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俺の言葉に天野雷は驚いた顔をした。
この人をここまで驚かせることが出来て少しだけ満足もする。



「長峰のお父さんが営んでいる酒屋は、お酒だけを売っているわけではありませんから。」



「長峰さんの父親は藤岡の出身だよな。
それもかなり優秀な人だった。」



「今でも優秀ですよ。
特に藤岡の秘書なんてしょっちゅう店に来たり連絡もしてきます。」



「・・・情報とツテを売ってるのか。」



「そうですね、たった1年間藤岡ホールディングスで勤めていただけだったのに、長峰のお父さんは人脈作りのプロなので。
全く関係のない商店街の酒屋にまでその人脈を引っ張ってきました。
藤岡の秘書は特に長峰のお父さんにはお世話になっているので、その対価として高級ワインを昔からよく購入していきますね。」



「あの男か・・・。
俺の弟も妹の結婚相手も世話になった優秀な秘書なんだよあいつ、金持ちのボンボンだけどな。」



「その金持ちのボンボンに、この結婚式場も新居も急遽お世話になったんじゃないんですか?」



「よくそこまで分かったな!」



「その秘書から連絡があってどうにかしたのが、長峰のお父さんなので。」



「そうなの!!?」



長峰がめちゃくちゃ驚きながらバカ舌を披露してきた。
それにはもう苦笑いしか出来ない。



「長峰のお父さんが言ってたじゃん。
“俺も頑張った結婚式場なんだから出席者で満員にしてね”って。」



「言ってたけど、それがそのことだとは分からなかった!!
お父さん繋がりでも沢山声掛けさせて貰ったから、それかと思ってた!!」



「そういうことまで反則とは言ってこないでね。
俺としては何でも話していくつもりだけど、これみたいに気付いてたでしょってことも多少は出てくるはずだから。」



「了解です。」



長峰の返事に天野雷は大きな声で笑ってから俺の肩を力強く叩いてきた。



「お前、俺の予想を何度も上回ってきていいな!!
むしろ太い繋がりがこんなにあるのに何で2人でマツイ化粧品を選んだよ?
そんなに須崎社長と板東社長か好きだったのか?」



「「うちらは、商店街が好きなので。」」



長峰と言葉が重なった後、俺は笑った。



「須崎社長と板東社長が“ゆきのうえ”出身なので、俺と長峰はマツイ化粧品を選びました。」



「本物だな、そこまでくると。
商店街の繋がりとかそんなものじゃなく、もはや本物の家族みたいな集団だな。」



天野雷がそう呟き、長峰のことを優しい笑顔で見下ろしてきた。
こんな笑顔も出来るのかと驚いていると・・・



「お前の親父さん、極上に良い男だな。」



そんな言葉には長峰は凄く嬉しそうに笑って頷き、俺の心まで温かくなった。
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