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「「あ。」」



そのオジサンを見て、駿と2人で声が重なった。
よくうちのお店だけはなくて商店街の他のお店にも来ている男の人だったから。
いつもはスーツではなくヨレッとした服で髪の毛もボサボサだけど・・・。
でも、そのオジサンで間違いはなかったと駿の声を聞いて分かった。



オジサンは私と駿に少し驚いた顔をした後、優しい顔で笑って人差し指を口元に持ってきた。
“シーッ”というポーズをされたので駿と2人で頷く。



それからオジサンはオババせんぱいから横取りした小さな紙を見た。



「なるほどね・・・。
でも、この名刺ではまだ弱いかな。
偉い人に子どもを会わせる約束が出来るにはまだまだだろうな。」



「それは・・・試してみなければ分かりません。」



「試してみて、キミのその後の仕事は大丈夫なの?」



「それも・・・試してみてからではないと分かりません。」



「うん、そうだろうね。
でも、そんなことを試さなくてもいいくらいの上を目指しなさい。」



オジサンがそう言って、オババせんぱいに今度は自分から小さな紙を渡した。
それを見たオババせんぱいの顔がサッと青くなる。



「申し訳ございませんでした!!!」



勢いよく、深くお辞儀をしたオババせんぱいには驚くしかなくて。
私だけではなく、幼馴染み全員がビックリしたはずで。
近くに立っていたお姉さんまでビックリしていて。



「申し訳ないことなんてされてないから頭を上げなさい。
むしろ、面白いから一部始終をずっと近くで見させて貰ったからこっちが申し訳ないよ。」



オジサンがそんなことを言うと、オババせんぱいはゆっくりだけど頭を上げた。
そんなオババせんぱいにオジサンが優しい顔で笑った。



「高みを目指しなさい。
いつかこの子達に・・・この子達のような子に同じことを頼まれた時。
その時に名刺1枚でどんな偉い人とも会わせられるくらい、それくらいの高みを目指しなさい。」



「はい・・・。」



そう答えたオババせんぱいは、スッと背筋を伸ばした。



「それまでは、この名刺は僕が預かっておく。
今日は、僕がこの良い子達を偉い人の所まで連れていくよ。
僕のその名刺には良くも悪くも力があるからね。
ここの偉い人にとっては悪い名刺に感じるだろうけど、この良い子達には良い名刺になると信じて。」



「ありがとうございます・・・。」



オババせんぱいは深く深く、このオジサンに頭を下げた・・・。
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