【完】可愛くて美味しい真理姉

Bu-cha

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岩渕さんは驚いた顔をして、ゆっくりと顔を上げて俺の方を見てきた。
岩渕さんが顔を上げたことに少しだけ安心していると、少し悩んだ顔をして・・・



「えっと・・・“和”君・・・。」



と・・・。



何故か俺のことを“和”君と呼び、突然の“和”君呼びには笑ってしまった。



「あの、ごめん・・・。
女の子達・・・“和”君って、呼んでるから・・・。
名字まで・・・知らなくて・・・。」



「うん、まあ確かに“和”君って呼ばれてるね。」



まさか岩渕さんにまで“和”君と呼ばれるとは思わず、俺が笑い続けていると岩渕さんが恥ずかしそうに小さくだけど笑っていた。



「それで、悩み事?」



少し緊張が解れた岩渕さんにもう1度聞くと、岩渕さんは少し悩んでから口を開いた。



「お父さんから・・・お菓子1つ、買っていいって言って貰えて・・・。」



「うん。」



「でも・・・私、こういうお菓子、あんまり食べたこと・・・なくて・・・。」



「うん。」



「うちは・・・お母さんが、お菓子を手作りしてくれてて・・・。」



「そうなんだ。」



俺がそう返事をすると岩渕さんが少し驚いた顔をして・・・何故か小さく笑った。
よく考えると、こういう時にクラスの女の子達は過剰に“優しく”をしているなと思い出した。



「お父さんが・・・たまにお菓子を買ってくれるんだけど・・・」



「うん。」



「どのお菓子を食べても・・・美味しく、感じなくて・・・。
美味しく感じないだけじゃなくて・・・」



岩渕さんが言葉を切った後に、俺からも視線を逸らし・・・



少し上を向きながら・・・



「苦しくて痛くて、悔しくて・・・泣いちゃう・・・。」



そう、言ってきた・・・。



しっかりと顔を上げながら、そう言ってきた・・・。
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