。
2度目は絶対にナイ・・・。
あったらいけないヤツなんだよ・・・。」



「これから人生長いんだし、2度目もきっとある~って今は信じておけば?」



あたしの言葉で龍二は口を開かなくなった。



両手で顔を覆いながら無言のままで、少し落ち着いたかな?と安心した時・・・



龍二の背中に添えていたあたしの手が小さく震えだした。



「これからまだ・・・長いよな・・・っ。
長すぎるよな・・・っっ。」



「うん、そうだよ!
まだまだ、まだまだいっっぱい長いんだし、きっと大丈夫だよ!!」



「・・・・・・っっ」



黒髪美人のお母さんがこんな時にどんな対応をするのかは分からないけれど、あたしなりに龍二のことを励ました。



泣き続ける龍二の背中を撫でながら。



「きっとまた2度目はあるし、きっと幸せな未来だってあるよ。
今は苦しいかもしれないけど、未来はきっとそうなってる~って信じようよ。」



「・・・・・・っっ」



「あたしの結婚式のスピーチをしてくれるんでしょ?
その時にはきっと龍二も幸せになってるよ。
龍二にも幸せな未来がきっと来てるよ。
だって龍二はあたしのお兄ちゃんだもん。
めちゃくちゃ大変でもあるけど、あたしにとってはめちゃくちゃ良いお兄ちゃんでもあるお兄ちゃんだもん。
絶対にお母さんが天国から見てくれてるよ。」



「・・・・・・・っっ」



「お母さんが絶対に天国から守ってくれるよ。」



「・・・・・・・っっ」



「龍二の結婚式ではあたしがスピーチしてあげるよ。
す~っっっごく感動しちゃうやつ!
龍二の良い所は妹のあたしが1番知ってるもん。
ずっと隣にいるからね。
今から話す内容考えておくから、あたしにもあんまり変な姿は見せない方が良いかもよ?
龍二の奥さんに引かれて、誓いのキスをしたのにスピーチの後に修羅場になっちゃったりしてね!」



「俺のはやらなくていい・・・。」



龍二から小さな声で拒否をされ、龍二の背中に乗せていたあたしの手は動いた。



両手を顔から離し、顔を上げた龍二は虚ろな目をしている。



その目から涙が次々と流れてきて心配になる。



これは心配になってしまう。



「俺は杏のことが嫌いだから、俺のはやらなくていい・・・。」



「そっ・・・・・か、分かった。
うん、分かった。」



あたしのことを嫌いだと言ってくる龍二があたしにもっと近付いてくる。



「杏・・・。」



虚ろな目で、でもその瞳を熱くしたような目で龍二が見詰めてくる。



「龍二・・・、え~・・・。」



身体だけではなく顔まで近付けて来て、それには苦笑いをしながら後ろに下がる。



そんなあたしのことを龍二が片手で抱き寄せくるので、両手で龍二の胸を押した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...