【完】可愛くて美味しい真理姉

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それには苦笑いをしながら、また視線をパソコンのデスクトップに移し仕事を再開すると・・・



「“中身の方が大切”とか言ってるからそんな腑抜けた男になるんだよ！！
可愛い女の子がいたら普通やりたくなるだろ、なさけない！！」



「理解は出来ないけど・・・まあ、俺は腑抜けた男だよ。」



そう答えながら・・・



随分前に見た、“可愛くて美味しい私のまり姉”の動画を思い出す・・・。



可愛くメイクが出来た“まり姉”に、妹の“リコ”が言った。



『それで和君の家に行ってきなよ！！
メイクしてる時に全然ばったり会えないじゃん！！』



と・・・。



それに“まり姉”は首を横に振っていたけど・・・



今年から会社の近くのマンションで一人暮らしをしている俺は・・・



平日でも何度も実家に帰っていた・・・。



もしかしたら、“岩渕さん”が実家に来てくれるかもしれない・・・。
実家までの道の途中で、ばったり会えるかもしれない・・・。



そんな期待と、あとは・・・



“岩渕さん”が作る料理が物凄く美味しそうで・・・。



そしてたまに・・・俺の母さんが教えた料理も作っていて・・・。



その動画を見ると、いくら美味しいはずの料理を外食で食べても、惣菜を買って食べても、全然美味しいと思えなくて・・・。



“美味しい”と思える、“ちゃんとした物”を食べないと死にそうになるくらいに苦しくて・・・。



俺は母さんの料理を食べに頻繁に実家に帰っていた・・・。



増田からは何度も連絡先を調べると言われているのに・・・



“和君ともう恋愛はしない”



“今でも好き”と言ってくれている“岩渕さん”からその言葉が出てくる度、連絡なんて出来ないと思ってしまった・・・。



俺からばったり会えてもいないのに・・・



“岩渕さん”には声を掛けてもらえていないのに・・・



そんな俺が・・・



どんな連絡をしたら返事を貰えるのか、分からなかったから・・・。



父さんが言うとおり、俺は腑抜けた男なのだと思う・・・。



動画の中の“まり姉”を見ると“可愛いな”とは思うけど、別に“やりたい”とか思うような感情も出てこないような・・・



そんな、腑抜けた男なのだと思う・・・。