【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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「雷(らい)の妹さんですか？」



定時後に開かれた決起会。
有名ホテルの大きな会場を貸し切り、本社の人達、そして麻美社長が就任した吸収合併した会社の社員達が集まっている。



そんな中で50代くらいの見たことのない男性から話し掛けられた。
それに・・・雷を知っているらしい。
紅葉ねえちゃんの会社の秘書でもあるからそれで知っているのかもしれない。



優しい目をした男性で、その目をもっと細めてあたしを見て笑っている。



「雷の妹の明です～！！」



「やっぱり！！似てるもんね！！」



そんなことは誰にも言われたことがないのに、この男性にそう言われた・・・。
それに驚いていると・・・



「僕は吸収合併された会社、その支社の人事部の矢田といいます。
本社の人事部だった頃、雷の採用は僕がやったんだよね。」



「そうだったんですか～・・・！！」



それには苦笑いになる。
だって、雷はあの会社に潜り込んでいて・・・。
悪いことを・・・会社にとっても一般的にも悪いことをしていたと知ったから・・・。



「名前の通り雷(かみなり)だったよね！！
全てを真っ黒に焦がしたよ、跡形もなく！！
お陰で綺麗な会社になれて、支社が本社になってあんな“女王様”まで上に立ってくれてね！！」



その発言に驚いていると・・・



矢田さんが優しい顔で、空気で笑って・・・



「オーシャンを入社させる時は大変だったけど、結果的に支社に飛ばされて万々歳だったよ！！」



そんな発言まで出て来て驚くしかなくて・・・。



「腐敗してたからね、本社は。
あのトップが腐敗した人間だったからそうなるよね。
一応本社の人事部長だったけど僕の声は届かなかった。
僕はお父様の代で採用されていたんだけど、その後すぐに亡くなってしまってあの異常者が社長に・・・」



矢田さんが言葉を切って少し慌てた空気になった。



「ごめんね！！明ちゃんのお父さんでもあるのに！！」



あたしのことを“明ちゃん”と呼んだ。
“雷”も“オーシャン”も呼び捨てで。
そんな矢田さんが慌てた空気で謝るので笑いながら首を横に振った。