【完】雪の上に、犬と猿。たまに男と女。

7

7-11

「美味しい。」



お酒を初めて呑んだであろう結子、すぐに口から出てきた感想はこれだった。
そして、可愛い顔には似合わない鋭い顔付きになって駿を見上げた。



「このお酒、何なの？」



「俺の父親が日本全国の酒蔵を回って作らせてる純米酒。」



「プライベートブランドってこと？」



「まあ、今風な言い方で言うとそうだよね。
でも俺達が生まれた頃からそんなことをやってたから、プライベートブランドとかそんなお洒落な感じより・・・。
“宝多米店の店主が作らせた純米酒”って感じだよね。」



駿が笑いながらそう言ってくるので、私も笑いながら頷いた。
でも、結子だけは1人で真剣な顔をしてお店中の日本酒を見ていく。



「他の酒屋さんには卸してないの？」



「卸してない。」



「どこに売ってるの？」



「元々はここらへんの飲食店と住人達に売ってた日本酒だった。
それが段々と口コミが広がって、今では知る人だけが知る日本酒になってる。
飲食店には日本全国に卸してるけど、個人には基本的にここでしか販売してない。」



駿がそこまで言って口を閉じたので、私が言ってみた。



「藤岡ホールディングスの社長もスポーツ用品の“KONDO”の社長も直接買いにくるんだよ！！
試飲してから買いたいって！！」