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しばらくしてから、拓実が先に話し始めた。
「響ちゃんが結婚も子どもも欲しくないのは、捨てられるのが怖いからなの?」
さっきの私の言葉を拓実に言われ、小さく頷いた。
「俺は大丈夫だよ、絶対にそんなことをしないから。」
「そんなの・・・分からない。
いつかそういう日が来るかもしれない。
世界は同じかもしれないけど、時間が違ったら・・・。
それに私は・・・女としても軽い。」
震える手で、マグカップを握り締める。
そんな私の手を拓実が重ねた。
「ホステスとして結婚も子どもも望まないのなら、一緒に生きるだけでいいと思っていた。
でも、そういう理由なら俺は響ちゃんと結婚したい。」
「なんで・・・?
拓実なら他にもっといるでしょ?
わざわざ夜の女を選ばなくても。」
「俺の母親も夜の女だからね。
それに祖母も夜の女だったから。」
それには驚いて、拓実を見る。
拓実は優しい顔をして私を見詰めていて・・・
「俺の父親は母親を捨てた。」
「え・・・。」
「でも、俺は絶対にそんなことはしない。」
「それは・・・信じられるか微妙な話になるね。」
「俺のことを育てたのは祖父だから。
俺には祖父の血が上書きされている。
あんな父親の血を祖父が上書きしてくれたから。」
そう言いながら、拓実が身体を捻り私に向き合った。
「俺はどんな道でも1人で歩いていける。
ボロボロの靴でも、そこに穴が開いていても。
どんなに大雪が降っていても1人で立って歩いていける。」
「凄いね・・・。」
「だから、一緒に歩ける。
響ちゃんも子どもも、俺が抱えて歩けるから。」
「歩く時間が違うのに・・・?」
「俺に抱えられながら寝ていればいいよ。」
拓実が優しい笑顔で私を見詰め、片手で私の頬を包み親指で私の唇に触れた。
「タバコを吸えばいい。好きなだけ。
どんなタバコの煙も俺が吸い込むから。」
「また・・・嘘かもしれない・・・。」
「夜の女はそのくらいでいい。
男を利用するくらいじゃなけれぱ夜の女は務まらない。」
「そんなクソみたいな女でいいの?」
「俺はクソババアみたいな女が大好きだからね。」
「私はまだババアじゃないと自分では思ってたけど。」
「立派なクソババアになってくれるのが今から楽しみだよ。」
そう言って、拓実が大きな声で笑った。
嬉しそうな顔で。
幸せそうな顔で。
どこか、懐かしそうな顔で・・・。
「響ちゃんが結婚も子どもも欲しくないのは、捨てられるのが怖いからなの?」
さっきの私の言葉を拓実に言われ、小さく頷いた。
「俺は大丈夫だよ、絶対にそんなことをしないから。」
「そんなの・・・分からない。
いつかそういう日が来るかもしれない。
世界は同じかもしれないけど、時間が違ったら・・・。
それに私は・・・女としても軽い。」
震える手で、マグカップを握り締める。
そんな私の手を拓実が重ねた。
「ホステスとして結婚も子どもも望まないのなら、一緒に生きるだけでいいと思っていた。
でも、そういう理由なら俺は響ちゃんと結婚したい。」
「なんで・・・?
拓実なら他にもっといるでしょ?
わざわざ夜の女を選ばなくても。」
「俺の母親も夜の女だからね。
それに祖母も夜の女だったから。」
それには驚いて、拓実を見る。
拓実は優しい顔をして私を見詰めていて・・・
「俺の父親は母親を捨てた。」
「え・・・。」
「でも、俺は絶対にそんなことはしない。」
「それは・・・信じられるか微妙な話になるね。」
「俺のことを育てたのは祖父だから。
俺には祖父の血が上書きされている。
あんな父親の血を祖父が上書きしてくれたから。」
そう言いながら、拓実が身体を捻り私に向き合った。
「俺はどんな道でも1人で歩いていける。
ボロボロの靴でも、そこに穴が開いていても。
どんなに大雪が降っていても1人で立って歩いていける。」
「凄いね・・・。」
「だから、一緒に歩ける。
響ちゃんも子どもも、俺が抱えて歩けるから。」
「歩く時間が違うのに・・・?」
「俺に抱えられながら寝ていればいいよ。」
拓実が優しい笑顔で私を見詰め、片手で私の頬を包み親指で私の唇に触れた。
「タバコを吸えばいい。好きなだけ。
どんなタバコの煙も俺が吸い込むから。」
「また・・・嘘かもしれない・・・。」
「夜の女はそのくらいでいい。
男を利用するくらいじゃなけれぱ夜の女は務まらない。」
「そんなクソみたいな女でいいの?」
「俺はクソババアみたいな女が大好きだからね。」
「私はまだババアじゃないと自分では思ってたけど。」
「立派なクソババアになってくれるのが今から楽しみだよ。」
そう言って、拓実が大きな声で笑った。
嬉しそうな顔で。
幸せそうな顔で。
どこか、懐かしそうな顔で・・・。
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