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『サメ?うん、岩渕君の隣の家に住んでるよ。』



サメの家にもたまに行っている妙子がそんな返事をしてきて・・・。



「じゃあ、サメって岩渕家と血繋がってないんだな?」



『そうだよ、サメと理子ちゃんが兄妹。』



「“リコ”も知ってるのか・・・。」



『サメの家にたまにいるからね!』



「そうか・・・あのさ、サメ・・・“お姉さん”と何かあったりするか?」



『え!!!?なんで!!!?』



妙子が急に声を大きくした。



「いや・・・だって、血繋がってないんだろ?」



『そうだよ!だから良いんじゃない?』



「・・・は?なにが?」



『血繋がってないんだから、別に好きになってもいいんじゃない?
それに親同士再婚してないから戸籍上もきょうだいじゃないし。』



「でも・・・再婚予定なんだろ?」



『その予定だったらしいけど、再婚出来なかったからね!』



「そうなのか・・・?」



『そうらしいよ、だから別に好きになってもいいじゃん!!』



「それ・・・サメが“お姉さん”のこと好きってことか?
お前、人の微かな動きでそういうの分かるだろ?」



『分かるけど・・・そういうのは私からは言わない。
またサメと会った時にお兄ちゃんから聞いてよ。
サメのことで何かあった?
・・・あ、“お姉さん”か。
“お姉さん”と会ったんだ?』



妙子にそう聞かれ、俺は少し黙り・・・



「妙子、恋愛すると精神乱れまくるな・・・。」



『え・・・サメの“お姉さん”?
やめなよ、それは。』



「なんでだよ?」



『入る隙ないでしょ。』



「それはそうかもな、だから頑張ってる所なんだよ・・・。」



昨日アップされた動画・・・。
そこで言っていた・・・。
俺と別れるつもりだと・・・。



日曜日の“舞踏会”に出たら、そこで別れるつもりだと・・・。



知られたくないらしい・・・。



自分が“岩渕さん”だと知られたくないらしい・・・。



終わらせてしまったから・・・。



俺は“ありがとう”で終わらせてしまったから・・・。



だから、最初から始めるしかない・・・。



今から、始めるしかない・・・。



「今日も実家帰るから・・・。」



仕事の後、やっと知れた真理が住むマンションの下で今日も待とうと思う・・・。



会いたかった・・・。



少しでも会って、俺と恋愛を始めて欲しかった・・・。



『早く一人暮らしの部屋片付けてそっち帰りなって!!』



実家に帰りすぎて散らかるばかりの一人暮らしの部屋・・・。
帰りが遅くなった日はそっちに帰って寝ていた。



「小遣い渡すので・・・」



『無理!私も最近めちゃくちゃ忙しい!!』



「ですよね・・・。」



そんな兄妹のいつもの会話をして、妙子との電話を切った。
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