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そんなことがあるのかと正仁さんを見詰める。
確かにその顔は・・・俺にとってもう1人の父親でもあるこの人の顔は、うん・・・そういう顔の造りをしていた。



「不細工すぎて、イライラされることも怒られることも嫌われることも攻撃されることも沢山あるよ。
営業先で渡した名刺を破り捨てられることなんて日常茶飯事だった。」



「そうなんだ・・・。」



「うん、でも俺にはそれこそが布石だから。
藤岡社長が俺のこの不細工な顔を武器にさせてくれたから、そんな対応をされても心の中ではガッツポーズをしてた。」



「どうして?」



「“こんなに不細工なのに”っていう前置きを作る為の布石。」



「なにそれ?全然分からない。」



「そんなに顔が良い駿には分からないだろうね。
ここまで顔が良いからこそ、他の人の見た目にも拘りもなく、ひねくれてない素直な心でいられてるし。」



正仁さんからそう言われ、俺の胸の真ん中にある大きな手から熱がどんどん伝わってくる。



「“不細工なのに”頑張ってる。
“不細工なのに”いつも笑顔。
“不細工なのに”仕事は出来る。
“不細工なのに”性格は良い。
“不細工なのに”・・・」



正仁さんが言葉を切ってから困ったように笑った。



「俺に・・・絹枝の前にも奥さんがいたことは知ってる?」



「・・・うん。」



「俺は新卒の歳に結婚をしたんだよ。
それも飛びっきり美人な女の子と。
“こんなに不細工なのに”あんなに美人な奥さんを捕まえられた。
結婚した後の半年はそれまで以上に周りの評価が上がったよね。」



正仁さんから出てきたそんな発言には驚くしかなかった。



「ベタ惚れだったよ、正直さ。
だって俺こんなに不細工なのに、あんなに美人な女の子が俺に愛の言葉を囁いてキスまでして、結婚までしてくれて。
全部嘘だったけどね、全部、嘘偽だったけどね。」
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