【完】可愛くて美味しい真理姉

Bu-cha

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そんな驚くしかない言葉に固まっていると、お客様は照れた顔で笑いながらキッチンにいる私の所まで歩いてきた。



そして、固まるしかない私を見下ろしてくる・・・。



「毎日まり姉に会いたいんですけど、ダメかな?」



そんな・・・



そんなことを言ってきて・・・



私の顔を・・・前髪で隠れている顔をジッと見詰めてきた・・・。



それに目を逸らしてしまいたくなったけど・・・



顔を上げてお客様を見上げ続ける・・・。



そんな私を見下ろしながら、お客様は恥ずかしそうな顔になり・・・



ゆっくりと口を開いた・・・。



「もしかしてだけどさ・・・」



そんな始まりに心臓が止まりそうになった・・・



止まりそうになった・・・。



そして、言った・・・。



お客様が、言った・・・。





















「まり姉って、岩渕さんだよね?」






そう、言った・・・。




小学校で6年間同じクラスだったお客様が・・・。




中学で別々になったお客様が・・・。




私の初恋だったお客様が・・・。




小学校の卒業式の日、私は告白なんてことをしてしまったお客様が・・・。




“難しいお客様”だった・・・。




私にとっては“難しいお客様”だった・・・。




初めて社会人になれたこの仕事で、お客様として再会してしまったのは初恋の人で・・・。




私が大好きだった人で・・・。




そんな人から出された注意事項・・・




“お客様と個人的に一切関わらないこと”



“お客様のことを絶対に好きにならないこと”




そんな注意事項、難しかった・・・。




私にとってはとても難しかった・・・。




苦しくなった・・・。




痛くなった・・・。




悔しくなった・・・。




それでも顔を上げ、お客様を見上げて・・・




「はい・・・。」




と、返事をした・・・。




返事をした・・・。




そしたらお客様はとても嬉しそうに笑っていた・・・。




とてもとても嬉しそうに、笑っていた・・・。




「俺、的場和雄(かずお)。
・・・覚えてるかな?」




そう言って、笑っていた・・・。




的場製菓の代表取締役の息子、26歳で副社長でもあるこの人がそう言って笑っていた・・・。




なんだか熱い眼差しを私に向け、笑っていた・・・。




そんな風に感じてしまうのは私がコミュ障だから・・・。




きっと、コミュ障だから・・・。




本当は普通に見下ろしているだけだと思う・・・。




昔も勘違いしてしまった・・・。




それで告白なんてことをしてしまった・・・。




だからこれは普通に見下ろしているだけ・・・。




きっと、それだけ・・・。




長い前髪の隙間から見える初恋の人の顔を見上げながら、必死にそう考え続けた・・・。
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