【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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「オーシャン、この前の食べたい！！
砂糖ついてるやつ！！」



古くて狭いけど綺麗に整頓されているキッチンに立っていたら、明ちゃんが明るくそう言いながら隣に立った。



うちの両親は、俺に妹のみかを頼んで急に外出することがあった。
俺が小学校高学年になった頃から、土日の日中2時間くらい。
そういうことが多々あって、今でもよくある。



そんな時、オヤツの時間が重なるとみかに作るようにしていた。
俺の母さんはあまり市販のお菓子を子どもに食べさせないようにしていて。
何でも手作りするような人で。



“身体を作っていく物だから”
そう言って作る母さんのご飯やオヤツは確かに美味しかった。
それで身体が大きくなることはなかったけど、母さんの気持ちはよく届いてきた。



“強い肉体と強い精神を作れ”
父さんの激しすぎる教え、そこに母さんの手作りの食べ物。
身体は大きくはなっていかないけど・・・。
母さんの気持ちは激しすぎるくらいやっぱり届いてくる。



この前作ったのは、ただ油で揚げ焼きして砂糖をまぶした物。
明ちゃんはそれが気に入ったよう。
それまでは食パンの耳を弟達と普通に食べていた。



何気なく、“甘いの食べる？”と聞いてみたら・・・。
明ちゃんも弟達も食い付いて。
簡単に作って出したらムシャムシャと一気に食べていった。



それから木葉君の友達がオヤツを買ってくるようになったんだけど、明ちゃんも弟達も絶対に食べなかった。



“お金を稼げるようになってから一緒に食べたい”
そんなことを言って絶対に食べなくて。
木葉君も特に何も言わず、聞こえているんだか聞こえていないんだかよく分からない感じで家事をしていた。



「冷蔵庫の中の物使っていいって言ってくれたから、違う物も作ってみようか？」



俺がそう言うと、明ちゃんは目を輝かせて頷いていた。