【完】タバコの煙を吸い込んで

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森川さん・・・。
少し前にご結婚されて名字が変わり、森川さんになった。



「森川さん、なんで支社の所属なの？
あの人こそ本社勤務でしょ。」



「・・・森川さんは少し前まで、生まれつき足が悪くて。
その足でずっと営業活動していたから、売上げはそこまで良くなくて。」



足を引きずりながらも、森川さんは朝から晩まで・・・土曜日も日曜日も、娘さんの入学式も卒業式も出ず・・・。
1人で娘さんを育て上げた・・・。



社長の娘でこんな感じの私にも、たまに会うと凄い優しくて・・・。
でも、緊張はするのか、私に話そうと思っていることをメモしているような人だった。



その森川さんが・・・



「少し前に足の手術をしたの。
娘さんを1人で育て上げて、少し落ち着いたのかも。
歩けるようになってからご結婚もされて。
元々頑張っている人だったんだけど、それから営業成績は支社で1番になった。」



「・・・そういう人もいるのか。」



「昔は代理店にいたみたいなんだけど。
飯田さんがうちの会社のパートになってから、初めての採用活動の時の人なの。
森川さんの一次面接を終えた時点で、うちのクソ親父に直談判したって聞いた。」



「飯田さんか・・・。
あの人、正社員になれないの？」



「真知ちゃんも結婚したから、そろそろなれるんじゃない？
飯田さんって、私の義理の妹のお母さ・・・」



その話をしている途中で、私は慌てて口を止めた・・・。



そんな私に気付いたのか、山ノ内がしばらく無言になり・・・



「飯田、真知子か・・・。」



そう言って・・・
私の義理の妹である真知ちゃんの昔の名前を、小さな声で呟いた・・・。



それに私は、大きな溜め息を吐く。



「デート、するから。
日曜日しか空いてないからね。」