【完】タバコの煙を吸い込んで

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「1月2日なのに仕事なんだ？」



タバコを吸い終わりすぐにシャワーを浴びた。
そのままラフな服を着て化粧もせずに拓実の前に出たら、またそう聞かれた。



頷く私の顔を、拓実は嬉しそうな顔でまた見ている。



まだ裸姿の拓実から慌てて視線を逸らし・・・



視線を逸らし・・・



視線を逸らして、気付いた・・・。



大切なことに、1番大切なことに、気付いた・・・。



慌てて、拓実をもう1度見る。



震える両手を隠すことなく、それで口元を覆いながら聞きた・・・。



「避妊した・・・？
あれ、避妊してた・・・？」



両手だけでなく、声まで震えた・・・。
その震える声を隠すために両手で口元を覆った・・・。



そんな私を真剣な顔で見詰めながら、拓実は頷いた・・・。



「避妊した。」



それを聞き、まだ震えている両手で大きめの鞄を持つ。



「あと5分くらい時間ないかな？
俺もすぐに着替えるから。」



「新幹線の時間があるから。」



私がそう言うと、拓実が残念そうな顔をした後にまた笑った。



「連絡する。絶対に連絡するから。
今度は東京の街でデートをしよう、響ちゃん。」



嬉しそうな、幸せそうな顔で笑う拓実に、私も笑い返した。
返事もせずに、頷きもせずに、笑い返した。



もう二度と会うつもりはないから。
私は誰とも結婚しないし子どもも生まない。



だって、怖かった。
ママの生みの母親の話を聞いて怖かった。
私にも無理だと思った。
ママの生みの母親のように、私も1人では育てられないと思った。



私も、ママの生みの母親のように裕福な家に生まれ育ったから。
もしも相手の男の人に捨てられてしまった時、そこに子どもがいた時。
私も1人では育てられないと思ったから。



ママの育ての母親のように、私は強くないから。
1人では育てられない。
私には・・・子どもを抱えて1人では歩けない。



1人では歩けないくらいに・・・



私は弱い・・・。



私はこんなにも、弱い女・・・。