【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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お互いにそれ以上は詳しくは話さなかったけど、矢田さんと見詰め合う。
矢田さんと雷・・・同じ目的だったのだと分かる。
“あの男を殺す”という目的が、同じだった・・・。



「雷(かみなり)があるね、明ちゃんにも。」



「それは初めて言われた～！！」



「でも雷のとも少し違う、似ているけど。
雷自体はよく見えないから。
綺麗な赤い木みたいな物の後ろに雷が見えるんだけど・・・全体的に明るすぎてそれらがよく見えない。
こんなに綺麗な人を僕は見たことがないよ。」



綺麗な赤い木・・・雷・・・。
紅葉と・・・雷・・・。



それには笑いながら矢田さんを見る。
“見える人”なのだと思った。
そういう人がいる、あたしのかぞくだってそうだし、あたしだって空気が見える。



「それにしてもあの男性・・・何？
雷から弟がいると聞いていたけど、あれ“弟”なの？
“弟”っていうか本人・・・あ～・・・でも、雷よりも優しい音で優しい光りかもな。
稲妻というよりは、光り。」



そう言いながら見ているのは・・・剛士のこと。



「雷が6年間あの“弟”と2人暮らしをしてくれていたんです。
だから剛士にも“雷(かみなり)”がある。
でも剛士は・・・雷よりも深い傷があったから雷よりも優しさがある。
自分が傷だらけだったから人の傷にも気付けるし、その傷がどれ程痛いのか想像出来る。」



そう言いながら剛士を見る・・・。
会場の隅の方で第二営業部の青田部長と何やら真剣に話している。
その空気が真剣なものなので誰も近寄ることはない。



ここの社員はそういう人達だから。
良い人達が多い。
みんなが同じように良くて・・・。
そこに、剛士とあたしで“輸血”をしている。



新鮮な血となる人材を・・・。



そう思っていた時・・・



「木葉さん！」



と、明るい女性の声があたしを呼んだ。