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「海行くか!海!!!」



「海か、何年ぶりだろう?」




そう答えながら、急いで着替えていく。




「坊、半年前より筋肉ついたな?」



「兄さ・・・副社長も直人も、ジム大好きだから付き合わされてるんだよ。
そこだけが僕とのプライベートのコミュニケーションだと思ってるみたいだけど・・・。」



「坊にとっては、それも仕事だからな。」




オジさんの言葉に、僕は笑いながら頷く。




家族の中でも、親族の中でも、僕は名前を呼ばれない。
親族の中でも僕は“影”でいることを求められる。




でも・・・




早朝で眠いはずなのに、仕事も大変なはずなのに、年に何回からフラッとこの家を訪れ、朝から僕を叩き起こし・・・
「坊」と呼んでくれるこのオジさんだけは、仮面を被らず僕に接してくれる。




そして・・・




「電車乗って行くか!!!」




小さな頃から車での送り迎え、どこに行くにも車、車、車・・・
そんな僕に、このオジさんは小さな頃から電車に乗せてくれる。
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