【完】可愛くて美味しい真理姉

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テイクアウトの牛丼が出来るのを2人で並んで待っていると、和君がやっと口を開いた。



「お金・・・ありがとう・・・。
返したいから、連絡先・・・。
あ、スマホ持ってきてないのか・・・。」



和君が慌てながら両手でスーツの色んなポケットを擦っている。
初めて焦っている和君を見て、それに自然と笑っていると和君は照れたように笑った。



「俺の連絡先、登録してもらえる？」



「私もスマホ持って来てないんですよね。」



私が“岩渕さん”だとは気付いていない和君が、スマホの連絡先を交換しようとしてくれた。



“今度”が、やっとあった・・・。



実際に交換は出来なかったけれど・・・



“岩渕真理”に言ってくれたわけではないけれど・・・



それでも、“私”はとても嬉しかった・・・。



これでやっと、目標が達成出来た・・・。



ばったり会えて、



声を掛けて・・・。



そして、スマホの連絡先を教える・・・。



きっと和君にとっては何でもない言葉だったはずで。
小学校の卒業式、14年も前のクラスメイトとの会話で。



26歳になって、大人になってもっと格好良くなった和君にとっては、きっと忘れてしまっている言葉だったはず。



それでも、私にとってその言葉は・・・



信用出来ないはずの“今度”は・・・



私の目標だった・・・。



その“今度”があったから・・・



頑張ってこられた・・・。



和君との“今度”の為に・・・



可愛くなろうと・・・



頑張ってこられた・・・。



“正義”だから・・・。



私にとって和君は・・・



“正義”そのものだったから・・・。