【完】雪の上に、犬と猿。たまに男と女。

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その日の夜。
お風呂を終えた長峰が俺の部屋に来た。
チラッと確認をしたらまだ酔っ払った顔をしているのを、税理士試験の勉強をしながら見た。
仕事の勉強だけではなく、税理士試験の勉強も家に帰ってから長峰と続けている。



長峰は酔っ払った顔で俺のベッドに寝転がり、スマホを見始めた。
桃子せんぱいが常に言っているから、今日も美容系の動画を見始めた。



テレビ離れも雑誌離れも進んでいる。
だからSNSの確認は必ずしていかないといけない。
テレビよりも雑誌よりもずっと早く、ネットの世界は泳ぎ始めるから。



「この前会ったら、結子が美容系動画に詳しくてさ。
結子がハマってる美容系動画をいくつか教えて貰ったんだ。」



「音、小さくしてね。」



「了解です。」



いつも通りの返事をし、長峰は動画を見始めた。
途中で会話をするのでイヤホンはいつもしない。
それに、俺も勉強になるのでその音を微かに聞きながら今日も勉強をしていた。



そしたら、聞こえてきた・・・。



聞こえたきた・・・。



若い女の子2人の平和なやり取りが・・・。



そこに突然現れる男の怒号。



そして、大騒ぎになる2つの声。



そしたら急に、また女の子のたどたどしい声になって。



『和君を、また見掛けたよ・・・。』



『また見掛けたんだ！？
今回は話し掛けた！？』



『話し掛けられないよ・・・。
だって、私・・・就職も出来なかった・・・。』



『でもちゃんと収入があるから！！』



『それに私、全然可愛くないし・・・。』



『だ～か～ら！！
メイクで武装して可愛くなって、和君とばったり会ったら話し掛けて、今度は連絡先を交換するんでしょ！？』



『交換・・・してくれるかな・・・。
私、卒業式の時に告白なんてことを、しちゃった・・・。
和君に、告白なんてことを、しちゃった・・・。』



『和君は“ありがとう”って言ってたんでしょ？』



『うん、みんなにね・・・。
みんなに、ありがとうって言ってた・・・。』



そこで俺は、勢いよく立ち上がった。