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私の言葉に田代は無言になった。


“それは無理か。”


そう思いながら足を閉じようとしたら、その足を田代が両手で掴んできた。


そして私の足の間にまた身体を入れてきて・・・


ベッドの上に置いていた、にぃにから貰ってきた避妊具をつけ始めた。


それには緊張しながら待っていると、童貞のはずの田代がすぐに避妊具をつけ終えた。


“昔から器用だったもんね・・・。”


そんなどうでもいいことが頭に浮かんだ時、思い出した。


「あの運動会の次の日から、私の髪の毛を田代が結んでくれてたんだよね・・・。
田代のパパから教えて貰った田代が、私が自分で結べるようになるまで毎日・・・。
早起きなんて出来なかった田代が、毎日毎日早起きをしてくれて・・・。」


「懐かしいな、そんなこともあったな。」


楽しそうに笑った田代が、私の身体にゆっくりと覆いかぶさってきた。


「どうして迎えに来てくれなかったの・・・?」


「何が?」


「かけっこで私が転んだ時・・・。」


「いや、迎えに行くどころか俺爆笑してたし。」


「酷い・・・。」


「“転ぶなよ”って言ったのに転ぶとか、マジで爆笑じゃん、コントじゃん。」


そう言って田代が本当に楽しそうに笑うから、私も釣られるように笑った。


そんな私の顔を田代がジッと見下ろしてきて・・・


「キスはアリ?」


そう聞かれ、少しだけ考えた後に頷いた。


嫌な気持ちではなかったから。


全然、全然嫌な気持ちではなかった。


こんなに真面目な顔をして、こんなに興奮した顔の田代の顔がゆっくりと・・・


ゆっくりと、私の顔に降りてきた。


そして・・・


チュッ···と、少しだけ唇を重ねてきて・・・


ソッと離れた。


まだ唇が触れてしまいそうなくらい近くにある田代の顔を見詰めると、田代も私のことを見詰めていて。


そして・・・


そして・・・


「理衣。」


私のことを理衣と・・・、理衣と、久しぶりに呼んだ。
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