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私と一緒に歩くよりも速く駿が歩いていく。
私を背負いながらでも速く、この雪道を力強く歩いていく。
「軽いね、雪枝。」
「そう・・・?」
「これくらいだったら俺でも大丈夫そう。
でも、転んだらごめんね!」
「うん・・・。」
何が言いたいのか分かり、私は駿の首に抱き付いた。
号泣しながら抱き付いた。
「雪枝のお父さんは凄く重かったと思うよ。
雪枝のお母さんは大きなお腹だったし、雪枝のお母さんだけじゃなくてもう1つの命も背負っていたからね。
実際の重さ以上に重かったと思うよ。」
「うん・・・。」
「それでも雪枝のお父さんは歩き続けた。
足を1度も止めることなく、長靴でもなくスニーカーで。
俺の父さんが何度も代わるって言ったのに、1度も悩むこともなく歩き続けた。」
「うん・・・。」
何度も何度も駿のお父さんが言っていた話を駿からも聞く。
この状況で聞く。
「1人で歩くのも無理だったね、雪枝。」
「はい・・・。」
「雪枝のお父さんは歩いたよ、森川病院まで。
雪枝のお母さんとお腹にいる雪枝を背負って。
その隣には俺の父さんがついていたけど、それでも1人で雪の上を歩き続けた。
今よりももっと暗くて、どこが道かも分からないような道を、雪の上を歩き続けた。」
「今も駿のお父さんが隣を歩いてくれてるのかな。
だから駿もスニーカーなんでしょ?」
「うん、長靴は父さんが履いていった。
でも他の家から借りてくれば良かったよね、雪を甘く見てたよ。」
「どこの家もお父さんとお母さんは長靴を持ってるからね。」
「雨でも雪でも大切な人を背負って歩けるようにね。
あの日から商店街の他の家も長靴を準備するようになったらしい。」
「今日は車のタイヤのチェーンもつけてくれてれば良かったのに・・・。」
「積もらないって予報だったからね。
次からはその備えも加わるだろうね。」
駿が面白そうに笑いながら、しっかりとした足取りでどんどん進んでいく。
この真っ白な世界を、真っ直ぐと。
「雪枝のお父さんもお母さんも雪枝が無事に生まれてきてくれるのを望んでたはずだよ。
そうじゃなきゃこんな雪の上を進んでいけなかったでしょ。
お父さんもそうだしきっとお母さんも。
雪枝のお母さん、陣痛で苦しみながら“絶対に転ばないで”って言い続けてたらしいからね。」
「それは初めて聞いた・・・。」
「もっと性格悪い女みたいだから言わないでって父さんに釘を刺してたらしいよ。」
「そうだったんだ。」
私は笑いながら駿の背中に身体を預けた。
「さっき、本当は、“森川病院までおぶって行って”って言いたかったんだ。」
「知ってる。
雪枝が俺に遠慮するなんてビックリしたよね。
でも、雪枝のお腹に新しい命もなければ俺なんて高3で若いのに、それでも無理なんじゃないかって雪枝が思うくらい雪の上が大変な道だって知れてよかったよね。
雪枝のお父さんとお母さん、この雪の上を歩いたんだね。
めちゃくちゃ怖かっただろうな、この真っ黒なのに真っ白な世界。」
.
私を背負いながらでも速く、この雪道を力強く歩いていく。
「軽いね、雪枝。」
「そう・・・?」
「これくらいだったら俺でも大丈夫そう。
でも、転んだらごめんね!」
「うん・・・。」
何が言いたいのか分かり、私は駿の首に抱き付いた。
号泣しながら抱き付いた。
「雪枝のお父さんは凄く重かったと思うよ。
雪枝のお母さんは大きなお腹だったし、雪枝のお母さんだけじゃなくてもう1つの命も背負っていたからね。
実際の重さ以上に重かったと思うよ。」
「うん・・・。」
「それでも雪枝のお父さんは歩き続けた。
足を1度も止めることなく、長靴でもなくスニーカーで。
俺の父さんが何度も代わるって言ったのに、1度も悩むこともなく歩き続けた。」
「うん・・・。」
何度も何度も駿のお父さんが言っていた話を駿からも聞く。
この状況で聞く。
「1人で歩くのも無理だったね、雪枝。」
「はい・・・。」
「雪枝のお父さんは歩いたよ、森川病院まで。
雪枝のお母さんとお腹にいる雪枝を背負って。
その隣には俺の父さんがついていたけど、それでも1人で雪の上を歩き続けた。
今よりももっと暗くて、どこが道かも分からないような道を、雪の上を歩き続けた。」
「今も駿のお父さんが隣を歩いてくれてるのかな。
だから駿もスニーカーなんでしょ?」
「うん、長靴は父さんが履いていった。
でも他の家から借りてくれば良かったよね、雪を甘く見てたよ。」
「どこの家もお父さんとお母さんは長靴を持ってるからね。」
「雨でも雪でも大切な人を背負って歩けるようにね。
あの日から商店街の他の家も長靴を準備するようになったらしい。」
「今日は車のタイヤのチェーンもつけてくれてれば良かったのに・・・。」
「積もらないって予報だったからね。
次からはその備えも加わるだろうね。」
駿が面白そうに笑いながら、しっかりとした足取りでどんどん進んでいく。
この真っ白な世界を、真っ直ぐと。
「雪枝のお父さんもお母さんも雪枝が無事に生まれてきてくれるのを望んでたはずだよ。
そうじゃなきゃこんな雪の上を進んでいけなかったでしょ。
お父さんもそうだしきっとお母さんも。
雪枝のお母さん、陣痛で苦しみながら“絶対に転ばないで”って言い続けてたらしいからね。」
「それは初めて聞いた・・・。」
「もっと性格悪い女みたいだから言わないでって父さんに釘を刺してたらしいよ。」
「そうだったんだ。」
私は笑いながら駿の背中に身体を預けた。
「さっき、本当は、“森川病院までおぶって行って”って言いたかったんだ。」
「知ってる。
雪枝が俺に遠慮するなんてビックリしたよね。
でも、雪枝のお腹に新しい命もなければ俺なんて高3で若いのに、それでも無理なんじゃないかって雪枝が思うくらい雪の上が大変な道だって知れてよかったよね。
雪枝のお父さんとお母さん、この雪の上を歩いたんだね。
めちゃくちゃ怖かっただろうな、この真っ黒なのに真っ白な世界。」
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