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氷で頬を冷やしながら家の電話機の前に座る。
谷間さん、あれは絶対に大騒ぎしているはず。
そう思いながら、感覚がなくなっている頬をもっと冷やしていく。
お父さんが帰って来る前には赤みが引いていることを願って。
「何で電話の前に座ってるんだよ?」
龍二があたしの隣に座った。
「絶対に電話かかってくるでしょ?」
「誰?先公?」
「先生もそうだろうし、谷間さんの・・・安藤さんの親とか。
谷間さんの手首ヤバかったし。」
「先にあいつが速攻で約束破ってきたのが悪いし、俺の妹の腕を勝手に掴んでるのも悪いけどな。」
「でも女の子に手ぇ出した龍二が1番の悪者になっちゃうから・・・。
そこは妹の私がめちゃくちゃ頑張って謝るよ・・・。」
「俺別に手ぇ出してねーし。」
「まあ、掴んだ結果があんなに赤くなっちゃったんだけどさ。」
「そっちじゃなくて、俺はあの女に手ぇ出してねーから。」
またそう言われ、それにはやっと言いたいことが分かった。
「昨日、エッチしたわけじゃなかったんだ?
谷間さ・・・安藤さんとの会話でもそんなこと言ってたね?」
「俺はあの女だけじゃなく、他の女にも手ぇ出したことなんてねーよ。」
「ああ、女の子の方から?
龍二って身体も筋肉がついててめちゃくちゃ綺麗とか言われてて、エッチも上手とかまで噂回ってて、龍二とエッチしたいって言ってる女の子いっぱいいるんだよねぇ。」
「・・・・・・。」
何も言わない龍二には溜め息を吐き、これからの龍二のことを心配しながら言った。
「付き合うならいつもみたいな女の子の方が良いんじゃない?
双子の妹にあそこまで嫉妬するとか、私死ぬまで一生嫉妬され続けるとかキツイんですけど。」
「今までの女達も俺にはウケるだけで全然良いとは思わないけどな。
まあ・・・今回は昨日たまたま駅前で会って告られて、変に期待されても困るから俺には触らないで欲しいとかそういうのは無理だとかそういう話をして、それにめっちゃ笑顔で頷いてきたかと思ったらコレですよ。
女ってウケるよな~。」
「それ、谷・・・安藤さんにも言ってたけどどうしたの?
今までの彼女とは普通に腕組んで歩いてたし、普通にエッチもしてたんでしょ?」
聞いた私に龍二は下を向いた。
そんな龍二を隣から見たら、龍二は更に下を向いて・・・
「俺はもう・・・そういのは、無理、出来ない・・・したいとも思わなくなった・・・。」
あぐらをかいている足の上にある両手を強く握り締めていて・・・
「触られた・・・。」
苦しそうな声で、そう言って・・・
「俺の身体に触られた・・・。」
龍二の腕が谷間さんの胸に押し付けられていた光景を思い出した時、龍二の両手が動き自分の顔を覆った。
「やっぱり、今日は俺だけ休めばよかった・・・。
そしたら俺の身体に触られることはなかった・・・。」
昨日に引き続きめちゃくちゃ情緒不安定な龍二にはやっぱり心配になる。
「めちゃくちゃ苦しい・・・。」
「龍二・・・。」
私の隣に座る龍二の背中に手を添える。
昔よりも大きく大きくなった龍二の背中に。
「幸せな・・・幸せな夢をよく見る・・・。
兄貴がいなくなってから、俺は幸せな未来の夢をよく・・・毎日のように見るようになった・・・。」
「よかったじゃん。」
「全然良くねーよ・・・。
あんな幸せな未来は絶対にナイ・・・。
絶対にナイって分かってるのに、夢の中の俺はすげー喜んでて・・・すげー幸せで・・・。」
「絶対にナイなんてまだ分かんないじゃん。
未来のことなんて今はまだ分からないし。」
「分かってる・・・っ、俺のはもう分かってる・・・・っ。
俺にはもうアレしかなかったのに・・・っっ。
俺の最大の幸せはアレしかなかったのに、それも消えた・・・っっ。」
「何が消えちゃったの?」
何となく、何となくだけど黒髪美人のお母さんの顔を思い浮かべた。
息子がこんなに苦しそうな時、黒髪美人のお母さんはどんなことをしてあげるんだろうと考えながら。
私達にはお母さんがいない。
小さな頃からお母さんがいない。
めちゃくちゃ・・・めちゃくちゃ情緒不安定だった私のことをいつだって助けてくれ、守ってくれていたのは龍二だった。
私にはお母さんがいないけど龍二がいた。
いつだって龍二が私の隣にいてくれた。
お兄ちゃんがいなくなってから毎日のように見る私の夢はソレだった。
小さな小さな頃の、私が忘れていたような、でもとてもとても大切な大切な思い出だった。
「一生忘れたくない俺の1番幸せだった感覚が、消えた。」
谷間さん、あれは絶対に大騒ぎしているはず。
そう思いながら、感覚がなくなっている頬をもっと冷やしていく。
お父さんが帰って来る前には赤みが引いていることを願って。
「何で電話の前に座ってるんだよ?」
龍二があたしの隣に座った。
「絶対に電話かかってくるでしょ?」
「誰?先公?」
「先生もそうだろうし、谷間さんの・・・安藤さんの親とか。
谷間さんの手首ヤバかったし。」
「先にあいつが速攻で約束破ってきたのが悪いし、俺の妹の腕を勝手に掴んでるのも悪いけどな。」
「でも女の子に手ぇ出した龍二が1番の悪者になっちゃうから・・・。
そこは妹の私がめちゃくちゃ頑張って謝るよ・・・。」
「俺別に手ぇ出してねーし。」
「まあ、掴んだ結果があんなに赤くなっちゃったんだけどさ。」
「そっちじゃなくて、俺はあの女に手ぇ出してねーから。」
またそう言われ、それにはやっと言いたいことが分かった。
「昨日、エッチしたわけじゃなかったんだ?
谷間さ・・・安藤さんとの会話でもそんなこと言ってたね?」
「俺はあの女だけじゃなく、他の女にも手ぇ出したことなんてねーよ。」
「ああ、女の子の方から?
龍二って身体も筋肉がついててめちゃくちゃ綺麗とか言われてて、エッチも上手とかまで噂回ってて、龍二とエッチしたいって言ってる女の子いっぱいいるんだよねぇ。」
「・・・・・・。」
何も言わない龍二には溜め息を吐き、これからの龍二のことを心配しながら言った。
「付き合うならいつもみたいな女の子の方が良いんじゃない?
双子の妹にあそこまで嫉妬するとか、私死ぬまで一生嫉妬され続けるとかキツイんですけど。」
「今までの女達も俺にはウケるだけで全然良いとは思わないけどな。
まあ・・・今回は昨日たまたま駅前で会って告られて、変に期待されても困るから俺には触らないで欲しいとかそういうのは無理だとかそういう話をして、それにめっちゃ笑顔で頷いてきたかと思ったらコレですよ。
女ってウケるよな~。」
「それ、谷・・・安藤さんにも言ってたけどどうしたの?
今までの彼女とは普通に腕組んで歩いてたし、普通にエッチもしてたんでしょ?」
聞いた私に龍二は下を向いた。
そんな龍二を隣から見たら、龍二は更に下を向いて・・・
「俺はもう・・・そういのは、無理、出来ない・・・したいとも思わなくなった・・・。」
あぐらをかいている足の上にある両手を強く握り締めていて・・・
「触られた・・・。」
苦しそうな声で、そう言って・・・
「俺の身体に触られた・・・。」
龍二の腕が谷間さんの胸に押し付けられていた光景を思い出した時、龍二の両手が動き自分の顔を覆った。
「やっぱり、今日は俺だけ休めばよかった・・・。
そしたら俺の身体に触られることはなかった・・・。」
昨日に引き続きめちゃくちゃ情緒不安定な龍二にはやっぱり心配になる。
「めちゃくちゃ苦しい・・・。」
「龍二・・・。」
私の隣に座る龍二の背中に手を添える。
昔よりも大きく大きくなった龍二の背中に。
「幸せな・・・幸せな夢をよく見る・・・。
兄貴がいなくなってから、俺は幸せな未来の夢をよく・・・毎日のように見るようになった・・・。」
「よかったじゃん。」
「全然良くねーよ・・・。
あんな幸せな未来は絶対にナイ・・・。
絶対にナイって分かってるのに、夢の中の俺はすげー喜んでて・・・すげー幸せで・・・。」
「絶対にナイなんてまだ分かんないじゃん。
未来のことなんて今はまだ分からないし。」
「分かってる・・・っ、俺のはもう分かってる・・・・っ。
俺にはもうアレしかなかったのに・・・っっ。
俺の最大の幸せはアレしかなかったのに、それも消えた・・・っっ。」
「何が消えちゃったの?」
何となく、何となくだけど黒髪美人のお母さんの顔を思い浮かべた。
息子がこんなに苦しそうな時、黒髪美人のお母さんはどんなことをしてあげるんだろうと考えながら。
私達にはお母さんがいない。
小さな頃からお母さんがいない。
めちゃくちゃ・・・めちゃくちゃ情緒不安定だった私のことをいつだって助けてくれ、守ってくれていたのは龍二だった。
私にはお母さんがいないけど龍二がいた。
いつだって龍二が私の隣にいてくれた。
お兄ちゃんがいなくなってから毎日のように見る私の夢はソレだった。
小さな小さな頃の、私が忘れていたような、でもとてもとても大切な大切な思い出だった。
「一生忘れたくない俺の1番幸せだった感覚が、消えた。」
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