【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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それから・・・
木葉君がバイトが休みの日はたまに、男女数人で木葉君の家に遊びに行った。



「オーシャン！！」



明ちゃんが嬉しそうな顔で俺の名前を呼んでくれる。
その明るくて輝くような笑顔で俺の名前を呼ばれると、俺の心の中の海はどんどん明るくなってくる。



「明ちゃん、今日は家にいたんだね。」



「“アヤメ”今日は宿題多いらしくて遊べないって！！」



“アヤメ”ちゃんは明ちゃんの腹違いのきょうだい、同じ歳の女の子。
木葉君が“美少女”と言った女の子で、明ちゃんはよく“アヤメ”ちゃんとお兄さんが二人暮らしをしているマンションへと遊びに行っていた。



泊まってくることもあるそうで俺にだけコソッと話してくれたけど、中学校はたまに遅刻してしまうこともあるらしい。



そして、今日は・・・



「おばさん、お邪魔します。」



木葉君きょうだいの“お母さん”も家にいる。
木葉君と明ちゃんの産みのお母さんは夕方になる直前に家を出てクラブの“ママ”として仕事を。
今家にいる若い女の人も、“お母さん”。 



この人も同じクラブでホステスをしているそうなので、これから家を出る準備をしている。
そこまで身体が強い人ではないようで、この“お母さん”の睡眠時間もみんなで協力して確保しているそう。



木葉君、明ちゃん、“アヤメ”ちゃん、弟4人の子育てを日中してきたのは、実際はこの“お母さん”らしい。
木葉君が3歳の時にこの優しそうな若い女の人が日中の“お母さん”だった。



うちの両親も若いけど、この“お母さん”も若くて凄い美人だった。



そんな“お母さん”は沢山いる木葉君の友達の中でも、俺にだけ“お願い”をしてくる。



「オーシャン、今日は食パンの耳があるんだけどオヤツ何か作れるかな？」



“オーシャン”と呼ばれることが嫌いだったのに、木葉君のかぞくに呼ばれる“オーシャン”は好きだった。



おばさんが渡してきた大量の食パンの耳。
たまにこれがあって、その時は俺に“お願い”をしてくる。



おばさんはこれから家を出るところだし、木葉君も明ちゃんも料理は出来るけど甘い物は作れないそうで・・・。



他の友達に女の子はいるけど普段料理をしたことのない子達だった。



大量にあるパンの耳を持って少しだけ考える。



「冷蔵庫にあるの、好きに使っていいから。
ごめんね、お願いね。」



おばさんが申し訳なさそうな顔で言ってくるので、俺は笑いながら頷いた。