【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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あたしの上のきょうだい達が誰かを殺そうとしている空気。
あの男が殺されてからはその空気は消えていた。
“アヤメ”が殺したからだと思っていたけど・・・。



「みんなが、動いてたんだ・・・。
女社長はだから“隠れ家”に来てたの？
今思うと変なテンションの高さだった。」



「きょうだいが働いているゲイバーにハマった女社長の設定だったね。
周りの調査員達が盛り上げてくれている中で、俺は紅葉さんに情報を伝えていた。」



「そうだったんだ・・・。」



「だから、バレるわけにいかなかった。
普通の社員ならよかったんだ。
でも・・・俺が紅葉さんの隣に座っているのを見てしまったのは取締役だった。」



オーシャンは悲しそうな顔で笑った。



そして・・・



「だから、俺は死ぬことにした。」



と・・・。



あたしの頬を大きな右手で包む・・・。



「明ちゃんを女の子にすることだけを考えた。
女の子になった明ちゃんとの未来を捨ててでも、俺が死んででも、あの男を殺して明ちゃんを女の子にすることだけを考えた。」



「死んでたよね・・・。
空気が何も動かなかった・・・。」



「秘密の共有をしたからね。」



「秘密の共有・・・？」



「取締役とも、取締役の秘書の女の子とも。
取締役には“会社にゲイだとバレたくない”と言って、元々言い寄られていた秘書の女の子と付き合って。
秘書の女の子には“ゲイ”だってバラしたうえで“両方いけるかも”と言って、“取締役が俺のことを何かバラしていたら教えて欲しい”と言っていた。」



「そんなこと・・・。
あたしのために・・・そんなこと、しないでよ・・・。」



涙が止まらなくて・・・。
オーシャンの大きな右手だけでなく左手まであたしの頬を包んだ・・・。



「自分が死んででも愛してる女を守れって育てられたからね。
俺はそういう風に育てられたから。
次に会うのは俺か木葉の葬式の時だと覚悟を決めていた。
そしたら・・・“隠れ家”の“ママ”である“幹部”が、“隠れ家”でだけ明ちゃんと2人きりで過ごす時間を作ってくれた。」