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ホットココアで汚れたこの人の高級なスーツを見ながら、声を上げて笑った。




いつも、汚れてしまえばいいと思っていた。




この人を縛り付けるように張り付いている高級なスーツなんて、汚れてしまえばいいと思っていた。





ホットココアで汚れた所に手を触れながら、この人を見上げる。





「私が養ってあげるわよ。
欲しい物は全て欲しいの、私。
妥協なんてしたくないわ。」





目を見開き私を見下ろすこの人に笑い掛ける。





「アナタは、自分が行きたい所に行けばいいじゃない。
私も土日は付き合うわよ。
行きましょう、2人で。
2人で行きましょう?電車に乗って・・・」




「電車に、乗って・・・」




「大丈夫よ、線路は続いているから。
どこにだって行けるの、アナタが行きたい場所に。」
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