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「うん・・・よく知ってるね・・・。」



私がそう言いながら頷くと、和君は真剣な顔で私のことを見下ろし続ける。



「父さんは松居先生のことをすげー尊敬してて。
その松居先生が、真理のことを“自分が知る中で1番可愛い女の子”って言ってたらしい。」



「・・・おじいちゃんが?」



私にも“おじいちゃん”と呼ぶように言ってくれる“おじいちゃん”が、そんなことを言ってくれていたらしい。



「なんでも、“あの獰猛な珍獣2人を手懐けた最強の女の子”って言ってて・・・。
“薄ピンクのドレッサーの鏡で母親の写真と自分の顔を見比べてる、可愛い女の子”って言ってたらしいんだよな。」



そんな・・・



そんな・・・



家族の誰にも・・・理子にも見せたことがない、言ったこともないことを言われた・・・。



「おじいちゃん・・・なんで、知ってるんだろう・・・。」



「俺も松居先生の空手道場で1年間空手習ってたから知ってるけど・・・。
あの人、なんか見える人だからな。」



「空手・・・おじいちゃんの道場で、習ってたの・・・?」



「うん、今でもたまに掃除したり正座しに行ったりしてる。
世間は狭いよな、まさか松居先生とも繋がってるとは思わなかった。」



そう言われて、私は思わず笑ってしまった。



「“妙ちゃん”が、和君の妹だったしね・・・。
今日も会えるの・・・楽しみ・・・。
お肉、足りるかな・・・?」



「肉なくなったら早く抜けよう・・・。
こんなに可愛い女の子がいたら、やりたくて我慢なんて出来ねーから。」



昨日のメイクの練習で、合わないファンデーションで肌荒れをしてしまった私。
メイクをしていない“別の私”でも、和君は“可愛い”と言ってくれる・・・。



私もそうだった・・・。



“可愛いお母さんは、可愛い。”



“別のお母さんも、可愛い。”



何度も何度も、そう言っていた・・・。



和君を見上げ続けながら、自然と笑顔になる・・・。



「お母さん・・・天国から、見てくれてるかな・・・。」



「見てるだろうな。
可愛い娘が彼氏の家に結婚の挨拶しに行くんだからな。」



そう言ってから、和君が優しい笑顔で笑い掛けてくれ・・・



ずっとずっと気になっていたことを、聞いた・・・。



「中学と高校時代・・・いつも隣に並んでた可愛い女の子・・・彼女じゃなかったの・・・?」



「・・・ああ、それ従姉妹。
母親の方ので名字も違うから、付き合ってるとか誤解されまくりで。
で、うちの会社の受付にいる1人、そいつだぞ?」



「え・・・!?
あの・・・“おめでとう”って言ってくれた子・・・?」



「そうそう、ちなみに俺が一人暮らししてる部屋の隣に住んでるから、ばったり会うかも。」



そんな驚くけど安心も出来た言葉を貰え・・・



やっと、扉を開いてくれた・・・。



約14年ぶりに、扉が・・・



開いた・・・。























「え・・・!?
真理ちゃんなの・・・!?」





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