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優男の部屋の扉を閉める。
この201号室の男は、こんなにセクシーでゴージャスな女を相手にしないらしい。
確かに、普通の男ではない。




赤ワインを持って、自分の部屋に戻った。




部屋の中で、ワイングラスに注いだ赤ワインを口に含む・・・




静かな部屋の中からは、何の物音も聞こえない。




1階は、その全てが大家の部屋。
今の会社に新卒で入社をする直前に引っ越してきて、何度か挨拶に行っても不在だったから諦めた。
たまに来る優しそうなおじさんがマンションの花壇の世話をしていて、もしかしたらあの人なのかもしれない。




マンションといっても、ここは2階しかない。
2階に1LDKの部屋が4部屋ある。
向かい合うように2部屋ずつの部屋の扉があり、203と204号室の人はまだ会ったことがない。
たまに扉の音が聞こえるので、住んではいるようだけど。




やけにしっかりした造りのこのマンションは、隣の部屋の音も話し声も、全く聞こえない。





そんなことを考えながら、
202号室の私・・・“屋敷ののか”は、また鼻歌を歌う・・・。
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