その理由を教えて

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
19 / 31
2

2-4

しおりを挟む
お風呂から上がりベッドに潜り込み、今日もパーちゃんを抱き締める。



「パーちゃん、言えないよね~・・・。」



今日もパーちゃんに喋りかけながら頭を撫でていく。



そして・・・



「龍二のバカ・・・・・・」



そう呟いた時、部屋のドアが開いた。
見てみると龍二で、その顔はさっきまでの顔とは違い少し前のいつもの龍二に戻ったかのような表情に見える。



「変なクマ苦しそうだぞ?」



「パーちゃんはパンダだもん。」



あたしの返事に龍二が自然な顔で笑い、机の椅子に座った。



「杏、さっきは悪かったな。」



素直に謝ってきたことに驚つつ、いつもと同じどころかめちゃくちゃ穏やかな様子の龍二に私も自然と笑い返す。



「お父さんには黙っててあげたからね!」



「うん・・・。」



龍二が静かな声でそう答えた後、やっぱり自然な笑顔で笑い掛けてきた。



「俺、さっき彼女出来たから。」



それを聞き・・・



「よかった~!!」



物凄く安心した。



凄く凄く、もうめちゃくちゃ安心した。



「な、俺も良かった。」



龍二もめちゃくちゃ安心した顔で笑っていて、それには何度も頷きながら言っておく。



「龍二はお兄ちゃんと違って猿なんだし、彼女切らさない方が良いって。
私の友達の彼氏達も、1回エッチした後は彼氏達みんな猿になるらしいし、龍二だけじゃないから大丈夫だからさ。」



「女でもやってる奴はもうやってるよな~。」



「龍二の彼女達だってみんなしてるじゃん。
噂めっちゃ回ってくるよ?」



「女ってウケるよな~。」



龍二がバカにしたような感じでそう言った後、笑いながら下を向いた。



「杏は?」



「私?」



「杏は?」



「私が何?」



「そろそろ彼氏出来そう?」



「あたしだって・・・結構、モテるし。」



龍二と同じ学校のせいで男子達からは全くそういう人気がない私への意地悪だと思い、同じ学校だからバレバレだけどムカつくからそんな嘘を言った。



「はいはい。」



「絶対にバカにしてるじゃん。」



「してねぇよ。」



「いつかお父さんとかお兄ちゃんみたいな素敵な彼氏ができるもん!!」



「そうだな。」



やけに静かな龍二で、よっぽど反省したのだと分かった。



ずっと下を向きながら笑っている龍二が何だか可哀想にも見えて、たぶん彼女とエッチをしてスッキリをしたのか何なのか、何だか元気がないようにも見えるので言ってあげた。



「あたしの結婚式のスピーチ、龍二にやらせてあげるよ。
笑いとかとらなくて良いから、私の双子の兄として感動するやつお願いね?」



それには龍二が大きく笑い、「おやすみ。」とだけ言って部屋から出ていった。



「よかった・・・。」



小さく呟いた後、笑いながら目を閉じる。



「龍二に彼女ができてよかった・・・。」



これでまたいつもの毎日に戻る。
そう思い、安心しながらパーちゃんを抱き締めた。



その日見た夢は、たまに見る小さな頃の夢だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...