【完】可愛くて美味しい真理姉

Bu-cha

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増田と並びながら、駅前にある牛丼屋の前を通りすぎる・・・。
“岩渕さん”とよく別れていた牛丼屋の前を・・・。



「どこに住んでるかくらいは知ってる人いると思うよ?」



増田に今日もそう聞かれ、俺は首を横に振った。



「ばったり会ったらっていう約束だったからな・・・。」



「そんなこと言ってたら、何歳になるか分からないって!
それに岩渕さんだって和雄のこと忘れるかもしれないし、その約束だってもう覚えてないから声を掛けてこないのかもしれないよ!」



増田にそう言われ・・・それには、胸がなんだか苦しくなった・・・。



「忘れてるのかもな、普通は・・・。」



“好きだったんだよ”



卒業式の日、ピンク色の可愛い袴を着ていつもよりも可愛くなっている“岩渕さん”がそう伝えてくれた・・・。



あの子の中では、もう終わったことかもしれない・・・。



“好きだったんだよ”
と、過去形だったから・・・。
その気持ちだけを伝えてくれて、中学では別々になるし、あの子の中では終わらせるつもりだったのだと思った・・・。



“ありがとう”



そんなあの子に、それしか返さなかった・・・。



それしか返せなかった・・・。



沢山の女の子達が俺と“岩渕さん”の方を見ていた・・・。



その中には、俺に告白をしてくれた女の子達も、“岩渕さん”と同じ中学に行く女の子達も・・・
“岩渕さん”を虐めていたような女の子達もいた・・・。



俺が“岩渕さん”に“優しく”をしていたから、あの子が虐められ始めたことは知っている。



守れないと思った・・・。
あそこで“俺も好きだ”と答えたら、別々の中学に行く俺には守れないと思った・・・。



中学に入り、俺が目を離している間に虐められるあの子を、守れないと思った・・・。



だから、守った・・・。



俺なりに、守った・・・。



いつからか自覚した自分の気持ちを心の中でぶん殴ってでも言わなかった代わりに、あの子のことを守った・・・。



中学に行って、もう虐められないように・・・。



俺の存在のせいでこれ以上、虐められないように・・・。



「言えなかったし、約束も守れてないから・・・忘れられないのかもな・・・。」



増田と別れた後に小さな声で呟いた。



“俺も好き”と言えなかった。



ばったり会って声も掛けられていない・・・。



その時にあの子がスマホを持っているか分からないから“今度”と言った。
その連絡先も聞けていない。



だから、忘れられないんだと思う・・・。



そのことを、増田から“岩渕さん”のことを話題に出される度に思い出してしまう・・・。



今も好きとか、付き合いたいとか、そういうことではなくて・・・。



小学校の頃の“岩渕さん”を思い出しては、あの子以上に可愛くて優しい・・・それなのに強い子はいないなと・・・



そんなことを、考えてしまっていた・・・。
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